SSブログ

インフォームドコンセント [<介護生活、そして父母の事>]

薬剤師会というのは、横文字好きな団体である。
最近の例で言えば、「ゲット ジ アンサーズ!」キャンペーンというのがあった。
英語で書けば「Get the answers!」

ここは日本である。
なぜ素直に「(薬剤師に)尋ねよう!」と言えないのだ!!
(もっともストレートにこう言われると、答えられなくて頭を抱えるダメ薬剤師もどっかにいるだろうが・・・(^^;)

二十数年前、インフォームドコンセントということばを始めて聞いた時、「なんなんじゃ、そりゃあ?」と思った。
「informed consent」と言われても、まだ?が残った。

情報を与えられた上での同意。まあ、わかったようなわかんないような・・・
(^^;

どだい薬局の現場で、インフォームドコンセントが真実味を帯びることはまれなのではあるまいか。

薬は医者から言われて有無を言わさず飲まなければいけないものであり、薬剤師がぺらぺら薬の副作用を述べ立てて、患者さんに飲むか飲まないかの選択を迫るなんていうことは有り得ないのである。

そんなことをしたら、すぐに患者さんからお医者さんへ「薬屋さんでこんなこと言われました。」と情報が行き、ほどなく薬剤師会長さんから大目玉を頂戴する。

つまり薬剤師と言うものは「この薬にはこれこれこういう副作用がありますよ。」というのがわかっていても、ことさらにそれを言うようなことはしないものである。

まあ九子のように、「知らないから言えない。」って場合もあるにはあるに違いないが・・・(^^;

そのインフォームドコンセントが、今回ほど切実だったためしはなかった。

父が入院した話はご存知と思う。

「取材」で、これが父の遺影にならないか・・・などと書いてしまったが(^^;、あれから10日も経つか経たないうちに、父は足が痛いと訴えて、正月の3日についに風呂場で立てなくなってしまった。

しばらく様子をみてから病院へ担ぎこみ、1月6日に入院することになった。

つまりあのテレビは、父の遺影にこそならずに済んだが、父が元気に立っている最後の写真になる可能性大なのである。

最初に言われたことは、足の痛みは腰から来ていて、足そのものはどうやら悪くなさそうだ。
手術をすることも考えられるが、手術をする最適のタイミングというのは緊急を要し、歩けなくなってから一日以内だったので、今の段階では高齢でもあるし、う~ん・・・・というような話だった。

そのうち先生と第一回目の相談会というのがあった。その時点ではじめて、「腰椎間狭窄症」という病名と、実はそれを引き起こしている原因が「椎間板ヘルニア」という症状であることが明らかになった。

そして先生は、手術の可能性に言及なさった。

「最初『腰椎間狭窄症』という、腰から下へ伸びている足を動かす神経が狭くなっている症状がわかった時、ヘルニアがあることがはっきりわからなかったので手術の可能性は低いと思いました。

でも、これだけはっきりヘルニアが確認されれば、ヘルニアの手術をすることにより、少なくとも痛みを取ることと、足の機能を生かす事が可能になるかもしれません。

具体的に言うと、歩くことはかなり厳しいですが、自分の足で立つことは出来るようになる可能性があります。

手術をどうするか、ご本人と相談して頂きたいのですが・・・。」

えっ?手術出来るの?そうすれば足が生きるんだ!

家族の間に安堵の気持ちが広がった。

「じゃあ、手術してもらおうよ。立ってもらえば介護だって楽になるし(^^;」

ところが!である。ご本人は先生にあっさりこう言った。

「手術はやりません。この年になれば、寝たきりの人だってたくさんいる。痛い思いをするなんてたくさんだ。手術はやらなくて結構です。!」

えっ?何それ?

先生もあっさり「わかりました。」とおっしゃって、部屋を出て行かれた。

え~っ?それで決まりイ?
だって、手術すれば、足も痛くなくなるし、立てるようになるんだよ。

家族は慌てた。
「ねえ、もう一回考えてみてよ。歩くのはダメでも立てるんだよ。立てれば車椅子から一人で車に乗れて、いろんなとこへ行けるよ。RのとこへもSのとこへも、温泉だっていけるかも・・・。手術拒んだら、もう一生このままだよ。足だって痛いし、本当は悪くない足が死んじゃうんだよ。」

九子は実は説得上手である。そのうえ、父は九子に弱い。(^^;

九子の説得に、父はまたコロッと前言をひるがえした。
「手術、やってみるかな・・・・。」

センセー、父が考えを変えましたよ~。( ^-^)

ところがセンセーの一言はこうだった。
「そういうのが一番困るんですよ。コロコロご本人の考えが変わる。本当にゆるぎない決心がないとねえ・・・。」

インフォームドコンセント。主治医は家族と本人に手術をすればこうなるが、こういう危険性もはらむという事実を説明する。そして、本人が同意する。インフォームドコンセントが威力を発揮するのは、まさにこういう手術の同意の際だ。

そして、非常に厳しいのが、「本人が同意する」という一言なのである。いくら家族が願っても、本人がうんと言わなければ、手術は絶対にやってもらえないのである。

その後はまさに紆余曲折であった。
年相応にボケも来ている父は、家族の前では「手術する!」と決意を述べるのだが、一人になって先生に聞かれると「はあ~っ?手術?誰がそんなこと言いましたかねえ。」となってしまう。(^^;

一時は手術せずにこのまま退院と言うところまで行ったが、
「もう一度だけチャンスを下さい!」と頼み込んで、先生の隣へ本人を車椅子で連れてきて、家族と先生の前で最終的に手術を同意させるのに成功した。

もっともその裏には、母の「手術してもらって立てるようになって帰ってこなかったら、面倒見てあげないからね!!」という脅し文句の存在があったことなど、先生は知る由も無い。(^^;

お陰様でさまざまな悪条件をはねのけて、父の手術は成功した。
術後一週間の血栓が起こりやすい時期も、上手に管理して頂いた。
若いが腕の立つ、その上人間的にも立派なM医師には、感謝してもし足りない。

ところで母であるが、彼女はここ数年耳が遠くなった。

後からわかったことだが、M医師のすぐ前で手術の説明を聞いていたにも関わらず、高齢で持病を持つ父が受けるとしたら、かなりの危険性を伴う手術である・・・という肝心の部分を、すっかり聞き逃していたらしい。

手術が終わってから、「そんな危険な状態が起こるかもしれなかったの?へえ~(87へえ!位・・・・(^^;)」
父にしたら、えらい迷惑な話であった。

でも、あれだね。
「手術を受けて立てるようにしてもらわなくっちゃ、面倒見てあげないからね。」という母の一言で父が手術に同意したと言うのも、中立な立場からは程遠いとは言え(^^;、立派なインフォームドコンセント、つまり「情報を与えられた上での同意」だよね。( ^-^)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

片付け上手Forget me not ! ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。