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学校保健委員会 [<薬のこと、ダメ薬剤師のこと、家のこと>]

そんな委員会があるのを知ったのは、始めて九子が学校薬剤師を引き受けたおととしの事だった。
学校医の先生方、つまり内科医、眼科医、耳鼻科医、歯科医師の先生方と学校薬剤師である九子が並び、代表の先生とPTAのお母さん方の前で、それなりの話をしなければならないのだと言う。

今回は信大附属養護学校からの依頼で、去年出席通知を出しながら、父の病院の診察が長引いて出席出来なくなってしまっていたので、なんとしても出なければいけない会だった。
おお!九子にも責任感ってもんがあるんじゃないの。(^^;

玄関にはもう養護の先生が待っていらして、最初に校長室に案内された。
内科の先生と耳鼻科の先生がすでに席に着いていらした。

もちろんすべてがそうという訳ではないだろうが、お医者さんというのは、自分から打ちとけて話すと言うことは少ないもののようだ。

しら~っとした空気の中、気を遣って九子が校長先生とたわいもない話を始める。同じ先生でも、教師の先生方は、こう言う時、よどみなく話す能力を日頃から養っておられるようだ。

校長先生がちょっと座を立たれると、すぐ気詰まりな沈黙だ・・・。

あ~あ、こう言うとき、九子にホステスさんみたいな話術の才があればなあなんて思う。(^^;

あ~ら。センセ、今日のネクタイ素敵だこと!(って、誰もネクタイしてねえよ。)
今日はどうしてコチラヘ~?(学校保健委員会に決まってンだロー!)
そっから先の話が続かないんだよねえ。(^^;

そもそも男の人って、バーだのクラブだのへ行く時って、そう決めた段階で、それなりの覚悟と言うか、普段と違う顔付きみたいなのが、自然に備わるもんなのだろうか?

そういうとこへ行く洋服を着たとたんに、別人格が現れるもんなのだろうか?

M氏みたいなのは単細胞、いやシンプル人間だから(^^;、どこへ行こうとおんなじ服だし(^^;、おんなじ顔だ。
でも、M氏の友人の○さんは、そういう場所ではヒョーヘンするのだそうだ。

この先生方もヒョーヘンするのだろうか?・・・と九子がバカな想像をしていると、若い先生が一人入って見える。

人の顔を覚えるのが苦手な九子は、その年周りなら、歯医者のK先生んとこの若センセに違いないと、思いっきりの笑顔で会釈する。

あれっ?でも相手の反応はイマイチだ。

「そろそろ時間が参りましたので、教室の方へどうぞ。」と促され、2階の教室に移る。
もうすでに、教室内はお母さん方でいっぱいだ。

いつも隣に座られるはずの歯医者のK先生んとこの若センセの席が空いたままだ。そしてようやく気が付いた。
「ああ、さっきのあの人は歯医者のK先生んとこの若センセじゃあなかったんだ!」(^^;

じゃあ、さっき九子が思いっきりの笑顔で会釈したあの先生はいったい誰?

それは、内科と精神科を兼ねているU病院のT先生だった。
そうか!養護学校だから、精神科の先生も加わるんだね。

イマイチの笑顔の意味も良くわかった。九子とは初対面だもんね。(^^;

まあ、でもあの場合、間違っても仕方ない。
おんなじようなメガネかけて、顔の半分もあるマスクしてたもん。(^^;

歯医者のK先生んとこの若センセは、20分ほど遅れて見えた。
若センセの顔を見るなり、九子は思いだした。

そうそう、色白で端正な、この顔だったよ。
おんなじようなメガネかどうかは・・、まあ異論のあるところかもね。(^^;
そして、再び思いっきりの笑顔。( ^-^)

そもそも九子の常套手段は、ダメ薬剤師を暴露して、早くこの緊張感から脱することなのだ。

「いやあ、私はこんなところで偉そうな顔して話しをするような人間じゃあないんです。」とドジのネタのいくらかを披露し、お母様方のまぶしすぎる視線を笑いで回避したいと思っているのに、今回、というか、これから以降ずうっと、それが出来ないであろう事が辛いところなのである。

何を隠そう、歯医者のK先生んとこの若センセは、笠原十兵衛薬局のすぐ近所で開業されていて、お父様の時代から薬局に数少ない処方箋を出して下さる奇特なセンセなのだ。そういう事情を考慮すれば、いくら九子であろうとも、ダメ薬剤師カミングアウトなど出来ようはずもない。(^^;

その上歯医者のK先生も、父と同じ位古くから、つまり九子が附属小学校の頃から学校歯科医をずっと続けていらっしゃり、二世同士この先何年間も、たぶんこういう席ではご一緒の可能性が高い。

あ~あ、この先考えると憂鬱になるよ。

先生と名の付く人々は、みんな話し上手だ。学校の先生しかり、お医者さんしかり、政治家しかり・・・。生徒に物を教えること、人を指導すること、人に感銘を与えること、まあそれぞれの専門家として、普段となんら変わらないことをすれば良いのである。

しかるに、なまじっかセンセーなどと慣れない敬称を与えられたばっかりに、さっきからそわそわしている九子が居る。

驚くなかれ!この九子が「九子先生」、いや、「朝原先生」である。(^^;

それでも今日の九子は比較的穏やかである。
おしゃべりする内容はあらかじめ用意してある。・・・と言うか、学校薬剤師って?という先日の日記みたいな内容を、たぶん知らないであろうお母様の前で披露しようと決めていた。

(先日の日記と言ったって、頭に来た英語の先生の話をする訳じゃあない。(^^;)

そんなら指定の10分くらいは、軽く経過するだろう。

先生方はさすがである。
インフルエンザの話、花粉症の話、自然治癒力の話、胃酸のPHの話えとせとら。お母様方も、ペンを走らせながら聞き入っている。

おお、有り難い!九子の時間はもうそんなに無いよ。( ^-^)

気弱な(^^;九子はいつも言うように、なかなか人と目を合わせられない癖がある。

一人の相手を前にしてもそうである。
ましてやこんな大勢の人を前にすれば、目は前を見ているつもりでも、実際顔はうつむき、机の上ばかりが見えているのだ。
(いや実際には、机の上の資料なのだが・・・。)

まあ本音を言えば、日頃薬剤師らしいことなどあんまりやっていない人間が、こんなところでいかにも薬剤師然として、知らないこともさも知ってるぶって、偉そうに話なぞしなければならないという状況に、羞恥心で顔が上げられない・・・というのがまあ、本当のところなのだ。(^^;

6月の飲料水の検査から始まって、夏のプール水の検査、教室の照度の検査、教室の揮発性物質(シックハウス)の検査、保健室のふとんのダニの検査、最近やったばかりの教室の二酸化炭素および室温の検査等、おおざっぱなところを話したら、持ち時間はどうにか終わった。

ほっ!( ^-^)

幸い質問も出ず、養護の先生の閉会の言葉が始まる。

「先生方、お母様方、本日はお忙しいところおいで頂き、有難うございました。先生方の貴重なお話をお聞かせ頂き、実りある会になったと思います。

(「いやあ、それほどでもないけどね。(^^;」(九子の心のつぶやき))

来年もまたこんな会が開かれる時には、進んでご参加下さい。」

「・・・・・・えっ!来年??
大変だ!おんなじ校医の先生方に、あんまり変わらないお母さんや先生方を前にして、来年は、いったい何を話せばいいんだろう。」(^^;
タグ:学校薬剤師
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