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東京駅にて [<正統、明るいダメ母編>]

九子の若かりし頃、まだ新幹線などなかった頃のあさま号は、上野駅止りだった。
しかし現在は、東京駅止りである。

アメ横商店街の喧騒(けんそう)と、いつもおじいちゃんが東京のお土産に買ってきてくれた甘栗のにおい。

九子にとって、だから東京とは、長い間上野駅の記憶だった。

しかし東京駅は、まったく別の顔を持っている。
華やかな、よそゆきの顔だ。

洗練された身なりの誰もがみんな、一瞬たりとも立ち止まらないで、考えるという事すら忘れたように足早に歩いている。
そんな流れに身を任せた時、九子もいっぱしの都会人の一員である。( ^-^)


彼女の呪縛からようよう逃れて、九子は駅の長いエスカレーターを降りる。

東京駅って、本当に広い。
いつもはその広さに気がつかぬまま通り過ぎてしまうが、探し物をしてみると、その広さがわかる。

九子の探し物というのは、お手洗いであった。(^^;
事のほか風の冷たい朝であったゆえか、婦人用トイレにはどこにも長い列ができていた。

まったくもう!
長野五輪を経験している九子には良くわかるのだ。

すべての公共施設には、男性用トイレの少なくとも1・5倍の女性用トイレを設置すべきなのである。
もちろん女性の方が男性よりも、トイレ占有時間が長いためである。
東京駅よ!おまえさんも勉強が足りん!

・・・と思っていたら、偶然3箇所目で大きなお手洗いを発見。

偶然見つけたに過ぎないのに、九子はなんだか優越感を覚えている。

「あ~あ、あの人達、きっとまだ長い列の後ろに並んでるよ。ちょっと足を伸ばせばこんなにきれいで大きなおトイレがあるのに・・・・。きっと田舎から出てきたばっかりのおのぼりさんかもね・・・。」(^^;

ところでおのぼりさんって言葉、もう死語なんだろうか?
もちろん田舎者って意味だけど・・・・、東京駅に上りの電車で上ってくるから・・。
ちなみに長男Rは知らなかった。


九子はこれから、目白駅まで行くところである。
さあ、中央線に乗り換えなくちゃ・・・。

え~と、出口は・・・・。

それらしき自動改札機の中へ、九子はこれからまだ使う長野駅から東京都区内乗り継ぎ切符を、もう必要無いあさまの特急券とともに入れる。

切符はす~っと機械に吸いこまれていく。

あれ?あっれ~?

切符がなんにも出てこない。
返って来るはずの都区内乗り継ぎ切符は、一体どこ行っちゃったの?


実は自動改札機のトラブルは、この日始めてではなかった。

長野駅で切符を入れるとき、重ねた切符を裏表逆に、しかも帰りの分まで入れてしまったが大丈夫だった。(^^;
ちゃんと裏向いたまま、4枚重ねて出てきた。
さすが日本の機械は優秀である。( ^-^)

ところが事もあろうに、日本一大きいはずの東京駅で、切符が出てこないのである。

たまたまそこに制服を着た駅員さんらしき人を見つけて尋ねてみる。

「あの~、切符が出てこないんですが・・・。」

駅員さんに見えたその若い人は、実は駅のガードマンだったみたい。
そっけなくこう答えた。

「当たり前だよ。だって、そこ出口だもん。」

「・・・・・・・・・・・。」

想定外の事が起こると、途端に正常な思考回路が働かなくなる九子である。
今落ちついて考えてみれば、おっとりとそのまま改札を出て、東京駅から目白駅までの乗車券を余分に買えば良いだけの話しであった。

しかし、なぜか九子は慌てまくった。
切符が無くなっちゃったんだから、長野からの料金請求されちゃったらどうしよう!!

清算窓口の年配の駅員さんは、しかし実に落ちついていた。落ち着きすぎて怖いくらいなもんだった。(^^;

「ああ、切符間違えて入れちゃったのね。長野から来たのね、長野から・・・。」
彼はなぜか「長野から・・・・」をやけに強調して二度言うと(^^;、納得したような顔で九子が通った自動改札機の側面にある鍵穴に、鍵を差し込む。そしてそれを開くと・・・・。

「ほう!」
こんな箱の中へ切符が集まってくる仕掛けな訳ね。

駅員さんは、すぐに長野から都区内までの切符を探し出す。「はい。これですね。」
あっけないほど簡単だった。( ^-^)

しかしなんだねえ。
懲りない九子は考える。

こうやって、九子みたいに失敗するからこそ、人が知らない知識が身に付く。
自動改札機のあんなところに箱があって、そこに切符がたまるようになってるなんて、失敗の無い人生歩んでる人には、決して身に付かない知識だよ。
そんな人生、面白くもなんともないもんね。( ^-^)

ご気楽九子の真骨頂である。(^^;

さてと、いよいよ中央線に乗りこむぞ。
中央線のホームには、すでに電車が止っていた。

東京⇔豊田とある。
豊田って??

普通、立川とか高尾とかっていうんじゃないっけ?

九子は中央線が東京止りであるということに今日の今日まで気がつかないでいた。
千葉の方まで行ってるんだとばっかり思ってたよ。(^^;
(それは総武線でしょ!と鉄道マニア三男Yの冷たい視線。)

だから、万が一逆方面へ乗っちゃうと一大事!と思ったのである。

もちろん一電車乗り過ごした。
何事も慎重にしないとね。( ^-^)

豊田ってどこなのか、イマイチまだ良くわからない。
まさか愛知県の豊田市じゃあないよね。(^^;

そこへどこかのおばあさんが通りかかって、事もあろうに九子に物を尋ねる。
「あのう、この電車は立川に止りますかねえ。」

もちろん九子はあいまいに微笑むだけである。(^^;
しかし九子は若干得意でもあった。
九子に物を聞くなんて、九子もけっこう都会人に見えるんだねえ。( ^-^)

九子の曖昧な返答に懲りて、他の人に尋ねるのが筋ってもんだろうが、そういう思考が出来ないのが、どうやらおばあさんという人種であるらしい。

「あのう、豊田って立川の先でしょうかねえ・・・。」
さっきのおばあさんが、わざわざまた戻ってきて九子に質問する。

こっちもわかんなくて困ってる事を、聞くんじゃねえぜ!と言いたい気持を押し殺して、九子は気弱にこう答える。

「私に聞かないで下さいな。」(^^;


あ~あ、長野駅を出てからやっと東京駅に着いたばかりなのに、いろんな事があり過ぎの朝だった。

人生を旅に例える人もいるが、そこいくと九子なんか、日頃旅行などほとんど行かない癖に、普通の人の何倍も、人生脇道にそれてるよ。

その分味わいの深い、面白みのある人生っていうのかもしれないなあ。( ^-^)

あの九子さん、はたで見ている分には、あなたのする事なす事は、いや確かに面白いかもしれませんが、かと言って、味わい深い・・・・かどうかは、意見の別れるところでは・・・・・・・・・・・?(^^;
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コメント 2

よぽぽ

[長野駅にも自動改札]
>「ああ、切符間違えて入れちゃったのね。長野から来たのね、長野から・・・。」
彼はなぜか「長野から・・・・」をやけに強調して二度言うと

 そうです。長野ですよ。長野駅だって自動改札になったじゃないですか!(^^;

 でも、自動改札って何度通ってもなんかなじめないですよね~。って、私も滅多につかわないですけど…。
 
by よぽぽ (2005-03-17 23:42) 

九子

[よぽぽさん、コメント見逃しておりました。m(_ _)m ]
そうそう、そうなんですね。
もっとも新幹線は以前から自動改札でしたけど・・・。
どっちにしてもあんまり駅って利用しないもので。(^^;

でもある意味、すごく賢いと思うよ。
日記にも書いたけど、切符を裏表逆に入れてもわかるんだもの。
銀行のカードなんかだったら弾かれちゃうでしょ?
それに帰りの切符もちゃんと排出するし・・。(^^;

機械の進歩は目覚しく、人間はだんだん機械に使われていくんだよね、きっと!
by 九子 (2005-03-21 23:01) 

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