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日本人の美徳・・・・気遣い [<九子の万華鏡>]

このところ殺伐とした事件や事故が多いので、なんとなく日本人としての誇りを失いかけている様に見える私達であるから、今日はひとつ日本人ならではの美徳について書いてみようと思う。





日本人である九子は、様々な気遣いの中で暮らしている。





例えば、笠原十兵衛薬局の隣の八百屋さんのおじさんは、とてもユニークな人である。

人が良いのを通り越した位の世話好きだが、少々気分屋でもある。( ^-^)



八百屋さんにはたくさんの従業員さんが働いていて、大きく商売をやっている。



一番長くいる従業員さんの八十歳を超えたお母さんが週に3回も医院に通っていて、彼がお母さんの処方箋を笠原十兵衛薬局に持って来てくれるようになってから半年位・・。



その処方箋が最近ぷっつりと来なくなった。



理由は至って簡単明瞭。

医院のすぐ隣にある調剤薬局に行った方が、薬はいつでも間に合うし、待たされなくて便利だからだ。



こちらはそんなこと百も承知の上だから、今までわざわざうちに持って来てくれた事に感謝こそすれ、不満を言うことなんか考えてもいなかったのだが、八百屋さんのおじさんはそれをひどく気にして、せめて自分が医院にかかる時くらいは、なるべく高額の薬を、長い日数出すように、つまり、うちの薬局が儲かるように考えてくれているらしい。



八百屋のおじさんは押しも強いのだ。

「この薬とこの薬とこの薬を、これだけ出せ!」と医者に命令するくらい、朝飯前である。(^^;



その医院から珍しく電話があった。「そちらに○○○ありますか?それと△△△も・・。」

言うまでも無いが、○○○も△△△も、薬の名前である。



「すみません。○○○はあるんですが、△△△は用意が無くて・・・・」

「そうですか・・・・。」



ちなみに△△△とは、いわゆる業界用語で「ぞろ」と言われているところの後発メーカーが真似して安く作った薬であった。



「ぞろ」とはたぶん、あとからあとからぞろぞろ真似して出来るから・・・。



そういえばこの頃加山雄三がコマーシャルしてるよね、ジェネリック医薬品って。そうそう。あれの事なのよ。



まったくおんなじ成分の薬でも、最初に開発したメーカーのは、さまざまな動物実験やら何やら莫大な開発費がかかっているので、どうしても値段が高くなる。



後発メーカーはただそれを真似して作れば良い訳だから、安く作ることが出来る。だから当然薬の値段も安く収まる。

まあ簡単に言えばそういう事なのだ。



こういう薬は得てしてネーミングがすごい!

例えば、良く眠れるようになる睡眠薬は「グッドミン」とか、風邪の諸症状をほぐすように「ホグス顆粒」だとか・・・。(^^;



「無い!」って断ったのだからもう処方箋は来ないとばかり思っていたら、しばらくして八百屋のおじさんが処方箋を持って来た。



「おい、九子ちゃん、痛み止めも28日間出してもらって来たぞう。これで高くなるはずだ。いいだろう・・・?」



う~ん、28日間も痛みがとれない病気って何の病気だろう?(^^;



最後の「いいだろう?」には、従業員は処方箋持って来なくなっちゃったけど、オレが頑張ってこうして持って来てやるんだから、それでまあ許してやってくれなって意味が隠されているんである。



時間は夕方の五時過ぎ。九子が夕飯の支度をしていた最中であった。

でも九子はなんだか嬉しかったね。八百屋のおじさんの心意気が伝わって来たからである。



こうなったら夕食の支度なんぞに構っちゃいられない。



電話で告げられた△△△の他、我が薬局に常備してない数種類をファックスで医院の隣の薬局へ注文し、その間に患者負担額の計算と、薬剤情報を印刷する。



・・・・・と書くと、いかにも九子がてきぱきと仕事をこなしているかの如き錯覚をする人があるかもしれないが、実際は何をするのも人の倍も時間がかかっているのである。(^^;



医院の隣の調剤薬局から、折り返し電話が来た。

さっきの△△△が、実は病院側のこれまた配慮から、別の有名な薬に変わっていたのであるが、その薬が無いと言うのである。



ここにも病院側の気遣いがあった。

「△△△は「ぞろ」だから、あんまり置いてある薬局はないかもしれない。(ましてや笠原十兵衛薬局じゃあ・・・・・・・・・と思ったかどうかまでは定かではない。(^^;) 「ぞろ」じゃない由緒正しき×××なら、さすがの笠原十兵衛薬局にもあるかもしれない。」



残念ながら、気遣いは不発に終わった。

むしろ気遣いせずに△△△を素直に出してくれていたなら、医院の近くの薬局ですべては揃い、めでたしめでたしだった訳である。



仕方が無いので九子は、さらにもう一軒の薬局に×××の注文ファックスを入れる。



20分ほど経った後、もう一軒の薬局の方へ先に薬を取りに行って見たら客でごった返していた。

夕方の一番忙しい時間に行ってしまったらしい。



悪いので九子は、「もう一度30分ほどして来ます。」と言い残し、車に乗り込む。

するとそこの奥さんの薬剤師さんが、忙しいのにわざわざ店の外まで出てきて、「すみません」と深々と一礼される。



なんだか九子の胸は、ほわあっとあったかくなる。

忙しいんだから、無理して出て来て下さらなくてもいのに・・・・。

ましてや薬の小分けなんか、手間がかかるだけで全然儲からないのに・・・。







ここで九子は、「私だってこんなに忙しい事だってあるのよ!」と吹聴したい訳ではない。

日本人というのは、かくも気遣いの行き届いた人種であると言うことを言っておきたいのである。



日本人の生活に欠く事の出来ない「すみません。」という言葉。

そう、この言葉は挨拶と言い換えても良いかもしれない。

人間関係を豊かにし、社会生活を円滑に営むために欠くべからざるもの・・・・。



誰でも気楽に使うけれど、だからと言って自分に非があるなんて言ってる訳ではない。

あくまでも相手が自分のために割いてくれた時間やら労働力や心配りに対して、感謝を述べているのである。



だから英語に直す時は、くれぐれも”Sorry”ではなく、”Thank You !"にしましょうね。

そうでないと、大変な事になるかもしれませんよ。(^^;





私達の生活の中で当たり前のようにある他人への気遣い。

これは、日本人の誇るべき想像力のなせる業だと思う。



こう言ったら、相手はきっとこう考えるのではないか。

こんな事したら、どう思われるかな?



もちろんそう考えることで、見えない束縛にあって行動が制限されたり、時には深読みが過ぎて解釈を間違う事だってあるだろうが、それが気遣いから生じたものである限り、相手はちゃんと理解してくれるのだ。



そう。理解してくれるのが日本人なのである。



そして、それが理解出来た時にしみじみと感じる連帯感や幸福感。

ああっ、日本人っていいなあと思う瞬間である。



こういう事が出来るのも、海に閉ざされた狭い国土で長年生きて来た者同士、お互い似通った環境の中、性格や価値観までも似通っているせいだろうなと思う。



なんか忙しかったけど、いい気分で一日を終えられそうだよ。( ^-^)

沈む夕日がやけにまぶしい。





「ねえ、ママったらあ。夕飯まだあ?」

はっと我に帰る九子。



これから九子が人の倍も(^^;手間暇かけて料理作るより、みんなが大好きな近所のお肉屋さんのコロッケを買って来る方が早いよね。お腹空かせてるみんなに悪いし・・・。



出ました!お肉屋さんのコロッケ。

夕飯が間に合わない時の、母の時代からの我が家のお助けメニューである。



九子の気遣いによるこの提案は満場一致で採決され、嬉々としてお肉屋さんに走ったYが買ってきたコロッケの山はまたたく間に平らになった。



「やっぱりお肉やさんのコロッケはうまいよな。オレ、毎日でもいいぜ。そうすりゃあママだって楽できるだろ?」と、これも九子に対する気遣いか?



それってつまり、九子の手料理より、お惣菜コロッケの方が美味しいってこと?



確かにお肉屋さんのコロッケは、九子の手料理よりはるかに美味しい。(そこで負けを認めてどうする!(^^;)



だけど人間、毎日おんなじもの食べてたら飽きるだろうが!!

それを考慮した上で、それでもまだママの手料理がそれほど食べたくないって事なの、ええっ?



あのう・・・・。

そう言うのって、気遣いじゃなくて、腹の探りあいって言うんじゃあ・・・・。(^^;

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mu-ran

2005年に書かれた文章ですが
今拝見してなるほど、と思うわけです。

実は僕もヨーロッパに出てきたとき
ずいぶん「Sorry」を連発して
相手から「Sorry」はいらんと言われた経験があります。

自分が何故それを連発したのか?

そう考える前に、生きるためというか
前に進むことだけ考えて
thank you といい始めてはや20年です。

今日ご指摘に出会えて
なるほど、でした。

ただね。「すいません」っていう現代語は
あまり好きじゃないんですね。
「すいませんねえ、奥さん」ならわかる。

「すいません」っていうのは語調で決まるから
使うの難しいですね。
「すんまへんなあ」ならわかるんですがね。
関西人だからでしょうかね。

by mu-ran (2010-08-19 03:38) 

九子

mu-ranさん、こんばんわ。( ^-^)

あれっ?mu-ranさんは関西人でいらっしゃったのですか!
なるほど。むこうの「すんまへんなあ」はまた微妙に違うのかもしれません。

長野はまあ東京圏なので、「すみません」しかわかりません。
「すんまへんなあ」は行ったすぐから関西弁に染まった長女に聞けばわかるかも・・。(^^;;

>「すいませんねえ、奥さん」ならわかる。

なんだか面白いですねえ。( ^-^)
by 九子 (2010-08-19 21:43) 

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