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美容院にて [<番外 うつ病編>]

モノモライにはゆで卵の柏倉葵さんとこで、話しかけるタイミングが絶妙に美しい美容師さんの話を読んだ。

うん!わかるなあ。

そうそう。九子も美容室へ図書館の本を持って行ったりする少数派の客であるのだが、最近はもっぱら100円本になった。パーマ(perm)液がかからないだろうか・・とか気にする必要がないからだ。(^^;

おしゃべりな美容師さんが嫌いというのも、葵さんと同じ。
エネルギー(energy)不足の九子は、おしゃべりしてるとだんだん疲れて来る。
せっかく美容院へリフレッシュ(refresh)しに行って、疲れて帰って来るんじゃあ割が合わない。

だから、余計なことを極力しゃべらない人が好みだ。

でも、九子が行ってるとこはその点、誰に当たってもそんなにわずらしさを感じなくて済む。

ところがM子が行ってるところと来たら・・・。

M子が九子の悪口を店中に聞こえる声で言ってるから気に食わない・・・・という訳では決してないが(^^;、全部女性の美容師さんは、のべつまくなくお客さんと話している感じである。

おしゃべりなM子はいたく気に入っているが、九子は送り迎えするだけでエネルギーを吸い取られそうな気がする。

それは、若い九子がさらに若かったずっと前の話。(^^;
とても相性の良い美容師さんがいた。
イケ面では無かったし、がっちり型の背もそんなに高くない男の美容師さんだった。

ただ彼はとても自信家だった。自分の技術にも、たぶん利益をあげる経営者としての能力にも、自信を持っていたと思う。

それを証明するように、彼はしばらくして店で見かけなくなった。
聞くと、そのチェーン店の現場を離れて、管理職としてのデスクワーク(和製英語)が忙しくなったのだそうだった。

彼はたぶん九子と同年輩くらいで、子供が4人いると言った。たぶんその頃九子も4人位だった頃だと思う。

数では負けなかったが(^^;、男の30ちょいとで4人はすごいなあと思ったのを覚えている。

九子はその頃から文庫本を持って美容院へ行っていたと思うが、その彼がやっぱり、話しかけるタイミング(timing)がほどよかった。


月日は流れ、九子は相変わらずその美容院に通っている。
他へも寄り道したいが、何しろ安さが魅力だった。(^^;

彼が居なくなってから、担当の美容師さんは5~6人変わったと思う。

ここんとこ2年ほどずっとやってくれていた彼女は、出産のため6月からお休みだ。
今度は誰にやってもらおうか?

実は彼女はとても腕がいい。
その前にやってもらってた人がたまたまお休みで、彼女に当たったのだ。
そうしたら彼女が九子の求めてたどんぴしゃりのスタイル(style)にしてくれて、以来担当になってもらった。たぶん良くある話である。

でも前の人は相変わらず同じ美容院にいる訳だから、目が合えば会釈はするがそう言う時すごくバツが悪い。

小心者の九子は、一言二言、詫びを言いたいと思いながらも、いつも彼がいると伏し目がちになって何も話せないでいる。


シャンプー(shampoo)係は、比較的新米の美容師さんがなるようだ。
シャンプーひとつでも、それこそ髪の一本一本という位ていねいに洗ってくれる人と、ちゃちゃっと一応洗いましたと言う人と個性が歴然だ。

若い端正な顔立ちの彼は、本当に真面目に、丁寧に丁寧に洗ってくれた。
彼が余計なことをしゃべらないのも好ましかった。

しかし、彼は1年もしないうちにすぐに居なくなった。
無口な彼は、お客さんとおしゃべりが出来ないのを気に病んで止めていったのだと言う。
彼はもう別の仕事を選んだそうだ。


実は一度だけだが洋書を持って行った事がある。
これまた一度だけだが、当時頑張って付けていた「十年日記」も持っていったことがある。
しかも下手な間違いだらけの英語で書いてた時だ。

断じてこういう事はしないほうが良い!
ものすごく気まずい。(^^;

その気まずくなって担当をはずれた美容師さんが、何年かぶりで九子の頭をやってくれた。

彼も九子も大人だから( ^-^)、気まずかった話はおくびにも出さなかった。
もちろん以来九子も学習して、美容院へそんなちんけな物を持っていくのは止めた。(^^;

なんの話のついでだったか、九子は例の昔ひいきだった美容師さんの話をしてみた。
彼は結構その店で長いので、知っているかもしれないと思ったからだ。

彼から帰ってきた答えに、九子は絶句した。

「ああ、部長(と彼は言ったと思った。)の事ですね。」
何しろ子供が4人というのは珍しいからすぐわかってもらえる。

「実は亡くなったんですよ。何年前だったかなあ?ダムに車ごと突っ込んで。」

「自殺なんじゃあないかな。そんな事故るような場所じゃないもん。びっくりしましたよお。そんなそぶり全然なかったですからねえ・・・。」

「えっ?だって、お子さん、まだ・・・。」
「そうですよねえ。あの頃まだ中学くらいだったんじゃないかなあ。奥さんですか?たぶん美容師じゃないと思う。どうしてるんでしょうかねえ。」

自信にあふれてカットする彼の姿が、一瞬鏡に写った気がした。
そして不意にやり場の無い怒りがこみあげてきた。

うつ病よ!うつ病!
なんで誰か回りの人一人くらい、気が付いてあげられなかったかなあ?

「疲れてるみたいですよ。精神科行ったらどうですか?」
うつ病は広く認知されてきたとは言え、この一言を気楽に本人に言える人は少ない。
ましてや、何年か前の話ではなあ・・・。

精神科を標榜(ひょうぼう)すると患者が来なくなるからと、神経科とか心療内科とか、ストレス外来とかと言い換えている医院が今でもたくさんあるくらいだから、気楽に精神科へ・・というのはまだ日本の社会では時期尚早なんだろう。

だけど!だけど、悔しい!
精神科にさえかかれば、薬さえ飲めば、すぐに楽になる症状だったのに・・・・。


葵さんのタカハシさんよりも、新米シャンプー係君よりも、たぶん彼は誰よりもかっこ悪く、理不尽な理由でみんなの前から去っていった。

そして、一番哀しい去り方だった。
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コメント 2

柏倉 葵

[美容院に持って行くモノ]
トラバありがとうございます。
正直言ってとても意外な結末で
結末については何もコメントすることが出来ません。
が、ひとつだけ。

10年日記(英語バージョン)を持って
美容院へ行く!というのは結構凄いです~~!
私の『阿弥陀堂だより』もかなりでしょうが(汗)
双璧と言えるかも?
ここまで来るともういっそのこと
それを超えるモノは何??と思わず考えていたりする私。(爆)
何か見つかったら実際に持って行ってみて
美容師さんの反応を日記にUPします~♪
(逆転の発想で、こういうのも結構楽しいかも?<img src='/image/hammy/m001.gif'>)
by 柏倉 葵 (2005-05-21 23:48) 

九子

[柏倉 葵さん!]
トラックバックし逃げ(なんて言葉ある?)で、コメントも置いて来ないですみません。珍しく忙しい一日だったもので・・。

そうなんです。本当にそんなことがあるのか!という結末でした。

自分と相性のいい人っていうのは、どこか自分に似たところがあるのかな?と考えるので、自信家の見かけよりもずっと気弱な部分があった人だったのかなと思ったりします。
(まあ自分の中では、自分はナイーブという前提なんですが・・・(^^;)

10年日記ってそんなに珍しいですか?
それほどでもないと思って持って行ったのですが・・・。

自分の中では、日本語バージョンなら今でも持っていって変じゃないと思ってたりします。(^^;

もっとも、ブログを書き始めてから一行も書いていませんが・・。

>何か見つかったら実際に持って行ってみて
美容師さんの反応を日記にUPします~♪
(逆転の発想で、こういうのも結構楽しいかも?)

葵さんなら、きっと楽しい日記を書いてくれそう。( ^-^)
楽しみで~す!
by 九子 (2005-05-22 19:00) 

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