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Old friends (旧友) [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

今から何十年も前、高校生だった九子はご多聞に漏れず、始めて聞く 洋楽 の世界に没頭していた。



当時絶大な人気を誇っていたサイモン&ガーファンクル

九子は訳もわからずに何度もレコードを聞き続け、英詞を邦訳と共に書きとめた。



あれから長い年月が経ち、それでもこれでも下手の横好きで続けている英語学習の成果か、当時全くわからなかった歌の意味も、だんだんわかるようになりつつある。





夏休みの数日を過ごした真鶴のリゾートマンションには、海を見下ろすテラスがあった。

「二人を連れてくなら、一年でも早い方が良いから・・・。」とリッチな親戚のCさんが工面して貸してくださったものだ。



そう。二人とは九子の両親である。

5~6年前まで年の割に若さを誇っていた二人であるが、ここのところ急激に衰えが目立ってきた。



おいしい魚料理のお店も素敵なレストランも紹介されていたのだが、彼らはマンションを一歩も出る事もなく、半分ベッドに横たわりながら日々を送った。



その二人が最後の日の朝、ようやく明るくなった海の見えるテラスに始めて出た。「せっかく海へ来たんだから、潮の香りくらい嗅いでおかなくちゃね。」



テラスにはベンチではないけれど、木製の背もたれのついた一人掛けの椅子がいくつか並べられていた。

最前列の一番海に近い椅子を、二人は選んで坐った。



背が高くがっちりした父と小柄な母。

50余年を寄り添いながら、波立ちながら、共に生きて来た。



隣り合ってはいても、どこか違うところを見ている二人。

だけど目の前にあるのは、同じ灰色の海なのだ。



二人のすっかり小さくなった背中を眺めていたら、ふとこの曲が口をついて出た。









”Old friends"  by Simon & Garfunkel



Old friends, old friends,

Sat on their parkbench like bookends

A newspaper blown through the grass

Falls on the round toes

Of the high shoes of the old friends



Old friends, winter companions, the old men

Lost in their overcoats, waiting for the sunset

The sounds of the city sifting through trees



Settles like dust on the shoulders of the old friends



Can you imagine us years from today,

Sharing a parkbench quietly

How terribly strange to be seventy



Old friends, memory brushes the same years,

Silently sharing the same fears



旧友      サイモンとガーファンクル



年老いた仲間、老人仲間が二人

公園のベンチに腰掛けていた。

まるで本立て(ブックエンド)みたい。

芝生の中を 新聞紙が吹き飛ばされて

老人達の 底の深い靴の

まるいツマ先に落ちていく。



老人仲間は、冬の伴侶。

老人たちは オーバーコートに埋もれて

陽が暮れるのを待っている。

街のざわめきが 木立から流れてき

チリみたいに 老人たちの

両肩に積もってゆく。



君は 想像できるかい?

今日から何年も先に ぼくらがヒッソリと

公園のベンチを分けあって 坐っているところを。

70歳になるなんて ヒドク不思議な気がします。

年老いた仲間が二人

想い出が 同じ時間を撫ぜて通る。

同じ怖れを 静かに分けあいながら・・・・

    (牧 範之 訳)






公園のベンチにブックエンドみたいに・・って言うからには、端っこと端っこに背中合わせで坐っているのは、男性とおぼしきふたりの老人だが、それがたとえ夫婦であったとしても、たぶん当時20代か30代の若者にとっては「70歳に成るって言う事はおぞましいほど奇妙な事」だったのである。



サイモンとガーファンクルの二人はその後「ブックエンド」というアルバムで老人ホームの取材をし、実際の老人の声を載せている。



きっと彼らは、どうしても理解できないことを理解しようと懸命だったに違いない。



「君は 想像できるかい?

今日から何年も先に ぼくらがヒッソリと

公園のベンチを分けあって 坐っているところを。

70歳になるなんて ヒドク不思議な気がします。」





二人はたぶんそろそろ、彼らにとってterribly strange だった70歳に近づきつつあることだろう。

マリファナなんかやってる場合じゃあないよ、ガーファンクル君!(^^;)





数日前九子はとうとう、皆様より一足お先に、大台にのっかった。

Eカード会社から、憎らしいほど正確に

誕生日カード
が舞い込んだ。



思ったほど悪くはなかった。

「別れの曲」が流れる中、バースデイケーキのろうそくは消え、青空に向かって開かれる窓・・・・。



(どうして「別れの曲」なのかは謎だが・・・)



大台にのるって、少なくとも「terribly strange」ではないようだ。



みんなも早くこっちへオイデ!

(って、そこは霊界かい?(^^;)




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コメント 4

近くの住人

[老い]
九子さま こんにちは
私の両親もめっきり老いました。小学生だった私をしつける
てきぱきとしていた両親の姿も今は消えうせ、老いたものだなあ
とつくづくと感じます。

生老病死は無常の中でやってきます。兄弟のいない私は両親に対する責任を果たさなければなりません。

「お任せするんだ」昨晩、某和尚様より大師様のお言葉を教えていただきました。

大きな災難も欲も望みも病気もみな堂々として「お任せして」この
大宇宙の大きな法の中で「仏」の大慈悲の中に生かされているんだと・・・自分なりに解釈しました(ちがってるかも)

また某和尚様からは「彼岸」と「し岸」(漢字わからず)の図解の
説法を賜りましたよ。

霊界ってまだ低いところみたいです。なんでって生まれ変わっちゃうんだから・・・

それからサイモンとガーファンクルって名前は知ってるのですが
曲は知らなくてどうも・・・カーペンターズとかニュートンジョンの方を聞いてました。では
by 近くの住人 (2005-09-14 11:59) 

九子

[近くの住人さん、有難う( ^-^)]
実は「お誕生日おめでとう!」という軽いノリのコメントがもしかしたら結構たくさん頂けるかも・・と期待などしておりまして、ちっとも来ないので本人寂しがってたところでした。

「あ~あ、大台って70歳と勘違いされたのかしら?」とか、「大台に乗っちゃうと、お誕生日おめでとうと言うのもはばかられるのかなあ?」とか、すねちゃったりして・・・。(^^;

近くの住人さんも1人っ子さんですか?
一人っ子には坐禅が良いと思いますよ。( ^-^)

>霊界ってまだ低いところみたいです。なんでって生まれ変わっちゃうんだから・・・

確かに・・・。
まあ九子はいずれにせよ、高いところ目指せるとは思ってませんから・・。(^^;

カーペンターズも良かったですね。カレンさんが死んでしまうとは思っても見ませんでしたが・・。

オリビアニュートンジョンは、ジョントラボルタと一緒に出た青春映画「グレース」でしたっけ?を見に行ったのを覚えてるくらいです。

サイモンもガーファンクルも、あんまり知ってる人いないかもね。(^^;
by 九子 (2005-09-14 22:38) 

近くの住人

[失礼しました・・・いやはや]
九子様 おはようございます。

お誕生日のこと・・失礼しました。
女性の方が○○の大台にのったとのこと。
やっぱりおめでとうございますって言ってよかったんですね。
おめでとうって言えるのは女性は20代?まで、それから
長寿を祝って言うのか?女性に対しては微妙・・・
どうも失礼しました。

では声を大にして「おめでとうございます!」

ところで目薬使い始めましたよ。ついに花粉症(秋の)目がとっても楽です。ありがとうございます。
by 近くの住人 (2005-09-15 07:46) 

九子

[あらら、気を遣わせてしまいましたね。]
まあまあ、そんなに誤らないでくださいまし。
はい。声を大にして言って頂き、誠に有難うございます。m(_ _)m

でもまあ、男性の方が「若さが魅力のすべて」という訳ではありませんから、その点いくつになっても気楽に誕生日を祝えますね。少々うらやましい気が致します。

雲切目薬、花粉症にはかなり評判いいんですよ。
秋の花粉症も、結構多いみたいですね。
どうぞ存分にお試しください。( ^-^)
by 九子 (2005-09-16 14:05) 

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