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男と女の間の河 [<九子の万華鏡>]

ある年代以上の人々にとって長谷川きよしの「黒の舟唄」のこの歌詞は、そのメロディーの美しさとともに記憶に深く残っているのではなかろうか。

♪男と女のあいだには、ふかくて暗い河がある
だれも渡れぬ河なれど、エンヤコラ今夜も船を出す♪

知らなかったけど野坂昭如の作詞だったんだね。

現代は能力のある女性がどんどん男性の職場に進出し、男女の役割分担というものもだいぶ変わっているとは思うが、ひょんなことから九子は女性がまだ男性と同じになりきれないんじゃないのかなあと思われる場面に出くわした。

それは、仕事に関する私情のさしはさみ方の問題である。

実はいつもお騒がせの九子父であるが、最近風邪をこじらしてまた病院のお世話になることになった。

家族の中で誰かが入院すると、結構毎日の病院通いが負担になる。
勢い、余計な仕事は引き受けたくないという気分になるのは九子だけ?(^^;

そんな折、信大附属養護学校から水質検査の依頼が届いた。
給食室のお湯がわずかだが赤く色づいているので、不定期だが水質検査をして欲しいと言われる。

仕事は単純。ただ、水を規定の容器に取ってきてそれを検査センターに届けるだけである。

そんな単純なことであっても、なんだか電話で言い訳してしまっている九子がいた。
「すみません。実は家族が入院してしまって、ちょっと時間が取れるかどうか・・。」

その時はっと気がついた事があった。
父の病院と養護学校は目と鼻の先なのである。

「あっ、大丈夫です。やっぱり病院の帰りに伺います。」

教頭先生はさも当たり前のように、「じゃあお願いします。」とおっしゃった。

その瞬間である。
九子が男と女の間にある深くて暗い河の存在に気がついたのは・・。

ああ、こう言うことって男社会じゃあ当たり前のことなのだなあ。
こう言う事、すなわち何が起ころうが仕事を優先させる事。

そうしたら先日、柴田恭兵さんが今年の2月、20歳の息子さんをぜんそくによる心不全で亡くされていたというニュースが入った。

柴田恭兵は悲しみを乗り越えて、誰にも何も告げないまま「あぶない刑事」の撮影を続けたと言う。

似たような話はどこにもあって、信大附属中のPTA会長だった同窓生のNさんは、病気の奥様の容態がかなり深刻な中を卒業式、入学式のスピーチを何食わぬ顔で続けられた。

こう言うことって、女性にはたして出来るだろうか?
もちろん出来る人もいるかもしれないが、少なくとも九子には無理だ。

そもそもこういう家庭の事情をあらわにするような「女々しいこと」はまかりならんという掟は、男社会が作りだしたものなのだろうか?

「女子供」と、一時期まで女性と一緒にくくられていた男の子が成人し、職業を得て一人前の稼ぎ手になり、稼ぐためにはおのずから仕事の優先順位が一番になり、結果として家族の事情が後回しになる。

その点、長い間稼ぎ手と言うよりはむしろ、家庭の護り手であった女性は、何はともあれ家族の事情を優先する。

その結果、パートの主婦は、やれ子供の学校だ、やれ子供の病気だと言って休みがちになって当てにならないという状況が生じることが多いようだ。

また家族の誰かの問題は、女性の感情にまで影響を与えて、仕事の質や能率が落ちてしまうという状況が生じてしまう事もあるのでなかろうか?

いやもちろん女性すべてがそうである訳ではなかろう。
家庭のことは家庭のこと、仕事とは一線を画して上手に乗り切る人もいらっしゃるとは思う。

しかしそうするためには、ちょっとした頭の切り替えと言おうか、気持ちを整理してしまっておける引き出しと言うか、そういういわば自分の感情の分類能力が必要になってくる気がする。

整理整頓やら分類やら・・。こういう分野は九子の数あるダメ分野のうち際立ってダメな部類である。(^^; 
結果として九子は、家庭の事情を抱えながら普段どおりに仕事をするのは苦手である。

たぶん男性一般や、男社会でばりばり仕事をする女性では、家庭の事情を上手にしまっておける引き出しのなかに、心配やら不安やら気がかりやらもいっしょくたにしまいこんで、何食わぬ顔で仕事が出来るのかもしれない。

こころの余裕ということもある。
男性のほうがたぶん女性よりも物事を広い視野で見ることが出来ているのかもしれない。
女性は事がおこると、ただただその一点に考えが集中してしまう傾向があると思う。

その結果、他のものが見えにくくなってしまう。

実は九子が日頃おすすめしている坐禅だが、どうしよう、どうしようとその一点ばかりが気になって仕方が無いとき、「そんなことどうってことないさ。」と自然に思えるこころの余裕が生まれてくる。

いわば悪いところだけ拡大図で見ていたものを俯瞰図(ふかんず)で見られるようになる・・・みたいな。


それと男の面子(めんつ)みたいなのもあるかも・・・。
外の顔うちの顔って、男たちはみんないつの頃からか身にまとうものらしい。

先日の父の入院を次男Sに告げたとき、彼は友人と一緒だったらしかった。
ずいぶんあっさりと「あっ、そう。」と電話を切ってしまったなあと思っていたら、次の日心配そうに電話をかけなおしてきた。

まあ所詮女には良くわからないのが男の面子というものらしい。


父の入院騒ぎは、実はそれだけでは終わらなかった。
それに続くサプライズの部分も含めてまた日記に書かせて頂きますが、とりあえず、女々しい九子はしばらくの間更新が不定期になりますこと、どうぞお許し下さい。m(_ _)m
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コメント 4

近くの住人

[うちの場合は・・・]
こんばんは 九子さん お久しぶりです。

今月は大変でした。その前に「黒の舟歌」レコード盤(古ー)もってますよ。私は失恋を癒すためによくカラオケで歌いました。(笑)(汗)

さてお父様、大丈夫ですか?お大事になさって下さい。

実は私も実母が2週間入院しました。看病って大変ですね。家内も働いている共稼ぎ者同士、私の方が神経症で早く帰るし、昼休みは長いし、私も洗濯物を干したり入れ込んだり・・・病院は毎日通いました。

うちは男と女の深くて長い河ところじゃありませんでした。おかげで悪性じゃなくて良かったですが・・・看病は一家のリズムを
狂わしてしまって大変。私の薬の量も多くなるし。

とにかく九子さんもお父様もお大事にして下さいませ。看病される方も、する方も。
そんなんで10月は坐禅も少なく、坐禅していても心が落ち着きませんでした。私の修行の浅さです。ではまた
by 近くの住人 (2005-10-30 18:43) 

九子

[お返事遅れてすみません。]
これからもお返事滞りがちにはなりますが必ずお返事しますので懲りずにコメント下さいね。( ^-^)

本当に家族の病気というのはいろいろなところに影響を及ぼしますよね。

私もこれで店がもし忙しければとんでもない事になるところでした。
(暇で良かった。(^^;)

はい。お互いに病気持ちですから、無理しないようにしましょうね。
( ^-^)

坐禅は奥が深いですから、良く坐れないのは近くの住人さんばかりではありません。これで20年もやってるっていうんだから、仏様に叱られそうな私です。(^^;

まあ、何事も細く長くで行きましょうね。( ^-^)
by 九子 (2005-11-02 22:40) 

maria

[お大事に]
 その後のお父さまの具合、いかがでしょうか。親が入院する、という事実は、受け止めがたいものではないのでしょうか。私の両親も共に70代ですが、おかげさまでとても元気です。離れている私にとっても、これ以上有難いことはないです。でも、自分が年を取るに連れて、それ以上に年を取る親、その現実を受け入れるのが、日に日に辛くなります。

話が逸れましたが、アメリカでももちろん女性は子供が病気になったりすると、女性は早退したりします。でも結構男性もそういう風がなきにしもありません。そうしないと奥さんが怒るのかもしれないですが・・・。そしてそれを容認する社会もあります。そしてそれが親でも兄弟でも同じかな。この国は『仕事より家族』と言うのが基本だったはず。もちろんリストラなどの不況もあり、多少の変化はあったかとは思いますが。最初は、そんな情景を見て、「ふぅ~ん、日本とは違うな」と思ったものです。でも、先日観た『陽はまた昇る』で、奥さんが脳卒中で倒れたにも関わらず、仕事を優先した部長、そしてそれを理解していた奥さんを見て、「正に日本人だな」と思ったのですが、それを一緒に観ていた夫も「良い奥さんだ」と言っていたんですよね。何を暗示するのか(苦笑)。それほど大事な仕事でもあったけど、それだけ仕事への責任感があり、また夫婦間の絆も強いんだな、と感動したものです。

 確かに女性の社会進出は、まだまだ難しい、と言うか、この問題は、家族が居る限り一生抱えていくのではないかと思いますし、命に限りがある人間である以上、これは仕方がないものだと思います。
by maria (2005-11-06 02:46) 

九子

[ご心配おかけしてすみません。]
>・・・離れている私にとっても、これ以上有難いことはないです。でも、自分が年を取るに連れて、それ以上に年を取る親、その現実を受け入れるのが、日に日に辛くなります。

全くその通りですね。お二人とも70代ならまだまだお元気ですよね。
ただ、大病して、特に手術なんかするととたんに弱くなっちゃいます。

母もまだ一応70代なのですが昔は若さと体力と気力を誇っていたのがガンの手術後すっかり弱くなってしまいました。ガンそのものは手術だけでうまく行き、放射線も抗がん剤もしないで済んだのですが・・。

アメリカだからこうだろうと思いこんでいる事が必ずしも当たらない事たくさんあるのですね。
アメリカ人ほど多様な人格の持ち主はいないと言われるくらいだから、人によってもさまざまなのでしょう。

ご主人様は、結構日本人的なのかな?( ^-^)

そうそう、そのうち入院騒動の顛末を日記に書こうと思っているのですが、またまたmariaさんの日記にトラックバックさせて頂く事になりそうです。その折はよろしくお願いします。m(_ _)m
by 九子 (2005-11-06 23:23) 

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