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最低の気分の日 [<番外 うつ病編>]


ゴールデンウイークは、九子にとって鬼門のウツの季節である。



今回はじめて、うつ気分に変な高揚感が混じるなんともいえないうす気味悪さを体験した。

なんでもそうかも知れないが、初めてのことを体験すると人間は不安に思うものだ。



うつ病ばかりを繰り返してきたのが、いよいよ躁病を発症したのだろうか・・とか、うつ病だったらまあ身体を横たえて寝ていればなんとか一日は過ぎるのだけれど、この不快な落ち着きなさの中で自分には一体何が出来るのだろう・・とか。





ウツが始まる前の数日、気分の上がり下がりの振幅をいつもよりも感じる時がある。

前回の割りに明るいウツ日記などは、そんな状況下で書いたものかもしれない。





ウツ人間は、ウツ状態に突入する前にふだん以上に動きまわってことさら消耗するという事も見聞きするが、そういう事ってどうやら当たっているかもしれない。



明日の朝になったら何も出来なくなっているかもしれないと思えば、その前に出来るだけのことをやっておきたいと思うのも人情だ。





どうしようもなく気分が悪い日というのはきっと誰にでもあって、特別な事でもなんでも無いんだろう。



こういう落ち込みの日々が一定の期間どうしても治らずに継続するのと、この春先という時期に足しげくやって来ると言う事だけが、九子の場合普通の人の落ち込みと違っているというだけなのかもしれない。



そして病む人の心のもろさを、身をもって体験して共感出来る季節でもある。





毎日抗うつ薬と気分調整薬のお世話になるようになってから、もう7年近く。

毎年のうつ状態はお陰でだいぶ楽になった。





以前は病気の症状だったのか毎日の気分も変わりやすい人間で、それを坐禅=

座禅によって無理やり矯正していた気がするのだが、薬を飲みだしてから気分は日常的に割合安定している。



ところがどうやっても滅入って仕方がない日がある。



女性ならおわかりだろうと思うが、要するに生理日との兼ね合いだ。



もちろんいの一番に坐禅をする。



しないよりは良いことは決まっているのだが、時間をかけただけの成果が乏しい。



これは多分うつ病の時に坐禅がうまく組めないのと同じ理由で、ホルモンの影響で脳の中の化学物質に何らかの変化が生じているせいに違いない。





どうも調子が出ない日と言うのは誰でも必ずあると思う。



それをうまくさばいて、そこそこ乗り越えてしまう事の上手な人と下手な人というのも歴然としてあるはずだ。



九子はそれが極めて下手な部類に入る。



そもそも自分の気分などというものに、全く無頓着な人もいるだろう。



頭が痛い、熱がある、吐き気がする、おなかが痛いという身体の不調の信号以外にはまったく反応しない、精神的に健全な人だ。



たぶん彼らはいつでも身体を適度に動かすのが大好きで、血液中に新鮮な酸素をたっぷり運べる度量の大きい人々だ。



九子の母もそういう人々の筆頭にいた。



そういう人々にウツの辛さをわかってもらうのは至難の業だと思うが、あえて試みてみる事にする。





ウツの気分の悪さというのは、変な言い方だが酸素不足で苦しい状態に似ている。



とにかく自覚的に苦しいのである。重苦しいのである。いたたまれないのである。



「圧迫感」と表現した医者がいて、なるほどと思った。

そこが普通の気分の悪さと格段に違う気がする。



絶えまなく襲い掛かる不安感というのもある。

誰にもわかってもらえない辛さを、イライラという形で家族にぶつけることもあろう。



何かを楽しむどころではない。

ただただ苦しさをのがれるために、なるべく活動を控えて身を伏せて横になっている。

それしかなす術が無い。



当然のことながら、全神経が自分の意識に集中する。



感じているのは、不安、絶望、イライラ、そして、ひどい自己嫌悪。

そして多くの場合、眠ろうとしても眠れない。

こういう状態が一定期間、たぶん最低で一ケ月は持続する。(うつ病診断では、最低2週間症状が続く事が条件となっています。)

 



実際ウツ状態では、自分が吸ってる空気だけが特別に悪いのではないかと感じる事がしばしばある。





ウツが治って初めて、「ああ、生きるって、こんなに簡単な事だったのか。なんで自分はあんなに大変な思いをしていたんだろう。」と感じられるようになる。



水中にもぐっていた人が、やっと空中で息が出来るようになった時みたいに・・。





そんなウツ人間は、ちょっとした気分の不調にも敏感になり易い。

気分というものを必要以上に気にしすぎるかもしれない。

また、ウツが来たのか・・とふだんから恐れているからだ。





とにかく調子が出ない日は、何をやってもうまくいかない。

もともと趣味の豊かな人間ではないので、出来る事が限られているせいかもしれない。



音楽を聴く、ポッドキャストを流す、テレビを眺める、好きな本を読む、ネットショッピングのページを開く、何か書いてみる・・etc.

たいていの場合そのどれをやっても、いつもほどのめり込む事が出来ずに、結局ゴロンと横になって惰眠をむさぼるくらいしか方法がない。



気分を変えるために昼寝しか方法がないというのはなんという情けなさだろう。



でもまあそれによって、そこそこ気持ちは上向いてくる。



たった一日であってもこうなのだ。



治らないうつ状態、神経症、そしてもしかしたら境界性人格障害と言われる人々の日常が、こういう毎日の連続であったとしたら、自分以外の人間がいかにも楽しげに人生を謳歌し、自分の主観的な苦しさだけが無限に続くように思えたら、そういう彼らの気分の中で自分を、他人を損なう行為があったとしてもそれは仕方ないんじゃないかとなんとなく大目に見られるような気になってくる。



大の男が絶望にかられて崖に身を投じるのも、他人をうらやむ身勝手な殺人鬼が引き金を引くのも、

もしも彼らの中の気分という住処の居心地がほんの一瞬良かったとしたら、避けられたかもしれない事態ではなかったのか、とも思う。





幸せも不幸せも、気分と言う魔物の中にある。



気分と言う魔物と戦う方法は、人によりさまざまなのだろう。



坐禅に出会った時、気分を変える魔法に出会ったと思った。



しかし身体のリズムに起因する気分の不調であったり、精神を病んでいる場合には、その魔法にも打つ手が乏しい。



魔物と言うもの、やっつけるよりもいっそのこと手なずけて、一緒に散歩したりするくらいの方がいいのかもしれないと思ったりもする。





最低の気分の日は、そう何日も続いたわけではなかった。

基本的には続いているのかもしれないが、なんとかかわせるようになった。



今、薬ではないその事に心の底から感謝している。


★坐禅は基本的にはうつ病には効きません。うつ病に効くのは薬しかありません。どうぞそこのところを誤解の無いようになさってください。
タグ:うつ病 坐禅
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コメント 6

あずーる

[うつ病ではないけど・・・]
気分がのらなくて、何にもしたくない、
誰にも会いたくない、
ただひたすらゴロゴロ、おもしろくないTVを
みている・・・・
夜は寝れなくて、朝おきれない・・・

そんな症状、だれでも多かれすくなかれあると
思います。特に、私は生理痛がひどいので、
その近辺に気分がゆうつになります。

九子さんの魔法の座禅やヨガなんかは、ずいぶん
助けてくれますよね。
それから光療法(?)、午前中の日光を浴びること。

私はしんどいときは、おもいきりダラダラするのも
いいかなぁと思っています。
でも、九子さんのアドバイスのように、あんまり
ひどかったら心療内科にいくほうがいいですよね。

心の病、病院にいくの抵抗ある人多いみたいですが、
やっぱりひとりで抱えないで専門家に相談するのが
いいと思います。
by あずーる (2007-05-10 11:39) 

九子

[あずーるさん、ご心配して下さって有り難う!( ^-^)]
毎年毎年のことなのでいい加減にして欲しいのだけれど、やっぱり私の体内時計がそうなっているみたいなんですよね。

もっとも去年の今頃は、父が亡くなって「ウツなんかになっていられない!」という気持ちがあったのと、実は事前に抗ウツ薬をかなり多めに飲んでいました。だから去年は良かったんですけどね・・。

あずーるさんも、やっぱり生理の時調子悪いよね。あれもいかんともしがたいもの。

ヨガも坐禅も腹式呼吸がいいんだと思います。

>それから光療法(?)、午前中の日光を浴びること。
これも本当に大事ですよねえ。

ウツは頭の中の病気なので薬が無いと治らないのだけれど、一面時期が来ないと治らないという部分もあります。

毎年のイベントだと思って、おしまいになるのを待ってみます。
(^^;
by 九子 (2007-05-10 21:51) 

あずーる

[九子さんの この記事よんで・・・]
同じような悩みをもつ人は きっと少し心が軽くなると
思います♪

そうそ、30年も前に書かれた有吉佐和子の「複合汚染」で
農薬のデメリットとして神経にも影響してウツになる人が
多いというのもでていました。
農薬だけじゃなく、化学物質も影響あると思うのですが。

神戸の榊原事件、池田の小学生殺害事件、通り魔、動物虐待
などなど、事件にならなくても心の病の人がおおいのに、
国として心療内科を増やし、もっと気軽にカウンセリング
できるような環境を早急に作るべきだと思うのですが。
by あずーる (2007-05-11 01:09) 

九子

[頭の中の改革]
>そうそ、30年も前に書かれた有吉佐和子の「複合汚染」で
農薬のデメリットとして神経にも影響してウツになる人が
多いというのもでていました。

複合汚染、タイトルは有名でしたが、例によって読んでないかも・・。(^^;; 農薬でウツになるんですか。
でもあの当時は公害が本当に深刻な頃でしたから、ありうる事かも知れません。

ちょうど今の中国みたいな感じかな?

>神戸の榊原事件、池田の小学生殺害事件、通り魔、動物虐待
などなど、事件にならなくても心の病の人がおおいのに・・・

本当に日本人はどうなっちゃったんでしょう。

そこまで行かなくても給食費や保育料の不払いに見るような公衆道徳心の低下!

誰か知恵のある人が真剣に考えてどうすればこういう人間たちを作らずにすむのか徹底的に研究して欲しいですよね!
by 九子 (2007-05-11 22:33) 

あずーる

[今も変わっていないかも・・・]
>でもあの当時は公害が本当に深刻な頃でしたから、ありうる事かも知れません。

九子さん、それがねぇ、今も農地ではヘリで殺虫剤散布があったり、食べ物は添加剤が含まれていたり、知れば知るほど化学物質に汚染されているんですよ。それから、その時、海を汚染した水銀は30年たっても、海の中。食物連鎖で、私たちは汚染濃度の高い魚介類を食べているかもしれません。

この本、お薦めなので、時間があれば読んでください。

>そこまで行かなくても給食費や保育料の不払いに見るような公衆道徳心の低下!

当然の義務の不払いは言語同断ですが、
政治家や公務員の税金無駄づかいを考えれば、払いたくない
という気持ちもわかります。
税金を無駄遣いしている人たちは、罪にもとわれないし、返金もしない。
正直で働きものに希望がみえない、おかしなシステムの世の中なんとかしなくちゃなのに、政権はかわりませんねぇ・・・・;;
by あずーる (2007-05-13 22:40) 

九子

[複合汚染でしたよね。]
有吉佐和子さん、読んで見たいと思います。

でも30年前とあんまり変わっていないっていうのもショックですね。

政治家の不祥事も呆れるくらいありますが、やっぱり子供の教育のために親が保育料や給食費払ってないんじゃ示しがつかないから、庶民のモラルくらいは一定水準を保ちたいですよね。これが無くなったらこの国はおしまいですから・・・。
by 九子 (2007-05-14 13:09) 

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