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木枯し紋次郎とジャック・スパロウ [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

ヤクザの判断力の話を書いたところで、木枯し紋次郎のブログを書いていらっしゃるおみつさんに、「(任侠の世界の)生き方の美しさは、無宿渡世の紋次郎にも通じる」というコメントを頂戴した。


確かにそうだなあと思いながら考えてみると、ハードボイルド小説を例に出して「かっこよさ」を比較したのはそもそも誤りだったのではないかと思えてきた。


ハードボイルド小説の主人公であるたとえばフィリップ・マーロウのかっこよさは、たしかに自分の美学を持つカッコよさかもしれないが、基本的には強いからこそかっこよいのであり、彼は、coolカッコよいだが、cocky・・付け上がっている、お高く留まっているであり、flippantぶしつけな無礼な生意気な・・という形容詞を付けられているらしい。


そこには日本社会のへりくだる文化の片鱗も見られず、己の強さをひけらかすタフな人間のエゴイズムすら感じられる。(よく読んでないので違ってるかもしれません。m(_ _)m)


タフでなければ生きていけないアメリカならではのダンディズムなのであろう。


鶴田浩二や高倉健の美しさはやはり日本の土壌に根付いた仇花の美しさであろうから、やはり仇花である木枯し紋次郎の美しさになぞらえるべきであった。


義理や掟を重んじる世界と言うのは、今よりも昔の方がずっと一般人の暮らしに根ざしていたように思う。


当時の政治の基をなす侍社会というものがそもそも将軍を頂点とする縦社会である以上、秩序を守る上で掟は何より重要だったと思われる。


ヤクザと紋次郎のただひとつの違いは、ヤクザの世界は基本的に団体組織であり、木枯し紋次郎は一匹狼であるという点だろうか。


組組織であるヤクザの社会では当然のことながら親分子分の序列があり、日頃の行動一般が掟に支配される。


紋次郎の場合はその点、そういう目に見える縛りは少ないと思われる。


もちろん渡世一般の常識的な掟というものは遵守した上で、彼の場合は彼自らが自分に課している彼なりの美意識であるとか哲学であるとか、そういう言わば内的規範に突き動かされて行動しているように見える。


そういう意味で言うと、ハードボイルドのフィリップ・マーロウに近いものも感じる。


個で動いている以上、何をやっても破門される事も無ければ、家族を傷つけられる心配も無い。
基本的に守るべきは自分の身ただ一つなのだ。


そういう普通に考えればかなり自由にふるまえる立場にありながら、紋次郎はとことん自分に厳しい。


この厳しさは、病的と言っていいくらいの水準だ。(^^;;


それ一つしか守るべきもののないはずの自分の命に対しても、紋次郎はさほどの執着を持っているようには思えない。


前にも書いたが、すべての己の欲望をこそげ取ることのみに彼の生きる目標はあるみたいな気がする。つまり仏教で言うところの諦める事、諦観である。


今日一日なんとか生き延びたら、明日の事はわからない。
路傍の無縁仏を眺めながら、明日はこうなるかもしれないわが身の運命を意識に刻みつけながら歩き続ける。


歩く事だけが生きる目標であるかのごとく、歩く事になりきってただただ歩き続ける。



木枯し紋次郎の「所作の美しさ」を轟拳一狼さんが論じていらっしゃるが、確かに紋次郎の動きには一分の無駄も無い。


全ての動作を集中して行う事によって、やっている自分とやっている行為そのものとが渾然一体となる三昧の世界に到達している禅僧のような紋次郎の動き。



生きている限り生き続ける。行き続ける。そして死ぬ時が来たらのたれ死ぬだけ・・。


いくらでも自由を謳歌出来る立場にありながら、己を律して全ての欲望を断ち切ろうとする木枯し紋次郎のカッコよさは、いつのまにか30年前のテレビ映像を知らない若い世代の共感も得て、今また静かなブームが起こっているらしい。



・・・・と、ここまで書いたところで、末娘のM子が今日はどうしてもパイレーツオブカリビアンの一作目、呪われた海賊」を見なくちゃ!と言って駆け込んでくる。


彼女は2作目のデッドマンズチェストを映画で見ていてその面白さにはまったらしい。


どこがそんなに面白いの?と新聞のテレビ欄の解説を見た九子の目に飛び込んできたのが「一匹狼の海賊」の文字。


えっ?一匹狼?木枯し紋次郎といっしょかあ。
でも、どっか違うんだろうなあ。どこが違うんだろう?
しゃあない!見てみるかあ・・・。


という、ファンの方々には叱られそうな理由で見始めた九子だったが、これがいやあ~面白かった。( ^-^)


さすがディズニーランドの一番人気のアトラクション「カリブの海賊」からヒントを得たと言われるだけあって、酒場の場面などアトラクションを髣髴とさせる。


ジョニーデップ演じるジャック・スパロウの破天荒な魅力は、そのいい加減さにありそうだ。


もともと彼は海賊だ。
奇しくも映画の中で言っている様に、「海賊の掟なんていうものは、心意気みたいなもんさ。」


所詮、海賊にとって掟なんかはあってないようなものなのだ。


そんなら彼の行動規範は何か?


まあそれもあってないようなものだろうが(^^;;、面白おかしく生きる事だろうか?


一匹狼だが、友情の大切さは知っている。


大海原で人間一人で生きていくことは出来ない訳だから、とりあえず仲間は大事にする。


だけど、金には目がない。酒も浴びるほど飲みたい。きれいな女も抱きたい。
やってることは煩悩の塊だ。


のろわれた金貨一枚を盗んだ事によって彼も一瞬不死身になるが、M氏は「そうなるためにわざと盗んだ。」と言ったが、九子はそうは思わない。


金貨を見た途端、つい出来心でふらふらっとくすねてしまったんだろうと思う。
何しろいい加減なヤツなんである。


だけど憎めない。


賢いのかバカなのか、素直なんだかひねくれてるんだか、鋭いのか鈍いのか、さっぱりわからない。


でも確かな事は、めっぽう強い!


そして彼の魅力は、たとえ無人島にひとり取り残されようとも、何とかなるさという気楽さと、誰も恨む事をしない天性の人の良さだ。



人が良いといえば、木枯し紋次郎も別の意味の人の良さを持っていると思う。


赤貧の農家に生まれ、人減らしで殺されようとするところを、姉のおみつに助けられる。
10歳の時に故郷を出てから、いや、それ以前にも、さまざまな修羅場を潜り抜けて来たに違いない。


人間不信になって当然の環境だ。


もちろん彼も行き着くところ、自分しか頼りに出来ないのは知り抜いている。


他人は信用しないが、自分を信用してくれた人間に対しては最後まで義理を尽くす。
それが紋次郎の持つ人の良さ、人間の清らかさだと思う。


自分の欲望をすべて消し去ろうとする木枯し紋次郎と、欲望の塊のジャック・スパロウ。


対極にいる二人に見えて、人の心を掴むのは案外こんなところなのではないだろうか。


ところで木枯し紋次郎とジャック・スパロウ、万が一、刃をまみえるようなことがあれば一体どちらが勝つだろう。


紋次郎ひいきの九子としては木枯し紋次郎に是非とも勝ってほしいところだが、なんだか海賊の方に分がありそうな気がする。


それは生への執着心の違いである。


生にしがみつこうとする者が、なんてったって一番強いのではないだろうか。( ^-^)

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コメント 4

おみつ

[生への執着心]
九子さん、コメントと「木枯し紋次郎とジャック・スパロウ 」の
大作記事、有難うございました。

残念ながら「パイレーツオブカリビアン」はWOWOWで繰り返し放送があってるのにもかかわらず、未見なのです。

でも「生への執着心」と言う言葉、最近私の中ではキーワードになってます。

花風鈴さんも「熱狂的な女性ファンがいた紋次郎の魅力」の記事を今朝UPされてました。私の最近の記事もいみじくも「紋次郎の魅力」です。

この紋次郎には一見関係の無いような言葉「生への執着心」が、紋次郎の魅力の底辺にあるのではないかと、最近考えるようになってきました。

紋次郎は普段は「何処かでのたれ死ぬか、殺されるかだ」と自分の末路を、淡々と諦めの境地、九子さんのおっしゃる「諦観」に支配されているように見えます。

が彼には彼なりの、生へのこだわりがあって「人違いで殺されるのは、あっしはご免被りむりやすぜ」「(自分の命を)黙って差し上げるわけには行かないんで」と言う言葉で表現しています。

姉のお光に救ってもらった命だからこそ、 惜しい命ではないが、理不尽な死に方だけは出来ないのだろうと思います。

こういう危険な命のやり取りの場面で、死線をさまよいながら生への情念のくすぶっていた火種が、ある時点でふっと燃え盛るような激しさを見せた時に、紋次郎の魅力やセクシーさが輝きを放って見えるのではと感じるようになりました。

これは今度記事にしようと思って、頭の中で考えをまとめていた物です。

また紋次郎の話ばかりになって、恐縮です。

ブログを公開してから、最近こんな調子で、次はどんな事を書こうかといつも題材を探しているような状態でして・・・。

九子さんのように長くブログを続けていけたらいいなと考えてます。
by おみつ (2007-06-16 20:04) 

ジョン

[お久しぶりです。]
自分の記事にコメント&トラックバック
ありがとうございます。九子さんの
記事はいつも具体的で独特で面白く
読ませて頂いています。自分は逆に木枯し紋次郎
を知らない。だけど、自分も観ればはまるのかな。
何故はまるのか?本当のところよく分からないですよね。
生への執着心は興味深いですね。
ジャックスパロウはどうなのでしょう?
欲望の赴くままに生きているけど、いつ死んじゃっても
、キャラクター的にOKな感じもします。
死は生と隣りあわせなのが体感的に分かっている人に
人は魅かれるのかな。う~ん、難しい。
by ジョン (2007-06-16 21:37) 

九子

[おみつさん、こんばんわ。]
>が彼には彼なりの、生へのこだわりがあって「人違いで殺されるのは、あっしはご免被りむりやすぜ」「(自分の命を)黙って差し上げるわけには行かないんで」と言う言葉で表現しています。

さすが、おみつさん!
紋次郎もこんな事を言っていたのですか。

たしかに姉のおみつさんに救ってもらった大事な命ですよね、粗末にしたらばちが当たると考えるのも自然ですね。

花風鈴さんの記事も是非読ませていただきますね。

そして何より、おみつさんの紋次郎の生への執着心の話、早く読みたいです。

おみつさんこそ、限られた題材であれだけの展開!
素晴らしいです!( ^-^)
by 九子 (2007-06-16 22:30) 

九子

[ジョンさん!( ^-^)]
>欲望の赴くままに生きているけど、いつ死んじゃっても
、キャラクター的にOKな感じもします。

さすが若者!確かにキャラクター的にOKってのも面白いですね。( ^-^)

何故はまるのか?確かに難しいですが、強さは必ずなくちゃいけないけど、きらりと光る善良さが根底に無いとダメなのかな?

木枯し紋次郎、ケーブルテレビでたまにやってるみたいです。機会があったら是非見てくださいね。

ジョンさんもきっとはまりますよ。( ^-^)
by 九子 (2007-06-16 22:41) 

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