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山田太郎ものがたりの学校 [<学校の話、子供たちの話>]

この頃ではほとんど電話をかけてくる事のない三男Yから珍しく電話があった。金曜日の夜10時過ぎ。
「おい、今なんのテレビ見てる?」という、たまの電話には似つかわしくない内容だった。


「どっかで『山田太郎ものがたり』っての、やってるはずだからチャンネルまわしてみて!」


「あっ、やってたよ。それが何よ?」


「ここで使ってる校舎、おれらの学校なんだよ~。明日土曜じゃん。学校休みの土曜日にロケしてるらしいから、おれも行ってみようかと思ってさ。」


(ちなみにその時彼はまだ、足にギブスがついたまま。物見高いのは誰似?(^^;;)


三男Yが行ってる大学は、知る人ぞ知る西武文理大学


バーベキュー入試で有名になり、たまたま書いたユニーク入学式の様子が2ちゃんねる で取りあげられ、3年も経った今でも九子日記のアクセス元の常連さんである。

何かと話題に事欠かない2ちゃんねる。だが、おおむね温かい調子で「息子がこの大学に入学したと言う女性が(入学式について)書いている」と紹介してくれたこの一言で、九子は2ちゃんねるが好きになった。


九子だますにゃ刃物はいらぬ。「女性」と一言書けばよい。(おばちゃんは禁句!)(^^;;



早速画面に見入ると、茶色の煉瓦の外観とグリーンや赤でアクセントをつけた内部は、なるほど放送局の目にとまりそうな美しさだ。


蔦のからまるチャペル風の建物は、例のスピナッチホールらしい。( ^-^)


2ちゃんねるでも触れられていたが、この大学はどちらかというと進学校として名高い西武文理中高校の付属校的な存在で(^^;;、何かとお騒がせな学長氏は裸一貫から昇りつめた多角的な経営者で、学費もたぶん他の大学よりも2割ほど安いのが有り難い。


驚いた事に、このところ入学偏差値も彼が入学した頃よりもじわじわ上がり、数年のうちには50も望めそうなところまで来ている。


そのうちに彼が胸を張って出身校を口にする事が出来る日が来るかもしれない。( ^-^)



彼が入学して以来、西武文理大学にはいい意味でいろいろ驚かされている。


確か一年生の時は、石和温泉のホテルでホテル研修なるものが開かれた。
一泊4000円くらいで泊めてもらいながら、接客方法の極意を学ぶ。
もちろん布団の敷き方なんかも習って、自分の布団は自分で・・と言う訳だ。


でも食事なんかは普通のお客様と一緒のものを出してもらえるらしい。


Yはフロント業務を学ぶコースを取って、実際フロントにも立たせてもらったそうだ。
(コースによりフロント業務、レストラン業務、みたいに分かれているらしい。)


ある年は、地元の百貨店で販売実習があった。


包装紙のキャンディー包みをするというので、「えっ?大丈夫?」と言った覚えがある。
キャンディー包みと言うのは一番単純な包み方だが、何せ学習障害は不器用なのである。
(底を一ヶ所とめて、両横を二ヵ所三角にして止めるあれである。)


こういう実習の他にも、大学は就職に役立つさまざまな企画を立ててくれている。


たとえばスーツ着用日。


講演会やレストランでのマナー講習会なんかの日は、スーツ着用が義務付けられている。


普段はTシャツに短パンという、もろ大学一、二年生のいでたちの彼が、スーツに替えズボンなどを買いに行くと怪訝な顔をされるのだが、そんな訳でスーツの2、3着は必要になるのだ。


マナー講習会というのも親は大変期待していて、いつもうどんやラーメンを標準的な日本人以上に大きな音を立ててすするYが、スパゲティーを食べる時まで頑として日本式を貫いていたのをどうにかならないものかと思っていて、その後の展開に大いに期待したのだが、顔面麻痺の後遺症でほっぺたの筋肉の麻痺が残っているせいか、彼のスパゲッティーの食べ方は残念ながら昔とあまり変わらない。(^^;;


資格取得を奨励するのもそうだ。


彼が受けた販売士「二級」とかいう資格は就職の時にどれだけ役立つかはわからないのだが、とにかく「二」の付く資格は取っておいて損はないそうで受験したそうだ。


大学はこれを受ける学生のために3週間ほどの補講を実施し、補講に8割以上出席すると資格試験の受講料が1万円安くなり、資格試験に合格すると3万円が返ってくる。


つまり合格すれば48000円の受験料が8千円で済んでしまう勘定だ。


これはビンボーな我が家にとっては大変有り難いことだった。( ^-^)


ボランティア活動を奨励し、また単位として認定するというのもあって、先日彼は狭山市青年会議所が主催する小中学生の「むさし100km徒歩の旅」の付き添いボランティアとして4泊5日を過ごした。


何でもこの企画は10年ほど前から各地で進められているらしいのだが、狭山市は今年が第一回目で、地図好きの彼が春頃から携わっていたので、コースなんかを決めるのに彼も口を挟んだのかと思ったら、それはもうすでに出来ていたということだった。


とにかく真夏の炎天下を一日20キロ、5日間かけて歩き、宿泊は学校の体育館というのだから、主催者側が意図した「生きる力をつける」という目標は十分に達成できたはずだ。


狭山市青年会議所から親宛てに詳細な計画書が届けられたのだが、ボランティアは夜12時に寝て朝4時に起きる強行スケジュールになっていて、ボランティアにとっては「生きる力」どころかサバイバルゲームみたいなもんだったろうが(^^;;、Yは帽子やら記念バッチやら後生大事に持ってきて、誇らし気に見せてくれた。


Yはこれが大学の単位として認定される事を知らずに申し込んでしまい、今回はだめだが後期の単位として認められるらしい。


そう言えば、あれはちょうど母が亡くなる間際。


大学の講演会で講師として来ていた人材派遣会社の若手社長が歴史好きで、やはり歴史大好き人間のYがいろいろ歴史まじりの質問をしたら社長の目に止まり、会社に遊びに来るようにというお誘いを受けた事があった。


彼は185センチの長身でひときわ目立つ。その上いつも最前列の席に陣取っているらしいので、教壇から声がかかる事も多いらしい。


母はその話を殊のほか喜んで、「まあ、あのYがねえ。」と目に涙をためた。


もっともこの話はそれっきりだったらしいが・・。(^^;;


亡くなった父母はYの行く末を一番心配していた。
一人前になるかしら、自分の事ぐらいは自分で出来るようになるかしら・・。


M氏と九子とて事情は同じで、M氏などは気持ちの優しいN子に密かにお金を渡して、寅さんの妹のさくらさんよろしく兄ちゃんの面倒を見てくれるように頼むつもりでいた。


それが今では、大学も入ったし、真面目が幸いしてか成績もなんと!上一割くらいだし、今年の春にはマニュアル車の免許も取った。


「マニュアルなんて危ないよ。不器用なんだから一手間少ないオートマでいいよ。」と言ったのだが、就職すると営業車はマニュアル車が多いから・・と言う理由で彼はマニュアルにこだわった。


いつも効率を考えながら先を身据えて行動している事が、彼の一番の成長だ。


もっとも一番安い合宿運転免許学校で取ったら、車庫入れ実習がいいかげんなうちに卒業させられてしまい、今になってバックで車庫入れするのに四苦八苦しているらしいが・・。(^^;;



こうなってみると、要所要所でもっと彼の事をきちんと書いておけばよかった。


ただでさえ曖昧になる記憶力の中で彼に聞いたいろいろな事が少しずつ欠落して行った挙げ句、三年間の目次みたいな今日の日記になってしまった。


もちろん彼に聞き直す事はたやすい。
しかし彼はこの頃、とみに用心深くなった。


「ねえ、そんなこと根堀り葉堀り聞いてどうすんの?もしかして、どっかへ書いて出すんじゃないでしょうねえ。」


軽い学習障害のある純真な少年Yは、長じて普通に近い青年Yとなり、人を(と言っても、この純真無垢の(^^;;母親九子までをも)疑ってかかるようになった。



一人前に成るって事は、いい事ばかりではない。( ^-^)

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コメント 2

よぽぽ

[山田太郎物語みてますよ…。]
あの、現実にはありえない設定に母子で大笑いし、ときには涙しながら見てます。
Y君も頑張ってますね。
家の息子の学校も工業高校なので資格取得や企業のインターシップなどに力を入れてくれているので、ありがたいことです。
県内でもレベルの低い学校ですが、学校側は今良い学校にしようと懸命に生徒指導をしてくれているので、息子も楽しく学校に行っています。
 家の息子も今にY君みたいになってくれたらいいなぁと
九子さんの日記を読みながら期待しています。
by よぽぽ (2007-08-20 21:32) 

九子

[よぽぽさん!( ^-^)]
ター坊君のご活躍、私も楽しみに読ませて頂いています。
高校生からアルバイトだなんて、凄いよねえ。( ^-^)

Yも、結局は自分のやりたい事が出来る大学へ行けたので伸びたのかもしれません。

学習障害が上位の成績取れる大学って他の人一体何してるの?ってつっこみたくなりますが。(^^;;

ター坊君なら絶対大丈夫!

運転免許も、Yが取れたんだからマニュアルでも取れますよ。
( ^-^)

菊池桃子がやってる山田太郎ものがたりのお母さん。
ドジでぼけてるところが私に似てるかも・・。

顔も・・・とは言いませんが。(^^;;
by 九子 (2007-08-21 11:50) 

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