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黒川紀章と若尾文子 [<九子の万華鏡>]

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建築家の黒川紀章氏が亡くなったと言うニュースが先週日本中を駆け巡った。


たった数ヶ月前に自身で新党を立ちあげ、夫人の若尾文子氏と共に参議院選挙のキャンペーンで元気な姿を見せたばかりだったのに、それがもう「晩年」として伝えられる世のはかなさだ。


思えば黒川氏のような天才でなくても、建築家という人々は、芸術家の中でも抜きんでた創造力の持ち主ではないだろうかと九子は長年思っていた。


無から有を作りあげる。しかも、線でも平面でもなく、立体を形作るのだ。



九子の高校時代の親友が結婚した彫刻家、故 森亮太氏も、また別の意味で無から立体を形作る天才だった。


九子のような数学音痴で、しかも立体図形なんかになるとどこをどうひねったらそんな答えが出てくるのか皆目見当もつかないような人間にとって、三次元の世界を操る才能を持ちあわせている人間なんて畏敬の念を抱かせる以外の何者でもない。


こういう才能がもしかしたら天賦のものではないかと思わせる良い例が、亮太氏の忘れ形見のS太君だ。


父親のDNAを確実に譲り受けた彼は昔からパソコンを駆使していろいろなデザインをするのに秀でていたそうで、某有名国立大学の建築学科に進み、建築家を目指している。


とにかく三次元を形作る才能などというものは、彫刻家にせよ建築家にせよ、凡人の自分には到底及びもつかない特殊な才能であると信じ込んでずっと生きてきた。



黒川紀章氏が若尾文子さんと結婚したのは50歳の時だそうだ。
二人とも同じ年の再婚で、長い恋愛期間を経ての事だったと言う。


まあよほどの年の差婚でも無い限り、それから子供を望むのは無理だろうから、共に白髪の生えるまで二人だけの人生設計ということになろう。


当時若尾文子さんと言えば、押しも押されもしない大女優で、しかし結婚後、女優として表舞台に立つ事はほとんど無くなったと記憶している。


聞くところによれば、妻としての若尾文子は、献身的に夫に尽くす理想の奥さんだったらしい。


食事にうるさい夫のために時間をかけて支度をし、夫が白と言えば黒いものでもあくまで白とうなずく、そんな女房だったようだ。


大邸宅の中で半別居と伝えられたのも「僕といつも一緒じゃあ、彼女が気を遣って気の毒だから」という紀章氏の心遣いだったという。


女優という、いわば表現する芸術家である若尾文子が、自分の才能を惜し気もなくかなぐり捨てて、無から有を生み出す天才建築家である黒川紀章という三次元の創造主のために身を捧げたのだ。


どうか自分の分まで夢を見て下さい、あなたの夢を一緒に見させて下さいと・・・。


才能ある者のみが、才能ある者を見抜く。
彼らが一緒に見た夢がいかに凡人にとっては奇抜なものであったとしても、彼らはその夢にかけたのだ。


天才と言われる人の気性が一風変わっていたり、言動に凡人の理解の及ばないものが有ったりは周知のことだ。


それらをふっくらと包み込んでいたのが、若尾文子という妻の存在ではなかったろうか。



この世の中で人が消えたり不思議な事が起こるのは、四次元の世界というものがあってそこに紛れ込んで起こるのだという説をずっと昔から信じ込まされ続けてきた。


得体の知れない四次元の世界では、目に見える世界に有る直線、平面、立体の3つの軸の他に時間と言う4つ目の軸があるんだそうだ。


三次元の世界の創造主黒川紀章も、自分の持ち時間という4つ目の時間軸を操る事はうまく出来なかったのかなあと思った矢先、若尾文子の言葉が飛び込んできた。


彼女が奇しくも「遺言だ。」と言った二人の最期の会話の内容。


「わたしはあんまりいい奥さんじゃあなかったわね。」
「そんな事・・、そんな事、そんな事・・。本当に好きだったんだから・・。」


この一言を言い尽くして、もう後は何も語る事はなかったという天才建築家、世界の黒川紀章。


愛してるでも恋してるでもなく「好き」という一言がかもし出す自然な二人の結び付き。


聞けば黒川氏は参院選当時も、薬を山のように飲んでいたらしい。
自分の人生の残り時間がもうあまり長くない事を悟って、時間軸に抵抗するように夫人とともに最後の夢にかけたのか。


そして彼は愛妻と二人だけの最後の時間を天才らしく極上に演出して、燃え尽きていったのかもしれない。



黒川紀章
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コメント 4

eiko

[好きだったんだから]
このほのぼのとさせる会話
黒川紀章記章さんの愛の深さが感じられます。
素晴らしい夫婦ですね。
by eiko (2007-10-15 18:05) 

九子

[eikoさん!( ^-^)]
いろいろあったご夫婦みたいだけど、やっぱり愛し合って結婚した夫婦が最後の最後まで仲良いところを見せられるといいなあって思いますよね。
ほんと、見習いたいですよねえ。( ^-^)
by 九子 (2007-10-15 22:32) 

轟 拳一狼

[時間軸ってのは・・・]
 黒川氏は、死によって、時間軸を自由に操れる"四次元世界"に飛び出せたと考えてみるのはどうでしょう。もうわれわれの世界に存在する時間の流れに縛られることなく、過去も未来も自由に飛翔できる存在となったと・・・

 うちの嫁さんの父親も一応木彫り職人ですので、息子にもその血は流れているかなあと、勝手に期待しています。私は両親とも小役人でしたから、あきらめていますけどね。
by 轟 拳一狼 (2007-10-22 00:17) 

九子

[拳一狼さん!( ^-^)]
>黒川氏は、死によって、時間軸を自由に操れる"四次元世界"に飛び出せたと考えてみるのはどうでしょう。もうわれわれの世界に存在する時間の流れに縛られることなく、過去も未来も自由に飛翔できる存在となったと・・・

あっ、その考え方、素敵ですね。
私も仏教徒のはしくれですから、魂は永遠に生きていると信じています。黒川氏の魂も不自由な肉体を解き放たれて自由に飛び回っているのかもしれませんね。

奥様のお父様、木彫り職人さんなんですね。粋なお仕事ですね。
( ^-^)

絶対に息子さんの中には芸術家の才能が備わっていますとも!

ほら、片岡鶴太郎さんって、おじいちゃんが羽子板職人だったんですって。それで、あの年で始めて絵を描いてみたら、あの通りのプロ顔負けの絵が書けちゃったらしいですよ。

血は争えないって本当ですね。
by 九子 (2007-10-22 23:09) 

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