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14才の母 [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

「14才の母」の再放送を見終わったところでこれを書いた。
なんだかほんわかとするものを抱えて見終えたところなのだが、去年の最初の放送の時「新・こ~んなことを考えてたり考えてなかったり」の仮名さんが、各週にわたり非常に現実的な辛口批評を書いていらっしゃったのを見つけて苦笑した。


九子って、いくつになっても、主人公の未希とおんなじで甘ちゃんなのかな?



ストーリーはお話しするべくも無いと思う。わからない方は公式ホームページまたは仮名さんのブログのindexから「14才の母」を抜き出して読んで頂ければわかる。(2006年12月分)


要するに14才の女の子未希が、初めての性体験で妊娠した。相手は同じ塾に通う15才の男の子キリちゃん。
もちろん家族はすぐに堕胎させようとするのだが、未希がどうしても生みたいと言う。


未希は、小学生の弟のいる明るい家庭に育った女の子だ。


塾をさぼった二人がたまたま河原で出会った時、キリちゃんは橋の上で落ちそうになりながら鳴いている子猫を心配そうに眺めていた。見ているだけで手を出さないところが、キリちゃんの性格を表している。


だけど大概の人間は、キリちゃんと同じではないのかな。
どうにかしてやらなくちゃとは思うけど、とっさに行動に移せない。


未希はそれを見て放って置けず、すぐさま駆けよって猫を助ける。


猫は助かったが、未希は川に落ちてずぶ濡れになり、慌てて未希を助けようと川に飛び込んだキリちゃんも水浸しになった。だが川は膝あたりの深さしかなく、二人は大声で笑い合う。



放って置けない、つまり何事にも関りたがるのが未希の性分のようだ。
両親の愛情たっぷりに恵まれて育ち、のびのびとおおらかな申し分の無い性格の子供だ。


それに対して、キリちゃんは母一人子一人。
母は女社長としてマスコミにも顔を知られ、豪邸に住む母子だが、未婚の母として一人キリちゃんを育てて、世間の風の冷たさは身を持って知り抜いている。


キリちゃんんはおとなしく、一人っ子にありがちな考え込み易いなタイプだ。


歩道橋の真ん中にキリちゃんが深刻そうな顔をしてたたずみ、その下を通り過ぎて行くバスの窓から手を振って未希が「しょうね~ん(少年)! 元気か~い?」とキリちゃんに大声で語りかけるシーンが二度登場する。


自分がどんなに苦境にあり落ち込んでいようとも、持ち前の明るさで人を元気付けたい未希の優しい性格を良く表していて胸が熱くなる。



その未希が自分のお腹に新しい命が宿っていると知った時、その命を大切に護ろうと思うのは、もしかしたら極めて当たり前の感情なのかもしれない。



14才が妊娠したら、大人たちは誰もがみな「生んではいけない命」として処理しようとする。
未希のまわりの大人たちもそうだった。


大人たちに限らず、未希が通う私立のお嬢さん学校の生徒達も、妊娠や出産が母校の不名誉になるからと、未希を冷ややかな目で見た。


これは極めて当たり前な世間の反応と言って良い。


と他人事のように言ったが、他人事どころか、自分の事を考えてみる時九子は恥ずかしさで顔が赤くなる。あの時九子は、どこの誰よりも打算的だったからだ。



結婚の翌年、もちろんもう堂々といつでも子供が作れる身でありながら、生理が数週間遅れた時にオタオタした。


「えっ!まだ子供なんて早い!田舎へ帰ってからママに手伝ってもらってからじゃなくちゃ、子供なんて産めないよ。」


本当に未熟人間だった九子は、東京のど真ん中で子供を産む覚悟も育てる自信も無かった。


すぐさま産婦人科へ走った。
もちろん、もし妊娠していたら中絶してもらうつもりだった。


中絶という行為に対して、罪悪感などこれっぽっちも無かった。


レタスの中に虫を見つけた時の嫌悪感。
顔をしかめて葉っぱごと取り除いた。
言ってみればその時と同じ感覚だった。


自分が困るんだから、困る事はいやだ!
あるんだかないんだか知らない命より、自分の都合を優先させた。


幸い妊娠ではなかった。
心の底からほっとして、神様だか仏様だか、見えない誰かに手を合わせた。


あの時、九子24才。
14才の未希よりも十年も長く生きていながら、命の重さについてなど、かけらも感じていなかった。



御縁があって、坐禅を始めた。
最初は入門をしぶっていたが、翌年活禅寺に入門し仏教徒になった。


お寺の入り口には水子地蔵というのがあって、生まれて来られなかった赤ちゃんの魂を奉っていると言われた。


いつもキャンディーやらお菓子やらが供えられ、穏やかな目をした六地蔵が微笑んでいる。


お参りするたびに、あの時つくづく妊娠していなくて良かったと思った。
水子の業縁は深いそうだから・・・。


自分の考えた事の罪深さなどちゃっかりと忘れて、毎回何事も無いような顔でお参りしている。



子供は5人も産んだが、幸いみんな無事に育った。
三男Yが死ぬか生きるかの病気をした時の他は、子供の命について深刻に考えた事などなかった。



そして今、そこそこ幸せな環境の中、再放送で「14才の母」を初めて見た。



未希が、14才の女の子が、一人、「生んではいけない命」の意味を考えている。
そして「生んではいけない命」がなぜ、「生まれてはいけない命」であるのかという大きな疑問を大人たちに付きつける。


未希を応援したかったのは、あの時の自分のせめてもの罪滅ぼしのため?


過去に積み重ねた業縁というものによって現在のささやかな幸せが維持されているものであるとすれば、なんときわどい危うさの中にそれは成り立っているものだろうか。


妊娠
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轟 拳一狼

[『14歳の母』ってのは・・・]
妻がはまって観てましたね。「14歳の母」にはまる、34歳の母・・・

私もちょっとだけ見たのですが、正直私には耐えられませんでしたね。どこが面白いのかわかりませんでした。どうも私の感性が拒否反応を起こしてしまったようです。だからホームページにもこのドラマの悪口を書いたことがあります。

日本は世界一の中絶大国だと聞いたことがあります。『木枯し紋次郎』には間引きがひとつのキーワードとして出てきます。間引き地蔵なるものも、よく出てきます。日本が中絶大国であることを考えたとき、間引きは決して貧しい時代だけのものではなく、極めて現代的なテーマであるということがわかります。だから『木枯し紋次郎』は永遠の名作だと思います。
日本という国は、自殺者の数も多いですし、どうも命の価値が他の国に比べて軽いようです。やはり土地が貧しいせいでしょうか。

「土地が貧しいと、悲しい話が多いようで・・・」
by 木枯し紋次郎

せめてTVドラマくらいは、『14歳の母』のようなお気楽なのがいいのでしょうか。
by 轟 拳一狼 (2007-11-10 00:20) 

eiko

[14歳の出産!!]
こんなドラマがあったとは知りませんでしたね。
命を優先して出産したとしても、子育て能力は??
と疑問に思います。 

私が世話をした子供2人は、母親が10台の時に産んだのです
命を優先して中絶することなく産んだのに、その後
子育て放棄して行方不明。 

私としては、出産よりも長い年月の子育てを14歳の子供が
できるの?? それが不安ですね。 命も大事だけど産むこと
以上に大事なのは、育てる事だと思ってます。

親に保護されている子が、親になる!!
生まれてくる子の気持ちは、どうなんでしょうね~。
by eiko (2007-11-10 09:35) 

九子

[拳一狼さん!( ^-^)]
そう言われれば木枯し紋次郎の時代、貧しい農家ではどこでも行われていたことでしたね。命を間引くこと。
奥様も見てらっしゃったんですね。
私はあまのじゃくなもので、話題になった時は見なくて、再放送をたまたま見たら、ついつい最後まで見てしまいました。

確かに貧しさゆえに生活のために子供の命を間引かなければならなかった時代と比べればお気楽と言われるのもその通りです。

ドラマ仕立てででも命について考える事をしなければますますこの豊かな国で命は軽んじられて行きそうで怖い気がします。

女性は母になると何かが変わるような気がします。もちろん母にならなくても優しく心豊かな女性もたくさんいますが・・。
by 九子 (2007-11-11 20:03) 

九子

[eikoさん!( ^-^)]
なるほど!現実に引き戻させられるお話でした。

確かに命を粗末にせずに生む選択をしたとしても、大変なのはそれから先なのですね。

eikoさんはドラマをご覧になってないのでわからないと思いますが、未希の家庭は本当に温かい家庭なのです。あの家族を見ているとなんとかなるのじゃないかという希望を持ってしまうのですが・・。

やっぱり甘いですね。(^^;;
by 九子 (2007-11-11 21:42) 

eiko

[温かい家族]
TVを観ていなからわからないけど
そんな家族の中で育った未希さんが、なぜに妊娠?
とこれまた疑問に思うのは私だけかな??

14歳といえば塾やクラブ活動など、他にする事が一杯
なのに、どういうきっかけでそうなるのか解りません。
このドラマは、一体、何が言いたかったのでしょうかね

このドラマって鳥の「ひばり」に似てますね

ひばりは、子育てをせずに、卵を他の鳥の巣に入れます
育てるのを放棄しても、世話を必ずしてくれる鳥の巣に
卵を入れるのですよ~面白い話です。

人間もこうなっては、いけませんね。やはり親が一番よ。
親とは、出産をするだけでなくきちんと育てる能力も必要ね 
by eiko (2007-11-12 09:07) 

九子

[eikoさん!]
またまたお返事遅れてすみません。m(_ _)m

>そんな家族の中で育った未希さんが、なぜに妊娠?

そうそう。そこんとこがちょっと弱いんだよね。
これだけしっかりした家族に育った娘ならしていいこととして悪いことわかりそうなものなのに・・。

ただね、結果として命が育ってしまったという結果をこの娘とこの家族は悩みながらも最終的に受け入れるわけね、いろんな障害を乗り越えて。

そういう選択もありなのかなって考えさせる一石にはなったと思うんだ。

まあ現実にはすごく厳しいと思うけど・・。

ひばりって面白いんですね。
eikoさんは物知りですね。( ^-^)
by 九子 (2007-11-13 12:43) 

轟 拳一狼

[私の趣味ってのは・・・]
九子さん、こんばんは。

「確かに貧しさゆえに生活のために子供の命を間引かなければならなかった時代と比べればお気楽と言われるのもその通りです。」

どうも私が筆足らずだったようです。私は貧しさゆえに子供を間引かなければならなかった時代と比べてお気楽といったつもりはなかったのですが。むしろ貧しさゆえに子供を間引いたと言われる時代と今の時代で、別段違いをつける必要はないと思っています。
ブログにも書きましたが、時代という不確かなものに責任を押し付けるのは、私の趣味には合いません。昔の間引きにしろ今の中絶にしろ、子供を殺すことには何の違いもありません。経済的な「貧しさ」ではなく、もっと根源的な人間の業に、その答えを求めたいと思います。その業を生み出す元となるのは、「時代の貧しさ」ではなく、「土地の貧しさ」だと考えています。

私にはちょっと変態趣味がありまして、かなりくせのあるドラマを好む性癖があります。だから私のようなものの目から見ると、『14歳の母』はどうにも我慢できなかったのです。

一応私の『14歳の母』に関する感想をリンクしておきます。

http://www.k2.dion.ne.jp/~ken1ro/texts/movie_diary2006.html

少し下にスクロールしていただければ、「『14歳の母』を見る34歳の母」、「現実と作り物の狭間で・・・」という題で書いております。
by 轟 拳一狼 (2007-11-18 21:29) 

九子

[拳一狼さん、何度も有り難うございます。( ^-^)]
>昔の間引きにしろ今の中絶にしろ、子供を殺すことには何の違いもありません。経済的な「貧しさ」ではなく、もっと根源的な人間の業に、その答えを求めたいと思います。その業を生み出す元となるのは、「時代の貧しさ」ではなく、「土地の貧しさ」だと考えています。

拳一狼さんが一番おっしゃりたいことはこの辺りでしょうか。
確かに根源的な人間の業がこういうことをさせるのでしょうね。
そこまではわかるのですが、土地の貧しさという考え方がまだよくわかりません。

今はこんなに豊かな時代ですが、まだ日本の土地は貧しいのでしょうか?
by 九子 (2007-11-19 22:16) 

轟 拳一狼

[土地が貧しいと・・・]
九子さん、おはようございます。

時代がどんなに変わっても、土地がそれほど大きく変わるわけではありません。確かに近年地球温暖化の影響で、著しい気候変動の影響はあるかと思いますが、時代の豊かさとは関係ないと私は思っています。「時代の豊かさが地球温暖化を生んだ」という側面はあるかもしれませんが・・・

また脱線しかけましたが、「土地の貧しさ」について、少しブログで触れました。
http://blogs.yahoo.co.jp/zolotvolkov/27365726.html
この記事の本題は「土地の貧しさ」ではありませんが。

土地の貧しさとこの国の形について、なかなか簡単には説明できません。自分の国語力のなさに愕然とするばかりですが、最近新たな原稿を書き始めました。その中でこの問題も扱おうと、現在の段階では考えています。完成はかなり先になると思いますが。
日本は土地が貧しいと思います。その土地の貧しさが、日本の残酷さ、悲しさ、美しさ、謙虚さ、全てにつながっていると思います。それは時代がどんなに変わろうと、逃れられない宿命だと思っています。

実は10年ほど前までは、私も九子さんと同じような考えを持っていました。しかし今の妻と知り合ってから、考えが変わりました。妻の故郷は、それこそ土地の貧しい、山間の寒村です。
「土地が貧しいと、悲しい話が多いようで・・・」
『木枯し紋次郎』中の私が好きなセリフのひとつです。それは事実なのだなあと、妻の故郷を訪れて、いろいろな話を聞いて、実感しました。そしてそれはただ田舎だけの話ではなく、結局日本全体の問題なのではないかと、最近思いはじめました。
そんなことを、現在執筆中の原稿で書いてみたいと思っています。
by 轟 拳一狼 (2007-12-06 08:17) 

九子

[拳一狼さん!( ^-^)]
力作読ませて頂きました。

「土地が貧しい」の意味、おっしゃる通りだと思いました。
平和で豊かな日本に生活していて、私たちはなかなかふだん気付かない部分ですが、特に奥様を通じて 拳一狼さんは感じられるところがおありだったわけですね。

そういう土地で育って幸せな現在をつかまれた奥様は、きっと素晴らしい女性なのでしょう。

これからそちらの方に書き込みに参りますね。
by 九子 (2007-12-07 23:24) 

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