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言葉の力 [<父を亡くす、母を亡くす>]


涙と言うものは、突然、なんの脈絡も無くあふれ出てくるものだなあと思った。

日曜日朝にやってる「いつみても波瀾万丈」という番組のファイナルでのことだ。



もう16年間も続いたという看板番組だが、10月からは新しい番組にとって代わられるという。

有名人のサクセスストーリーあり、苦労話あり、思わずもらい泣きするようないい話ありのなかなか良い企画だった。



「いつみても」というのは癌で亡くなった逸見政孝アナウンサーにちなんだタイトルで、彼亡き後もタイトル名を変えずにずっとやってきたと言う。



九子も欠かさず見るほどではなかったが、けっこう好きで気が付くとチャンネルを回していた。



ファイナルと言うだけあって、初っ端にまだ若かりし逸見アナがまだ髪の毛を黄色に染めていなかった頃の美輪明宏さんにインタビューして、美輪明宏が市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺する直前の三島由紀夫について語っている場面が出てきたのには驚いた。

まあこれがあったから、ずっと最後まで見ちゃったんだけどね。( ^-^)



御巣鷹山の日航機事故で亡くなった坂本九ちゃんの奥さん柏木由紀子さんの話とか、綾戸智絵さんのお母さまの青りんごと赤りんごにたとえた見事な性教育の話とか、どれもみんな面白かった。



ちなみにどんな話かと言えば、綾戸さんが思春期になった頃、「いいか、あんたはまだ熟し足りない青りんごで、あたしは熟れ頃食べ頃の赤りんごや。青いりんごは一口食べられてまだ酸っぱいからほかされる。そやさかいあんたも、あたしみたいに赤くなって食べて美味しくなるまで待たなきゃいかん。ほかされんようにしいや。」とお母様に言われたという話。

う~ん、鋭いなあ。(^^;;





さて次は誰かなと思っていたら、出てきたのが水前寺清子さんだった。

それにしても水前寺清子さんって十年くらい前から急に綺麗になったよね。メイクさんや衣装さんが代わったのかしらね。(^^;;

彼女のお母さんがひどい認知症になって、それでも他の人の顔はみんなわかるのに血を分けた娘であるはずの彼女の顔だけがわからない。

あんまり情けなくて悲しくて、彼女はお母さんの見舞いに行くのも一時期嫌になってしまった。



その時ある人が彼女にこう言ってくれたのだと言う。

「人間ってね、一番親しい人から先に忘れていくものなのよ。」



その言葉に救われて、彼女はまた見舞いに行く事が出来るようになったという。



その時である。九子の目からはらはらと涙がこぼれ落ちたのは・・・。



なんの脈絡も無い・・・と書いたが、よく考えてみたら「」つながりだった。

母を亡くして自分を責めていた時に、救ってくれたのが母の友人の一言だった。





母は衰弱死だった。栄養が取れずに死んでしまった。

母が食べたがった時期に、まだ充分食べられた時期に、母の大好物を食べさせてやらなかった自分が許せなかった。

大好物ならきっと食べられたと思う。少しばかり値段が高いからと言って、違うメーカーの似て非なるものばかりを並べた。



母は口をつけなかった。

「わがままなんだから・・。」としか思わなかった。



父が死んで父の年金が入らなくなってしまった。これからは節約しなければ・・。

父の遺言により姉に続いて妹も薬学部を目指すことになった二人の娘たちの学費をなんとかしなければ・・。

頭にあったのはそればかりだった。



母の命の瀬戸際だったという意識が無かった。母がいつ死ぬかもしれないと思ったら、いくら親不孝でもお金に惜しみなく何でも食べさせたはずだ。

ずっとそばに居ると感覚が麻痺して、母がそんなにひどい健康状態に陥っているという事がわからなくなる。

いや、もしも本当に優しい親孝行な娘であったなら、どんな状態であってもお金なんかに糸目をつけずに喜んで母の好物を与えただろう。





それが出来なかった自分が悔しくていたたまれない気持ちで居た時に、母の女学校と薬専の同級生のその人がお参りに来て下さった。



初対面のその人を見ても、母がここに居ない事を詫びたいような気持ちだった。

母が欲しがるものをちゃんと食べさせていたら、今頃生身の母と話をして頂けたものを・・・。



その人はふと打ち明け話をした私の顔を見て、微笑みながらこう言った。

「そうね。乙女ちゃん(母の旧名)は好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと、とってもはっきりした人だったものね。でも、そんな顔しないでね。大丈夫よ、大丈夫! だって母娘(おやこ)じゃないの・・。」



「母娘(おやこ)じゃないの・・。」その一言を聞いた時、すーっと胸に痞えていた物が落ちた。母がすべてを承知して許してくれていると思えた。



「そうそう。九子はもともとケチなんだからしょうがないよね。あんたがやることなんてそんなもんだよ。悪気が無いのはよくわかってるよ。」



母娘(おやこ)という言葉の持つありとあらゆる温かさに包まれたような気がした。



仏教でも「和顔愛語」と言い、優しく穏やかな言葉は人の心を変え、回天の力(=天下の情勢を一変させる力)があるとまで言われる。



言葉の力は、やはり経験豊かな人生の先輩に言われた時に最大になるように思う。



その人の長い人生経験の中で、心の中に蓄積されたたくさんの言葉の中から、その人の温かい気持ちと縁によって口からこぼれ出た偶然の文字のつらなり。



その人が意図した意図しないに関わらず、言葉は独り歩きをして相手に届く。



言葉に回天の力があるものなれば、出来る事なら悪意のある言葉よりは善意の言葉を届け続けたいと思う。

優しい温かい言葉を選んで使いたいと思う。



そして、人生経験が言葉の重みにいぶし銀のような価値を与えるのだとすれば、老いる事は決して疎まれることではなく、実りある豊かな事のような気がしてくる。





40代、九子は自分がまだ若いと認識していた。

しかし50代に入ると、鏡を覗くたびに突きつけられる現実に苦い敗北感を味わっている。(^^;;



ああ、それにしても齋藤史さんは凄かった。

長野市在住の歌人で、93歳で亡くなるまで現役の女流歌人であり続けた。



史さんが亡くなった時、地元の新聞に記事が出た。その中で史さんの言葉がひときわ輝いていた。


年月は、わたくしの外面も内面もに数々の傷や皺(しわ)や襞(ひだ)を刻み、歩みの幅をも狭めながら、微塵(みじん)の一つよりも小さく置き去って----やがて過ぎるであろう。すべて当然のことである。


ああ、なんて凄い人だろうと思ったのが、史さんの歌集を読み、ホームページにアップしようと考えた理由だ。

ホームページにアップする事は残念ながら叶わなかったが、歌というものは単なる言葉よりも更に強いメッセージを込める事が出来るものだということを教えられた。



(★齋藤史さんとその力強く若々しい短歌についてお知りになりたい方には、御連絡頂ければHPにアップするだけ になっていた資料を添付ファイルの形で差し上げます。)



母も50年来俳句をやっていたが、母の俳句にも強い力がある。



歌にせよ俳句にせよ、流れてしまわないで書き留められて残るという利点もある。

ただ話し言葉ほど普遍性がないという欠点もある。



齋藤史さんのように老いるという事のすべてを当然のことと超越する強さがまだ九子にはないし、母のように自分が書き貯めた俳句をノート一冊残してすべて捨て去ってしまう潔さも無い。





そして強くも潔くも無い九子が今、一番欲しいもの。

それは・・・。



嘘でもいいから「九子さん、若いね。まだ充分綺麗だね。」って言う言葉。(^^;;(^^;;



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gakudan

[ことば]
言葉は一言一言が、其の人の積み重ねてきた人生を表すと云う事なんですね。大変感銘を受けました。

普段は自分の気持ちを精一杯表現しようと思って、ついつい饒舌?になってしまいがちの私ですが、いざしゃべり出すと、しゃべればしゃべるだけ、云いたいこと、伝えたい事の意味が反比例して失われてゆくことを、常日頃感じております。
人間、自分の大きさ以上の事は何も表現出来ない筈なのに、なんて愚かしい事なのでしょう。音楽の演奏も一緒です。

必要ないと思えば手を休める。此れもアドリブのひとつだと思います。

等と思いつつ、またいつものようにしゃべり過ぎて、同じ失敗を繰り返してしまうのでしょうけれど!修業が足らん様ですな!
失礼しました。
by gakudan (2008-10-05 08:54) 

九子

[gakudanさん!( ^-^)]
早速にコメント有難うございました。m(_ _)m

>普段は自分の気持ちを精一杯表現しようと思って、ついつい饒舌?になってしまいがちの私ですが、いざしゃべり出すと、しゃべればしゃべるだけ、云いたいこと、伝えたい事の意味が反比例して失われてゆくことを、常日頃感じております。

gakudanさんの場合は、お仕事でどうしても必要と言う側面もおありなのでしょうね。

私はダメ薬剤師なのですが、私と正反対の凄く優秀な薬剤師の友達が「薬剤師の秘訣はしゃべり過ぎない事!だから(話すべき知識も無く(^^;;、しゃべらない(というよりしゃべれない(^^;;)あなたの方がむしろしゃべり過ぎる薬剤師よりもいいんだ!」と言ってくれた事があって、大いに勇気を得たことがありました。(^^;;

もちろんしゃべるべき内容はたくさん持っていた上でしゃべりすぎないのが一番いいのでしょうが・・。

>人間、自分の大きさ以上の事は何も表現出来ない筈なのに、なんて愚かしい事なのでしょう。音楽の演奏も一緒です。

gakudanさんのこの言葉こそ深いです!なるほど!

いえいえ、しゃべりすぎなんてことはありませんので、是非又遊びにいらしてくださいね。( ^-^)

gakudanさんのところへ伺おうとは思うのですが、出不精なのと駅そばとかあまり食べないのでついつい失礼しています。

こんどまた神戸の娘のところへ寄ろうと思ってますので、その近辺の情報などありましたらお知らせください。
by 九子 (2008-10-05 23:08) 

パピチャです

[はじめまして]
はじめまして。
現在38歳で、4歳と4ヶ月の男の子のママです。先日母が余命数ヶ月の宣告を受けました。9年ほど前からC型からの肝臓ガンで闘病中。それでも元気に俳句にでかけたり、まだもう少し元気でいてくれるかと思っていました。私も両親との間の1人子。母なしの人生は考えられないのです。母は42で私を産んだので今年80歳。
出来の悪い娘は、宣告をうけてから何も手つかずで、自分がうつの状態になっているのです。子供はまだ小さいし、どうしてよいのか・・・・・。しっかりしなくてはと思います。

寝れなくてネット検索していたら、九子さんのページにたどりつきました。母を亡くして生きて生きていけるのか・・・・。
とても不安です。
by パピチャです (2008-10-19 06:52) 

九子

[パピチャさん、はじめまして。]
早朝にコメント頂いていたんですね。今日は日曜日だったので、今始めてネットを開きコメント読ませて頂きました。
すぐにでもコメント出来たらよかったのに、すみません。

そうでしたか。お母様が・・。

42歳の時のお子さんで一人娘さん。さぞかしお母様を頼りにしてお育ちになったのでしょう。自分もそうだったのでよくよくわかります。

ご両親さまにしてみれば目に入れても痛くない可愛いお子さんだったでしょうから、手をかけて育てて下さったのでしょう。

私は親不孝なので、自分が何も出来ない事を親のせいにして「どうしてもっと自立した子に育てなかったんだ!」って文句を言った事、何回もありましたよ。

でもそのお母様が・・。そしてあなたはまだ38歳。

うちの母は食道ガンをやってて、わかった時私はもう40代半ば。
それでも母が死ぬかもしれないと思うと言い知れぬ恐怖を感じました。

当時はもう精神科通いをしていましたが、先生に面接して頂いたり薬を増やして頂いた覚えがあります。

母は幸い転移が無く、母が無事退院してきた時は仏様に感謝したものです。(一応仏教徒なので・・。(^^;;)

お母様は余命の事やガンの事、ご存知なのでしょうか。

余命の事はともかく、ガンの事をご存知か御存知でないかは、家族の心情にかなり影響があると思います。

お母様には酷かもしれませんが、もし本当に治らないものであれば告知をされて「最期の時」を充実させて差し上げた方がお互いに幸せかもしれません。

父は母の8ヶ月前に急逝し、病院のベッドで誰にも看取られずに息を引き取りました。楽では良かったでしょうが、それより母が亡くなるまでの10日間でも、家族に見守られて家で過ごせた事は親孝行の真似事ができたような気がしています。

今パピチャさんはお医者さまからウツの薬を頂いていますか?

何か原因があってウツ状態になるのを反応性のウツと言うそうで、反応性のウツには薬の効き目が若干悪いと言われているそうです。

私のように、何の理由もなく季節になるとウツが来るのは内因性のウツと言って、割りに薬が良く効くと言われています。

もしも薬を飲んでいらっしゃって、それでもまだウツ状態が改善しないなら、それは先生に相談されて更に強い薬に変えて頂けると思います。

ウツの時は薬だけが頼りですから、是非先生を頼りにされて下さい。

お子さんも可愛い盛りでしょうが、うるさいと思われる事もあると思います。もしそうだからといって、ご自分を責めないで下さい。

パピチャさんは、今本当に人生の難所にいらっしゃると思います。私だってあなたの年で同じ事が起こったらあなたとおんなじ気持ちになります。

今はお母様のことを一番に考えてさしあげましょう。
お父様もご主人もいらっしゃれば、後のことはなんとでもなりますよ。

そのためにも、ウツ状態は薬を増やしてもらうとか、代えてもらうとかしてなんとかしのぎましょう。

言い足りない事とか、言いすぎた事とかありそうなので、もしよければメールを頂けますか?

この日記中の斉藤史さんの囲み記事の下に「御連絡頂ければ」というところがリンクになっていてメールフォームになっています。

お返事もコメント欄に書き難ければ、メールでどうぞ。( ^-^)
by 九子 (2008-10-19 18:16) 

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