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宿命 1969-2010 [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]


九子がずっと楽しみにしていた「宿命1969-2010」が終った。ああこれでまたひとつ、生きている喜びがなくなるなあ。(^^;;



北村一輝(きたむらかずき)が人気だ。

九子も御多聞に漏れず、NHK大河ドラマ「天地人」の上杉景勝の凛々しく誠実な役どころが新鮮で「ほほう。」 と思った。



何しろ彼は九子の中ではずっと悪役の人だった。それが、時代劇にも嵌るというか、時代劇の鬘と衣装を着けさせたら、誰よりも立派なお殿様になった。その変幻自在ぶりが凄いと思った。(よく調べてみたら、彼の時代劇出演はもう何度もあって、毎回定評があるらしかった。)



九子がこの人を意識し始めたのは、「14才の母」の三流週刊誌のスクープ記者役の時だった。



やけに眉毛の濃いアクの強い日に焼けた男で、子供の父親であるキリちゃんに付きまとい、最終的にはキリちゃんの母親の会社を倒産にまで追い詰めてしまうどうしようもなく嫌な奴の役だった。

髪にはウエーブがかかっていて、今みたいな直毛ではなかったはずだ。



確かエンドロールだったと思うが、出演人物全員が一人ずつ裸で母親の子宮の中にうずくまってるようなシーンがあって、悪役のはずの北村一輝が天使のようないい顔で写っていて、「こんな人でも子供の頃はこんなに純粋だったんだ。」と思った。北村一輝イコール極悪人とばかり思ってた頃の話だ。(^^;;



「天地人」以来、この人の人気は急上昇だった。もしかしたら主役の妻夫木聡を上回る人気だったかもしれない。

コマーシャルで「メガシャキ!」と凄んだり、料理番組やお笑い番組にもひっぱりだこになった。



その結果わかったのが、彼はトークがあんまり上手ではないと言う事。もちろん彼もそれを意識していて、だからこれまでそういう番組にはあまり出てこなかったのだろう。



でも寡黙な人柄は、彼の魅力を却って引き立たせる。



根っからの役者バカ。役の真髄を極めようとする余り、前歯を9本も抜いたというのは有名な話だ。



今回の「宿命」が14年間で初めての主演ドラマだそうだから、前歯を抜いた時は脇役だった事になる。

主役ならまだしも、脇役のために前歯を9本も抜く役者さんって凄いと思う。



「宿命」で、彼は政界に討って出ようとする大財閥の御曹司役を演じた。

ピシッとしたスーツを着こなし、さわやかな笑みを浮かべたサラブレットの好男子役を見事に演じていた。



「14才の母」の時パーマだった髪の毛は、直毛で前髪を額が隠れるくらいに下ろしていた。その一つだけで、あの三流記者役とは別人のような違いだった。20代後半から30代前半のまだ初々しい感じがよく伝わってくる。



彼は実はなで肩なのだが、それをたぶんコンプレックスと感じていてか、それを隠すように逞しく筋肉を作り上げている。たまに出てくる半裸のシーンでは、彼の隆々たる体躯についつい目が行ってしまう。(^^;;



時代劇で培ったであろう乗馬技術も、このドラマでは上流階級の乗馬趣味という形でうまく生かされている。

彼はまさに自分に与えられた役を一つ一つ丁寧に極め続けて来た結果、今ここで大輪の花を咲かせた役者さんだと思う。



彼のような経歴の人って、誰かほかにいるだろうか?

14年間も脇役ばかりやっていて、脇役でブレイクして主役になったというような・・。



名前が似てる同年輩の沢村一樹(いっき)も遅咲きの俳優さんだと思うけど、北村一輝ほど長く脇役ばかりやってなかったような気がするんだけど・・・。



さて、「宿命」は、実はドロドロ系のドラマだった。

いや、九子がそういうのが好きって訳じゃなくて、北村一輝が見たくて見始めたら、たまたまそうだったという話。(^^;;



北村一輝演じる大医療法人であり大財閥である有川家の御曹司、有川崇(たかし)は、学生紛争に夢破れ「権力を握る以外に自分の夢を叶える道は無い」と悟った母親の英才教育を受けてエリート官僚になる。



さらに頂点を目指すため、政治家の道、究極的には総理大臣になる道を歩み出す崇は、次期総理の呼び声の高い白井眞一郎の長女尚子と政略結婚で結ばれる事になる。



この結婚に途中から大反対した崇の母親三奈の危惧は、崇と尚子が血を分けた兄妹ではないかというものだった。

東大紛争の折、三奈が一夜の関係を持った相手が白井眞一郎であったと気づいたからだ。



政略結婚のはずだった崇と尚子は、次第に相手に惹かれて行く。

崇の子供を身ごもった尚子は、近親結婚で生まれる子供の危険を心配する三奈によって流産させられてしまう。



それに、崇のかつての恋人笹山宣子の妨害なんかも絡んで、息つく暇も無いほど事件は起こる。



ドラマはもう終っているが、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(上)の画像 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(下)の画像原作を読みたい人も居るだろうからあらすじはこのあたりにしておこう。( ^-^)

ついでにテレビ朝日「宿命」のサイトはすごくお金がかかっているみたいで、一見の価値がある。



特にページ右下にある「宿命」百科には薀蓄満載だ。(この百科事典はどのページも説明が途中なのですが、ページをまくって次を見ることは可能なのでしょうか?)



九子が見逃していたサイモンとガーファンクルの「ミセスロビンソン」が流れたシーンの事も「懐かしのヒット曲」として載っている。



曲と言えばポルノグラフィティーの主題歌「瞳の奥をのぞかせて」も秀逸だ。





物語のキーワードとなる1969年、九子は中学生だったから学生運動という言葉は知ってはいたがピンと来ない。九子よりも10才ほど上の先輩達が当事者だった事になる。



暴力に訴えた手段は評価出来ないが、当時の学生達のほうがよほど今の学生達よりもエネルギーがあって真剣に生きていたと考えるのは九子だけではないだろう。



日本は今ほど豊かではなかったし、学生達も「神田川」に歌われた貧しい環境で食うや食わずの中、理想とするより良い社会を求めて戦ったのだと思う。



そうして戦った彼らは騒乱罪、破壊罪その他もろもろの理由で逮捕され敗北したはずだったが、「宿命」の中で誰もが皆、人生の成功者として描かれている。

有川三奈しかり、有川和裕(三奈の夫)しかり、白井眞一郎しかり・・・。



余談になるが、九子の主治医のT先生もそんなお年頃で、たぶんそういう運動に関わったであろうと思わせる雰囲気を漂わせた人だ。そういう人々の方が、今はとても魅力的に生きておられる。





エネルギーのある人間が勝利をつかむのは、ごく当たり前の気がする。

特に誰にもましてぎらぎらするエネルギーを感じる男が奥田瑛二扮する白井眞一郎だ。

権力を得るためには、見方をも裏切って切り捨てる事も辞さない。

良くも悪くも政治家にはうってつけだと思う。



崇は、恵まれた環境に育った御曹司ゆえか、線の細さが否めない。

彼が回りの人間にも気を遣い「ありがとう」を忘れないのは、実はセリフにはなかった北村一輝の思い入れらしい。上流階級の生まれらしい育ちのよさをその一言で表現したかったと、どこかで彼が言っていた。



崇は恋人の前で「ごめん」でも「悪かった」でもなく、「すまない」と言う。これも北村一輝流演出だろうか。



事件が起こるたびに動揺し、絶望し、我を忘れる崇だが、そんな崇に尚子が寄り添い、そっと手を差し伸べる。

救いの無い物語の中で唯一、若い二人の政略結婚という形をすり抜けた純粋な愛情がほろっとさせられる。



救いが無いと書いたが、最後に残るのは親子の、夫婦の、家族の愛情だと言う事をこの物語は教えてくれる。



視聴率は10パーセントに届かなかったそうで、先日の相棒スペシャル版2時間放送の20パーセントには大きく水をあけられた感じだが、九子はとても楽しみにしていた。

ドロドロ系ではあったが(^^;;、久しぶりにテレビが面白かった。



「宿命」はこの日本という国の縮図のようでもあった。

卑劣な手段を使ってまで頂点に立ちたい人間が居て、それに翻弄される敗者が居る。

そしていつか頂点に立ったものは蹴落とされて、別の勝者にとって変わられる。

女性たちだけがやたらに強い。(^^;;



もうすでに血戦  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京 2 (100周年書き下ろし)の画像続編が出来ているという原作本だが、北村一輝がまた見たいので(^^;;、是非次回作の放映を望む。


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おみつ

[政略結婚をすり抜けた純愛]
九子さん、こんにちわ。お久しぶりです。

愛犬が続いて永眠し元気が出ない日々を過ごしています。豪雪地帯や長野の大雪のニュースを耳にすると九子さんを思い出してました。

北村一輝さん!・・・私も「目がシャキ!」のCMを随分前に見て「このインパクトのある俳優さんは誰?」と気になってました。

「天地人」も見ておらず、彼の事を調べる事もなく過ごしていたら、「宿命」の番宣で「大改造・劇的ビフォアーアフター」のゲストで出演されていて、名前を知り、それから丁度放送されていた映画「ガリレオ・容疑者Xの献身」や2003年のドラマ「大奥」の再放送で北村一輝さんを見て、興味を持ちました。

ガリレオでは刑事役、大奥では13代将軍・家定役、家定に瓜二つの僧・柳丈役で出てましたね。

ドラマでいつも同じ印象のキムタクや福山雅治さんらと違って演じる役でどれも印象が違う方は本当に名優だと思います。

「宿命」もドラマを見ない私としては頑張って2~3回は見たのですが、余りの人間関係のドロドロさや、40年間一度も会わず違う人生を歩んで来たとは言え、お互い愛し合って肉体関係まで持った元恋人同士がお互いを分からない物かと不合理を感じ見なくなってしまいました。残念。

ドラマの結末はどうなったのでしょうか?本文ではこれから原作を読む方の為に伏せられてますが、私だけにちょっと教えて下さい!(笑)

「大奥」でも14代将軍・家茂と皇女・和宮の政略結婚をすり抜けた純愛を描いていて、久しぶりに楽しみにドラマを見ました。他にも政略結婚を巡る策謀や喧騒に縛られず純愛を貫かれた方々は満州国皇帝の弟夫妻や、朝鮮王朝皇太子夫妻もそうらしいですね。

家茂は聡明な名君で、当時の勝海舟達幕府の重臣に絶大な信頼を得ていて、家茂が僅か20歳で亡くなった時、勝海舟は「本日、徳川家は滅亡した」と嘆いたとか。

文章が長くなり失礼しました。
by おみつ (2010-03-14 16:43) 

九子

[おみつさん!( ^-^)]
こちらこそご無沙汰すみません。m(_ _)m

愛犬が亡くなられ、さぞや寂しい毎日をお過ごしでしょう。
でもおみつさんの手厚い看護のお陰で、ここまで生き延びられたのでしょう。感謝して死んでいったと思いますよ。

おみつさんも途中まで見てたのね、宿命!

>40年間一度も会わず違う人生を歩んで来たとは言え、お互い愛し合って肉体関係まで持った元恋人同士がお互いを分からない物かと不合理を感じ・・

この気持ち、私も最初そう思ったけど・・。
でもこの間大学の時の同級会があって、もしも町で会ったら絶対にわかんないなあと思う人がたくさん居たから、そう言う事があっても無理はないんじゃないかと思うことにしました。

14代家茂ってそんな名君だったのですね。皇女和宮ととても仲の良い夫婦になった優しい人という話は知っていたんですが・・。

二十歳でなくなっちゃうなんてね。この人がもっと長生きしてたら、明治政府が出来るのはもっと時間がかかったかもしれませんね。まあ、どっちが良かったかはわかんないけど・・。

「ガリレオ・容疑者Xの献身」にも北村一輝さん出演されてたんでしたっけ?見たはずなんだけどわかりませんでした。おかしいなあ。(^^;;

いずれにせよ、おみつさんの感性の良いアンテナにひっかかるってだけで、やっぱ北村一輝は凄い俳優さんですよ。( ^-^)

最終回の話、メールするね。( ^-^)
by 九子 (2010-03-14 21:10) 

秋桜

[九子さん]
北村一樹さんのファンだったんですね。私はそのドラマの予告は見たけれど 内容がお金持ちのドロドロだったことと 多分他の番組と時間がかぶっていたため 家族から却下され 本編は見られませんでした。でもガリレオは見ましたし 上沼恵美子さんのお料理番組に1週間出ていて 演じている時とは全く違った 穏やかな話し方や物腰に とても素敵な人だと 秘かに思っていました。楽しみに見ていたドラマが終わってしまうのは 本当に寂しいですね。九子さんのお陰で 少しストーリーがわかったことが嬉しいです。
by 秋桜 (2010-03-16 10:18) 

九子

[秋桜さん!!!]
よかったあ!連絡ついて・・。
ブログの一番上に伝言あったの気づいてくれた?
メール出来ずに困ってたの。( ^-^)
(メールの連絡先がわかったら消しますね。)

う~ん。北村一輝さんのファンかと言えば、そこまで熱くなってるわけじゃないと思うのですが・・。(^^;;

>家族から却下され 本編は見られませんでした。

ああ、何年か前は我が家もそうでした。今は却下する子供達もみんな家に居ないので、M氏を組み伏すことはいとも容易く(^^;;、いつでも好きなテレビが見られる九子です。( ^-^)

彼は独身なのでしょうか。と、それがわかったからと言ってなんという事はありませんが・・。(^^;;
あんなに素敵な人がもし一人だったとしたら世の中おかしいよね。

サイトが充実してるので、各回のあらすじを見れば、大体のことはわかると尾思います。
視聴率がパッとしなかったのが不思議なくらい良い出来だったと思いますから、たぶん続編が放映される日が近いと思います。
続編は秋桜さんも見ることが出来ますように。( ^-^)

もう一度メールくださいね。
by 九子 (2010-03-16 13:22) 

おみつ

[ちょっくら、北村一輝さん情報おば・・・]
九子さん、こんにちわ。

メールはどちらに送信して下さったかしら? 未だでしたら、催促したみたいでごめんね。ドラマの展開は公式HPで見ました。ありがとう。異母兄弟では無かったようですね。そこが気になってて・・・(笑)

それでは北村一輝さん情報おば、ちょっくら・・・まあ、その2chのファンスレ、MIXのファンコミからの物なんですが・・・

奥様は元モデルのスラリ美人、お子様は中学生ぐらいの一男一女?という事でしたよ。

YOUTUBEで見たTOKIOの松岡君とホスト王の座を争ったドラマ「夜王」や弁護士役の「ホカベン」はカッコよかった!

しかし、私は中村敦夫さんのような純日本人「おしょうゆ顔」がやはり好みで、北村一輝さんはたまに見る方が「お!」とインパクトを感じるみたいです(笑)
by おみつ (2010-03-17 09:03) 

九子

[おみつさん!( ^-^)]
あれっ?届いてない?yahooメールのmonで始まるアドレスに送ったはずなんですが・・。もし届いてなければメール下さい。再送するから。

北村一輝さんの情報、いろいろありがとう!( ^-^)
さすがおみつさん!アンテナ高い!(^^;;

>奥様は元モデルのスラリ美人、お子様は中学生ぐらいの一男一女?という事でしたよ。

う~ん、残念!って、なんのこっちゃ。(^^;;

変なこと言うみたいだけど、お子さん達神経質じゃなきゃいいんだけどね、なんとなく。

youtubeってほとんど見ないんだけど、テレビドラマも見られるの?一時見られなかった時あったんじゃない?

見られるんならみてみようっと。まずはカッコイイとおみつさんお薦めの「ホカベン」からでも・・。(^^;;

しかしおみつさんは本当に紋次郎さん命ですねえ。
そこまでぞっこんって、紋次郎さんも罪な男。( ^-^)
by 九子 (2010-03-17 12:35) 

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