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DNAの謎 [<坐禅、仏教、お寺の話>]

前回教育の難しさ、特に親が子供に夢をかけて教え込む事の難しさを書いたけれど、今回は親の才能を受け継ぐ遺伝子の話をしようと思う。と言っても、くれぐれも学術的な話は期待なさらないように・・・。(^^;;

この頃尾崎豊の忘れ形見が父親ソックリの声で巷を賑わしている。「I love you・・・」と歌う声はまさに尾崎豊そのもので、ぞくっとするほどだ。

でも考えてみると、声が似ていると言うのは声帯の作りが親譲りという事で、顔つきが似ているとか体格が似ているという事と一緒で、親子だったら似ていたっておかしくないだろうとは察しがつく。

スポーツ選手の場合も、体格や筋肉の着き方が似通っていれば、親がスポーツ選手なら子供がその競技の競技者として、素質的には最初からかなりいい物を持っているのではないだろうかという想像はつく。

今回九子がお話したいのはそういう体格的体型的な親子の類似点ではなくて、もう少し才能?・・が関与する場合だ。

以前もお話したと思うが九子の旧友のご主人は森亮太さんという才能ある彫刻家だった。今秋亡くなられた向井良吉さんという彫刻界の大御所も、森亮太の才能を大変高く買っていらしたそうだ。

その彼が川越の自宅から赤城山の新しく出来たアトリエへと家族4人を引き連れてドライブ中に交通事故にあい、命を賭して家族を守り、道半ばにして夭逝された。もう15年も前の話だ。

事故当時10歳と7歳くらいだったはずの彼の忘れ形見のお子達もすっかり成長されて、ご長男は建築家として、ご長女は産業デザイナーとしてそれぞれドイツとアメリカで修行中だ。

小さい頃にはお父さんの作品に囲まれた家に住み、芸術の香り高い環境で育ったに違いない彼らだが、友人はその後女手一人で幼い子供達を養わねばならなかったはずで、亮太さんが居た時ほど芸術的に良い環境と言う訳ではなかったように思うのだが、彼らの中には脈々として父親の芸術家の才能が息づいている。

ご長男は、とにかく大きいビルディングが作りたいそうだ。建築家と言っても一級建築士の免許を取って個人の家を作るというレベルには収まりきれない。安藤忠雄や黒川紀章を目指したいらしい。

ご長女はカップやグラスのデザインをなさるそうだが、彼女の頭の中では最初から平面に書かれた物でも立体に浮き上がって見えていて、立体視の中でそのままデザインが浮かぶのだそうだ。

考えてみると彫刻家だった森亮太氏の子供達はこうして二人とも迷わず芸術の道へ進み、二人とも二次元の絵画ではなく三次元の立体を形作ることを無意識のうちに選んでいる。

これは一体何がそうさせるのだろうか?

考えられるのは、森亮太氏のDNAにあった立体の識別能力が子供達に遺伝子を介して伝わり、それを使って実際に美術の時間などに表現してみたところ、先生や友人に誉められてそうする事が好きになった。更に続けていくうちに磨きがかかって才能と言われるレベルにまで達した。
まあ、そんな風に考えるのが一番わかりやすい。(あくまでも九子の想像で、お子達に尋ねた訳ではありません。(^^;;)

昔から「好きこそ物の上手なれ」ということわざがある。
人間、嫌な事を続けるのは抵抗があるが、好きな事を続けていくのはまったく苦にならない。

九子だって嫌いな薬の勉強はさっぱり身に付かないが(^^;;、物を読んだり書いたりするのはどれだけ続けてもあんまり飽きない。

好きなものを生涯やり続けられるというのはやっぱり幸せな事に違いない。そしてそうやって続けていくうちに、自分なりの才能みたいなものが見出せたら一番いいんじゃないのかな。


文藝春秋と言う雑誌を近くの本屋さんから毎月父母が取っていて、父母が居なくなった今でも何となく断りきれずに定期的に届いているのだけれど、この本は本当にいろいろな読み方が出来る良書だと思う。

九子なんかはほとんどさらっとしか目を通さないのだが、じっくり読むといろいろな書き手が手を変え品を変えいろいろな事を書いていて、誰が読んでも読みでのある本になっている。

つい最近、龍馬伝で岩崎弥太郎を熱演した香川照之が書いていた手記が面白かった。

香川照之の母親は女優の浜木綿子(はまゆうこ)である事は有名だが、父親は猿之助歌舞伎の市川猿之助であるというのは知らなかった。
香川が東大卒というのはかなり有名な話なので、てっきり二番目のご主人のお医者さんの息子だとばかり思っていた。

香川照之は生まれてから18年間ほとんどずっと引きこもりだったのだと言う。
有名人の親を持つと子供は苦労するのかもしれない。

東大に入って、はじめて自分の居場所が見つかったという香川。
それでも就職の時期が来てもこれと言って何になりたいと言う当てはなかったそうだ。

とりあえず親が俳優だから、演劇でもやってみるか!

彼いわく、俳優と言うのは「僕は俳優です」と名乗りさえすれば、誰だってなれる。
まあ、言われてみれば確かにそうだ。(^^;;

そんな気楽な気持ちで芸能界に入り、ほどなく一人の役者に出会った。
それがあの名優と称される松田優作氏だった。

松田優作が役者のなんたるかをすべて教えてくれたと香川は言う。

まず役者は自分が楽しくなければならない。そして観客を楽しませるためには、どんな汚れ役でも厭わずやらなければならない。

なるほど!だから香川が演じた岩崎弥太郎は、あんなに泥まみれで汚かったのか!(^^;;

生まれてから18年間も引きこもっていたから一人で過ごすのが好きで、大勢のスタッフや共演者と時間を過ごす俳優と言う職業は性に合わないと香川は言う。

でも松田優作に出会って、人間は一人で部屋に引きこもるためだけに生まれてきたのではない。たとえ自分にとっては辛くても、俳優として現場で多くの人に出会い、時間を共有して作品を作り上げていく行為が、おそらく人生の意義でもあると強く思うようになったと香川照之は熱く語る。

そういえば松田優作の忘れ形見の松田龍平も、松田翔太も、俳優として引っ張りだこだ。父親が亡くなったのは長男の龍平が6歳の頃だそうだが、二人とも優作よりも優しい顔立ちで、でも凄みのある目は父親譲りだ。

彼らの場合もやはり両親ともに役者だった訳で、役者になる舞台は整っていたわけだ。
考えてみると親の名前という看板があるので、プロダクション側からすれば売り出しやすいという長所もあるのだろう。


特に香川照之の来し方を見る時、要所要所で幸運とも思えるさまざまな転機があることに気づく。
まずは18年間もほとんど引きこもり状態の生活の中で、叱られる事が何より嫌いで、勉強さえしていればいいだろうと優等生のようにふるまいながらも、心の中では「世界が終わってしまえばいい」と考えていたと言う。東大に入学して引きこもりは脱したが、夢も何も無く「ただ生きている」生活は相変わらずだったそうだ。

22歳で仕方なく就職を考えた時、やりたいものなど何も無く、せめて他人に怒られないよう何か「まっとう」な道に進むのが無難だろうと考えていた時に、母親が役者だったからか、ふっと俳優と言う選択肢が出てきたのだそうだ。
この「俳優と言う選択肢がふっと出てきた」、というのが凄い!
それこそが彼の将来を決定した。

そして松田優作との運命的な出会い。
よく「運も才能のうち」と言われるが、こういう幸運を呼び込むのも確かに才能に違いない。

引きこもりと呼ばれる人々の中には、長い生活の間に鬱屈した物凄い量の負のエネルギーが溜まっている事が多い。そういう中でさまざまな凶悪事件が起きている事も周知の事実だ。

九子の人生を考えた時も、もしも坐禅に出会わなかったら、坐禅が自分自身を大好きにしてくれなかったら、今頃九子はこの世に生きていただろうかと切実に思う事がある。引きこもりとは少し違ったが、社会の劣等生の自分が大嫌いで、常に周りの人々が羨ましく、他人の顔色を伺いながら右往左往して生きていた。

自分の事が好きになれない人間は、絶対に家族や他人や社会全体を好きになることは出来ないと思う。
まずこういう人間に育てた親を恨む。普通に生きてる他人を羨む。そして自分自身を憎む。
だから社会に対して壁を作る。自分を無意識に守ろうとする。そして引きこもる。

考えてみるとその状態から抜け出すことが出来るというのも物凄いエネルギーだ。よほどの幸運だ。

香川照之の場合は、松田優作という役者に出会えたのが幸運だった。
それにしてももともと並外れたエネルギーを持った人だったのだろう、役者などという仕事が出来るというのは!

九子みたいなエネルギー皆無のぐうたら人間には、坐禅がよく合った!本当に楽ちんだった!(^^;;


いかに由緒正しいDNAがあったとしても、たとえば香川照之がもしも生涯引きこもりで終わってしまったり、森亮太氏の子供達が父母に反抗してまったく違う道を目指したりしてしまえば、親譲りの優秀なDNAは生涯彼らの中に埋もれて全く外に出ずに終わってしまった訳で、そういう意味では彼らの才能を引き出す役目をした松田優作や、わが旧友の功績は大きいと思う。


仏教では良くも悪くも「縁」という言葉が使われる。
「袖すりあうも他生の縁」と言われるような生まれ代わり死に代わりを繰返した壮大な前世の歴史の中で、どこかで接点があった人があなたの前にいつか現れて、あなたの人生に大きな影響を与える。

それを思う時、「悪いことはするな。良いことをせよ。」という誠に単純な大本山活禅寺の無形大師の教えは、因果律という全ての結果には原因があるという仏教の大法則と照らし合わせて考えてみた時、とてつもなく大きな意味を持つ事がわかる。

DNAというわかったようなわからないような物だけれど、あなたのDNAの中に組み込まれていると言われる祖先や過去世の記憶のずっとずっと先を辿ると、もしかしたらあなたの現在がが見えてくるのかもしれないし、同様に現在のあなたの言動があなたの子孫の未来に関わってくるのかもしれない。

「悪いことはするな。良いことをせよ。」を短期間守る事は容易い。
幸せである時はともかく、不幸の中であっても、良い事をし続ける事は本当に難しい。


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Muran

場所と人とご縁。
才能の味付けとは
そういうものかな
と文章をよませていただいて
ふと思いました。
DNAにはそういう情報は
はいっていないのでしょうか。。。
by Muran (2010-12-24 04:30) 

九子

mu-ranさん、こんばんわ。
こちらはあともう10分ほどでクリスマスイヴは終了です。
長野は少々雪が降り、とりあえずホワイトクリスマスですよ。。( ^-^)

>場所と人とご縁。
才能の味付けとは
そういうものかな

なるほど。mu-ranさんに言い直して頂くと、なんだかそれらしい感じに・・。(^^;;

DNAには過去の全ての情報が入っていると聞いたことがあります。またある人は、脳のとても深いところに過去の記憶が眠っているとも言っています。

まだまだ不思議な事はたくさんあります。DNAの記憶の解明はまだまだ先の話でしょうか?
by 九子 (2010-12-24 23:55) 

youzi

o<(ノ・ω・)ノ*:..。o○☆ メリークリスマス ☆○o。..:*ヽ(・ω・ヽ)>o
   ステキなクリスマスになりますように!
by youzi (2010-12-25 20:00) 

九子

youziさん、クリスマスコメント有難う!( ^-^)
九子にしたら早いお返事でしょう。( ^-^)
長野は雪が降ってホワイトクリスマスです。
三男からの義理ケーキがイブの夜ではなく、本日届きました。
本日指定になってました。(^^;;
相変わらずの我が家です。
youziさんも良いクリスマスをお迎え下さいね。( ^-^)
by 九子 (2010-12-25 21:41) 

youzi

昨年中は大変お世話になりました。
今年もよろしくお願いします。
新しい年が万事如意な一年になりますように!
by youzi (2011-01-01 22:56) 

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