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美男子の死 [<九子の万華鏡>]

竹脇無我さんが亡くなった。
小脳出血だそうだ。

「花で囲まれた美しい君の写真を目の前にこうしてここに立っていてさえ、僕はまだ、君の姿を、人の間に探してしまう。」

ちょっと違ってるかもしれないけど、加藤剛さんの弔辞のこの一文が泣かせた。
竹脇無我さんを偲ぶ会でのことだ。

竹脇無我と言ってピンと来るのは熟年世代以上の方ばかりかもしれない。
やっぱり一番の当たり役は、加藤剛さんと組んだ「大岡越前」の赤ひげ医者榊原伊織役じゃなかったかな?

イケメン好きの九子は当時から目を付けていて(^^;;、彼の美しい顔を見るのを楽しみにしていた。
アナウンサーだったというお父様ゆずりの低い声も素敵だった。

美女好きだった森重久弥は、美男子の竹脇無我も大好きで、「無我ちゃん、無我ちゃん」と言って可愛がり、どんなに機嫌が悪くても無我ちゃんの顔を見ると機嫌が直ったのだそうだ。

竹脇無我は、何と言うか、そんなに芝居がうまい方じゃなかったと思う。
抑揚の少ないしゃべり方で、感情を抑えたと言うか、感情の起伏があんまり見えて来なかった。
だからダイコン役者と言われてしまう事もあった。

昔はイケメンすなわち美男子の事を二枚目と言ったけれど、二枚目役しかやってこなかった竹脇無我は、そのうち表舞台から消えてしまった。二枚目役というのには旬があるらしい。

ず~っと、ず~っと長い間、竹脇無我の姿を少なくともテレビの画面で見る事はなかった。

それが突然、うつ病から生還した経験を綴った本が売れてカムバックが実った。

凄絶な生還、うつ病になってよかった

凄絶な生還、うつ病になってよかった

  • 作者: 竹脇 無我
  • 出版社/メーカー: マキノ出版
  • 発売日: 2003/07
  • メディア: 単行本

「凄絶な生還~うつ病になって良かった」は読んだ事がないけれど、彼の場合は完治まで8年もかかっているからかなり深刻な症状だったのだろう。
お父様も若くして同じ病気で自死を選ばれてしまっている。

本の他に、全国各地から講演会にも呼ばれて忙しい日々を過ごし、来春の舞台の役も決まっていたのに、せっかくうつ病を克服したのに、脳の病気にやられるなんて哀しい。

ただ、彼はうつ状態を酒を浴びるように飲んで解消しようとしていたのだそうだ。
Mr.childrenの桜井君も酒好きで小脳梗塞を起こしたらしいし、実は九子の親戚にももともと酒好きで奥様に先立たれてから歯止めが効かなくなり、小脳梗塞を起こした人が居た。
もしかしたら酒が過ぎると、特に小脳に問題を起こしやすくなるのかなあ?


こう言ってはなんだけれど、竹脇無我は不器用な人だったのだと思う。
役と言えばいつもいつも美男子でかっこいい役しかしない。

お葬式でお嬢さんがおっしゃっていたけれど、彼は家の中でもかっこいいお父さんだったのだそうだ。

家の中って一番くつろげる場所だと思うのに、その家の中でもテレビドラマの中のようなかっこいいお父さんを演じなければならなかったとしたら、いや、そうするのが自分の勤めだと思い込んでいらしたとしたら、さぞかし窮屈な人生だったのではないかな?

もう少しかっこつけずに生きられたらよかったんじゃないのかな?

だけどそれを言うのは彼にとって酷なのかもしれない。

竹脇無我に美を、かっこ良さのみを求め続けたのは、他ならぬ九子たち視聴者であり観客たちだった訳だから・・。

特に昭和の時代は二枚目役と三枚目役ははっきりと区切られていて、二枚目役が三枚目役をしたり、三枚目が二枚目をするとか言うのはほとんど考えられない事だった。


そこ行くと今のほうが役者さんはずっと自由だ。

天下の二枚目高橋英樹はバラエティー番組の常連だし、モデル出身の阿部寛は、最初のうちこそダンディーな役ばかりだったらしいが、つかこうへいの影響を受けて喜劇に開眼し、シリアスなものからコメディーまで幅広く活躍している。

同じモデル出身のエロ男爵こと(^^;;沢村一樹も、小学生の頃からみんなの人気者だったお笑いの才能を生かして、先輩阿部寛の路線を目指しているらしい。


例によって薬局も暇になる九子のテレビの時間帯(って、いつも忙しいような言い方だけど(^^;;)、午後4時からのフジテレビ「結婚できない男」の再放送の阿部寛は最高だ。( ^-^)

「結婚できない男」は、きっと学習障害なり発達障害なりがあるんだと思う。

毎日規則正しい生活をして、趣味にも食事にもいろいろなこだわりを持ち、かばんの中や机の中は常に同じ物が同じ所に無いと落ち着かず、手は不器用でネクタイもうまく結べず、他人には理解できない独特のファッション感覚で、グサッと人の気持ちを傷つけるような事を平気で言ってしまい、周りの空気を読めない。
うんちくがたくさんあってそれをひけらかすものだから、まわりがみんな引いていく。
一人の世界を好み、クラシック音楽を大音量でかけては指揮者のまねごとをして一人悦に入る。

(もっとも彼は建築家と言う設定で、空間の概念などに長けているところは学習障害と少し違いそうな気もするが・・。)

「結婚できない男」が昭和の中年おじさんたちに人気があった化繊の入ったヨコシマの半袖のポロシャツにひざまでの半ズボンをはいて、長身をネアンデルタール人のようにかがめて歩く姿は、同じく長身で軽い学習障害のある我が三男Yの姿に似ていなくも無い。(^^;;

確か初回だったと思ったが、「結婚できない男」が腹痛で倒れて、独身女医の早坂先生に診察を受ける場面で、下半身丸裸で診察代の上に腹這いになり、お尻丸出しでカメラに写った時には、さすがに「阿部寛よ!そこまでするか!」といささかショックだった。(^^;;

阿部自身はつかこうへいの芝居でホモの男の役をして、男同士でキスをしてからというもの、すっかりふっきれたと言っていたのだけれど・・・。


若い時って、もうそれだけで美しい。
この頃になって九子はしみじみとそれを思うよ。(^^;;

若い上に見目麗しく生まれついた人は、周りからちやほやされて何をやってもほめそやされ、幸せな一時期を約束される。

ただ、それから20年、30年たった時、その人がそのまま幸せで居つづけられるかどうかはわからない。

昔は目立たなかったさもない人のほうが、付き合って面白い社会の実力者になっていたりする。

役者さんで見ても、佐藤浩市や竜雷太や時任三郎や、どっちかって言ったら醜男の方が、若い頃よりずっといい味出して格好良くなってるなあと思う。


美人や美男子は若い頃と変わらぬ美しさを保つ事に汲々とする。
だけど無常の世の中では、それは大変難しい事だ。

「美」というのは、遊びが無いと思う。
「美しい」という範疇は大変狭いので、ほんの少しそれがずれただけで人々は今まで「美しい」と崇めていた対象の美の衰えを敏感に感じ取る。
たとえば美人女優さんの一本のしわであったり、二枚目俳優の顔のたるみだったり・・・。
美しくある事を運命づけられちゃうと大変だよね。

結局無常に逆らって若い時のままに歳を重ねる事は無理なのだ。
そうであれば、美しさ以外のものを売り物にして行くほうが賢明だ。

そういう意味で阿部寛は賢かったと思う。
竹脇無我の場合は、ああいう時代だったから気の毒だった。

こうしてみると、人間の運不運というのはわりあいに平等であるようだ。

美形に生まれて若い時に輝いてた人は、老いるに従ってその美を失っていくという悲しみに合い、それなりの人はそれなりの若い時だったかもしれないが、数十年後の同級会で「おや、いつまでも若いね。」と言われたり、「この頃輝いてるね。」と言われる事があるかもしれない。

このあいだ本願時の大谷暢順さんも一番最後に言ってたよね、諸行無常は救いだって。

世の中あんまりいい事なかったよって思ってるあなた!
きっといい事はこれから来るんじゃないかな。( ^-^)
そこそこ幸せだったなって思ってるあなた!
悪い事しないで良い事だけするようにしてると幸せは長続きするみたいだよ。( ^-^)

そして美女でならした九子は、これからずっと時間に復讐されて、苦い人生を歩んでいくのだよ。
(えっ、え~~~???(^^;;(^^;;)


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ダイナ

昨日は重いところご訪問ありがとうございました(^^;)
竹脇さん、小脳出血で亡くなられたんですね。
最近、脳の病気で倒れる人も多くて
なんだか怖いです・・・。
by ダイナ (2011-11-02 21:50) 

九子

ダイナさん、お返事遅れてすみません。
このごろ本当に夜重いですね。途中であきらめてまだ読んでないところもあると思うんだけどごめんなさい。

やっぱりある程度年取ると検診など予防が大事ですよね。80、90まで生きなくても、せめて誰かの役に立つうちは丈夫でいたいですよね。( ^-^)
by 九子 (2011-11-04 13:12) 

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by 第36回 エリザベス女王杯 (2011-11-04 14:05) 

伊閣蝶

竹脇無我が、ある時期から一つの型にはまった役柄に固定されてしまったことは事実でしょうね。
でも、お家でもおなじように振る舞っていたという下りは悲しくて鳴りませんでした。
家はやっぱり最後の砦でありますし、私たち親父にとって油断できる唯一の場所であったはずなのに。
哀しいことでした。

by 伊閣蝶 (2011-11-05 00:26) 

九子

伊閣蝶さん、コメントありがとうございます。m(_)m

たしかに家でくらい寛げなければ、いろんな重荷を降ろす場所がありません。
その意味で竹脇さんのうつ病とそういう生活態度は無関係ではなかったかもしれませんね。もちろんお父様の血筋・・の部分はあったとしても。

伊閣蝶さんも大変にまじめできちんとされていらっしゃるので、ある意味心の病にはお気をつけください。すみません、変なこと申し上げたかしら。
by 九子 (2011-11-06 20:55) 

リンさん

先日は訪問ありがとうございました。
遅くなってすみません。

竹脇無我さんといえば、子供の頃に見た姿三四郎が大好きでした。
あ…年がばれるかしら^^
by リンさん (2011-11-09 16:03) 

九子

リンさん、コメント嬉しかったです!( ^-^)
姿三四郎はなぜか私、見てなかったんですよね。
年?同じくらいなら嬉しいなあ。( ^-^)

リンさんは小説を書かれるんですね。尊敬します!
私は想像力がゼロなので、リンさんみたいなファンタジー小説にあこがれています。絶対に私には書けません。

またいろいろご教授ください。m(_)m
by 九子 (2011-11-10 15:31) 

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