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岩崎宏美  虹・・singer [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

いつもおかしいなあと思ってる事がある。

九子が若かりし頃に活躍してた歌手と呼ばれる人々。一例をあげれば郷ひろみ、松田聖子、岩崎宏美、布施明、沢田研二、中森明菜、近藤真彦、などなど。

平井堅ポルノグラフィティのライブに行く時は何ら恥じる事無く周囲に吹聴出来るけれど、なぜか昭和の匂いの色濃い彼らのコンサート(ライブではなく)に行くと言う事を誰かに伝える時、なぜ一沫の恥ずかしさが漂うのだろう?
もちろん九子だけかもしれないのだが・・。

歌手あるいは歌い手という言葉。シンガーというのともまた違う。

昭和という時代、歌手はみんな作詞家先生や作曲家先生に曲を書いてもらい、プロデューサーという人々の言うなりに歌い、振り付け師に教えられて手足を動かして踊り、まるで自らの意志を無くした操り人形のようだった。

もちろん自分なりの表現をプラスする自由はあっただろうが、許される範囲はそんなに大きくは無かったと思う。

今はシンガー=ソングライターが当たり前になり、自分の歌を自分でプロデュースする人々の方が増えて、歌手はアーティストと呼ばれ、自由自在に自分の世界を表現出来るようになったのだから大きな進歩だ。

アーティストと呼ばれるようになった歌手たちは、誰かに操られる事なく自分の意志のままに歌える。

昔はそういう不自由さがあったという事実とはまた別に、歌手とか芝居とか、もっと言ってしまえばサーカスなどの曲芸とか、そういう演芸一般に対する差別と言うか、要するに「見せ物」として括られて、それを生業(なりわい)とする人々を低く見るというような、そんな風土が昭和以前の日本にはあったように思う。

要するに貧しい家の親たちが女の子を郭(くるわ)に売ったりした時代からさかのぼって、郭がなくなり、サーカスがそれに取って変わり、要するに人に芸を見せる仕事は、ある時期貧しい家の子供たちの行きつく先という印象があった。

九子なんかも小さい頃叱られた時に「悪い事をするとサーカスに売ってしまうよ。」みたいな事を言われた記憶があり、シルクドソレイユなんかがどんなに華やかで優美なショーを見せていても、どこかに一沫の哀愁を感じてしまったりする。

一番忙しかった頃のピンクレディーの思い出話なんか聞いても、いかにして歌手と言う使い捨て商品を旬のうちに売り切ってしまうかという業界の思惑が垣間見られて、ひどく気の毒に思ったものだ。

まあ、そんな事が影響してるのかどうか、松本に岩崎宏美が来ると聞いた時、どうしても行きたいと思った訳ではなかった。やっぱりポイントは格安な値段かな。(^^;;

ただ、テレビでたまに流れてくる郷ひろみや松田聖子ちゃんの歌声は後押しになった。

つまり何十年間も第一線で歌いつづけている彼らの声が、年月と共に深みや艶、そして声量までもを増しており、それならば当時若手一番の歌唱力で定評のあった岩崎宏美なら、きっと凄い歌を聞かせてくれるのではないかと思った訳だ。

九子の予想は的中した!

「思秋期」に始まり、「聖母(マドンナ)たちのララバイ」で終わった2時間は、九子が思った以上に豊かなものだった。
実は九子はしばらく前に松任谷由実のコンサートを見に行った。例によってYさんが誘って下さった。( ^-^)

こじんまりとした舞台の上に昭和60年代みたいなファッションを身に付けて歌うユーミンはあの日のままだった。

そう言えばユーミンには「あの日に帰りたい」という名曲があったけれど、会場は年を重ねた往年のファンがほとんどで、一人ちっとも変わっていないように見えるユーミンのあの頃と変わらぬ歌を聞きながら、若かりしあの日に帰る事が出来てとっても幸せだった。

だから、岩崎宏美にもまずはそれを期待した。

ただ九子の場合、ユーミンの全盛期の頃がちょうと甘く切ない青春の頃に当たっていて、ユーミンの歌を聴くとまるで額縁に彩られた一枚の絵のように鮮明に思い出す一場面があるのだが、残念ながら岩崎宏美の歌と重なる甘酸っぱい思い出はあんまり無い。(^^;;


岩崎宏美は進化していた。彼女自身には二十歳をはさんで二人の息子さんがいて、数年前に再婚もしている。折りしも妹の良美さんが産婦人科医と結婚されるというおめでたいニュースの最中でもあった。


人生経験を積むと歌に幅が出ると良く言われるが、岩崎宏美の場合、もともと美しかった声にさらに魅力が加わった。とにかくはっきりと声量が増したのだ。

彼女が何年か前に声帯ポリープの手術をした時、友人のさだまさしは「宏美ちゃんみたいな発声していてポリープが出来るはずがないんだがなあ。」と言ったそうだ。

確かにのどに無理な力が加わったような歌声ではない。のどからポンと空中に投げ出された音が腹式呼吸によって増幅されて、聴衆の耳元でぱちんと弾ける花火になる。

その花火の麗しさにみんな息を飲んだ。

コンサートのタイトルにもなった「虹・・Singer・・」は彼女がこれからずっと歌い継ぎたいと言うさだまさしの楽曲で、歌を歌うという使命を背負った自分への、そして自分の歌を聞いて元気になって欲しい聴衆への応援歌になっている。

そこにはかつて歌手と言われ、上から言われた通りに歌うよりなかった岩崎宏美の姿は無い。
まさにsinger=artistアーティストであり、歌という芸術を極めて、苦難にある人を一人でも多く勇気づけたいという大きな夢を抱く夢追い人の姿があるばかりだ。


聴衆はみごとに熟年だらけだった。それから下もそれから上もほとんど居ない。岩崎宏美と一緒の時間人生を歩んで、子供も成人して家を出て、夫婦二人の時間が出来たから、どちらかに誘われてここへ来たという二人連れがほとんどだった。

もちろん九子もM氏と一緒だった。

割れんばかりの拍手を浴びてアンコール曲を歌う岩崎宏美の姿が見えなくなり、皆が立ちあがり、九子が「ああ、今日来て良かった!」と熱い思いで胸がいっぱいだった時、M氏が言った。

「いつでもざっと2割なんだよね。」

「えっ?なんの話?」

「俺さあ、いつもなんかの大会とかあるとさあ、観察するんだよね。すると大抵2割なんだよ。」

「だから何がよ!」

「座ってる一列の中ではげてる人の割合。」

「えっ?」(絶句)
(気を取り直して)案外少ないのねえ。男の人だけ数えてるの?」

「そうだよ。ちょっと薄い人や、ステッキ並べてるみたいな人や、つるつるの人まで含めて2割なんだよ。8割ははげてないんだよ。俺うらやましくてさあ。」

挙句の果てにM氏はこんな事まで言った。「岩崎宏美良かったけどさあ、俺、高橋真梨子の声の方が好きだなあ。」

素晴らしいコンサートで感無量の時に、はげの話や別の歌手の話をする人とは金輪際一緒に来たくなかったよ。(^^;;

 

 


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ぼんぼちぼちぼち

岩崎宏美さん デビュー時からとても歌の上手い歌い手さんでやしたね。
あっしは あいざき進也さんが好きでやした。
正確に言うと、今でも17才当時のあいざきさんが好きでやす。
でも、当時は誰にも言えず(何故だか あいざきさんを好きだというのはとても罪深いことのように思われて)表向きジュリーが好きだと言ってやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2011-11-14 21:41) 

リンさん

私は聖子ちゃんが大好きで、コンサートは毎年行っていますよ。
年齢層は高くなったけど、中には20代の女の子や子供もいます。
私の娘もいつも一緒に行きます。
すごくパワフルな楽しいコンサートですよ^^

思秋期っていい歌ですよね。しみじみします。
by リンさん (2011-11-14 23:15) 

九子

ぼんぼちさん、こんにちわ。( ^-^)
あいざき進也さん!可愛らしい感じの人でしたねえ。
そういえば同じような年格好で城みちるって人も居ましたよねえ。
彼のほうが長いこと出てたかも・・。

>あいざきさんを好きだというのはとても罪深いことのように思われて)表向きジュリーが好きだと言ってやした。

罪深い・・ですか?
そこまでは思わないけど、一応「ジュリー」と言っておくと無難でしたね。(^^;;ジュリーは本当に素敵でした。( ^-^)


by 九子 (2011-11-15 13:48) 

九子

リンさん、こんにちわ。( ^-^)

わあっ、いいですねえ。お嬢さんと一緒に松田聖子ちゃんの応援!

私は根性なしなのでそこまで長いことファンで居続けられません。(^^;;

聖子ちゃんも歌うまいですよね。コマーシャルで流れてた「星に願いを」なんかぞくぞくっとして、いつか行こうと思ってます。長野へは結構来てくれるんですよ。( ^-^)

コンサートの最初が思秋期だったので、圧倒されました!
by 九子 (2011-11-15 13:53) 

かよ湖

九子さん、はじめまして。
いわゆる「昭和時代の歌手のファン」っていうのが、恥ずかしい気がするのはよく分かります。
でも、私、数年前から「アイドル好き」をカミングアウトしてます。だって、それが「私」なんだもん!って開き直ったら、なんだか楽になりました。
特に堀ちえみちゃんのファンで2月にはライブに行く予定です。岩崎宏美さんとは雲泥の差の歌唱力ですが、やっぱりイイんですよねぇ。(ここだけの話です。笑)
by かよ湖 (2011-11-16 15:54) 

九子

かよ湖さん、はじめまして!
コメント頂戴して本当に光栄です。

だって、絵本を出版されたなんて!すごい!

堀ちえみちゃんですか。子沢山ってとこだけ私に似てます。(^^;;

でも再々婚されるまでたぶん子供たちの良い母親であり続けた人だろうと思うので、そこが私とはぜんぜん違います。(^^;;

当時はあんまり歌唱力って言いませんでしたよね。全体的なレベルが低かったのかな・(^^;; でもアイドルはそれで良かったんですよね。( ^-^)
by 九子 (2011-11-16 20:09) 

Cecilia

岩崎宏美さんの「聖母たちのララバイ」が好きです。
ユーミンは中高時代に文通していた男の子からテープをもらって聴くようになりました。「翳りゆく部屋」とか大好きです。
二人とも低い声なので歌う時はちょっと大変ですが、カラオケではできる限り真似て歌っています。
by Cecilia (2011-11-17 11:27) 

九子

Ceciliaさん、こんばんわ。( ^-^)

「聖母たちのララバイ」も最後の曲にふさわしくとても素敵でした!
でも当時17.8才の女の子が歌う曲じゃないですよね、この曲。
岩崎宏美はすごく背伸びして歌っていたと思います。

そうそう、「翳りゆく部屋」!名曲でした!!
下宿の窓から外を見ながら歌った記憶があります。(^^;;

ceciliaさんのカラオケ、機会があったら是非聴きたいです。
楽器をされる人は本当に皆さん声もいいから羨ましいです。( ^-^)

by 九子 (2011-11-17 16:57) 

Muran

九子さま。岩崎宏美さんのヴィデオアップ、感謝します。
ものすごい歌唱力に、昔からファンであった私も大感激です。
彼女の言葉が持つちから、すごいですねえ。
声はもちろんですが、年齢を重ねて出てくる色彩は
まさに極彩色ですね。
女性としての本当の魅力っていうんでしょうかね。
素晴らしいですね。
by Muran (2011-11-21 08:35) 

九子

Muranさん、コメント有難うございます。( ^-^)

そうそう。いつもビデオと書き慣れてたのでうっかりしてましたが、ヴィデオでしたね。vですもんね。

岩崎宏美さん、本当にあの頃の何倍も何倍も素晴らしかったです。

毎日の積み重ねが何十年経つとあれだけの差になるというのがよくよくわかりました。

前半は他の歌手の、カバーじゃなくて、カヴァー曲が大半でしたが、オリジナルよりもいいんじゃないの?という歌がたくさんありました。

それと、森公美子さんたちと被災地へ出かけられてたぶん被災所でライブをされたのでしょうか、被災所でのエピソードを披露され、歌で彼らを癒す事が出来る幸せを感じられたと熱く語られ、会場に大きな募金箱を置かれていたのにも感激! 

変な言い方ですが、芸能界という難しい世界に生きていられながら、いい大人の女性になられたんだなあと思いました。( ^-^)
by 九子 (2011-11-21 13:55) 

otopyk

このバックは山本潤子さんですねえ・・

こんなyou tubeがあったんですねえ>>!!

癒されました。。笑。。

。。otopyk 拝。。


by otopyk (2012-05-27 20:54) 

九子

otopykさん、コメント感謝です!
てっきり女性かと思ってしまいましたが、男性でいらっしゃいますね。( ^-^)
もしよろしければ、左欄上部にメールアドレスがありますので、ハンドルネームを明記していただいてメールを一本頂けませんでしょうか?
ブログに情報を頂きましたので、是非是非お願い申しあげます。m(_)m

それから、山本潤子さんって分からなかったので調べたら「赤い鳥」のメンバーだった方なんですね。声だけでわかっちゃうなんて凄いですね!
by 九子 (2012-05-27 22:32) 

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