一番になりたかった人 [<九子の万華鏡>]
★突然ですが、九子がラジオに出演します。
6月17日(日)FM Fuji(78.6MHZ) 朝9時半からの番組WEST END TALKで、イギリスを語らせたらこの人でしょう!の井形慶子先生と、雲切目薬のお話を約8分間させて頂きます。
関東地方、静岡、山梨などにお住まいの方 、よろしければ是非お聞きください。m(_)m
ヒゲの殿下こと、三笠宮寛仁(ともひと)親王が亡くなられた。
皇室の方だから、薨去(こうきょ)あそばされたというのが正式らしい。
原発の食道癌以来、実に16回も癌の手術を、しかもすべて一人の先生を頼られて命を預けられたと聞いた。
そんなところにもお人柄がにじむ。
彼は皇位継承権第6位でいらっしゃったそうだけれど、戦後皇室として初めてイギリスのオックスフォード大学に留学し、そのせいもあってか、はっきりと物をおっしゃる事で有名だった。
たぶん30年も前のことだと思うけど、かの有名な「オールナイトニッポン」でディスクジョッキーまで担当されていらっしゃったというから驚きだ。
つい先だってイギリスのチャールズ皇太子が天気予報の中継に出たり、ディスクジョッキーをされているのが話題となっていたけれど、ヒゲの殿下の方がよっぽど進んでいらしたわけだ。
昨今の皇室典範の問題でも、男子継承論をずっと主張されて来た。
とにかくいつでも菊のカーテンに覆われた皇室の中にあって、珍しく「声を出す人」であった。
その大切な「声」を、癌とその手術のために失ってしまう。
咽喉を手術で除去されたため「永久気管孔」というのをあけておられたのだろう、いつもその穴をいかにもお洒落なシルクのタイやスカーフで覆っておられた。
一目見て上質とわかる仕立ての良い背広やジャケットの襟元で、それらの小物は、特別な道具が無いと発声が出来なくなってしまわれた殿下の声の変わりに、癌と雄雄しく戦われる一人の人間の勲章として、さりげないけれども雄弁に、挫けない強い意志の力を放っているように思えた。
以前殿下が、もしも皇室に生まれていなければ何になりたかったか?と問われて、「(自分はずっと皇室の人間だったわけで)それは意味の無い質問ではあるが・・」と前置きされた上で、「兎にも角にも親分になりたかった男なので、きっと政治や経済の分野で親分になっていたと思う。」とおっしゃったそうだ。
またある時には、自分が天皇になる夢を見たと語られたそうだ。
一番になりたかった「男らしい男」を久しぶりに見た。
皇室というのは、きっとどこの社会よりも保守的で、天皇家の血統に則った優先順位があるのだと思う。
要するに皇位継承権6位というお立場では、はっきり言って天皇陛下になれる可能性は針の穴より小さいわけだから、それこそ政治家になろうが、会社を興そうが、もう少し自由に生きられるようにして差し上げる事は出来なかったものか。 もったいないよねえ。
そのニュースの次にやっていたのが、AKBの総選挙についての報道だった。
九子はAKBなんてどうでもいいと思っていたが、2番目になった渡辺麻友っていう女の子が「もしも来年もう一度総選挙があるとしたら、今度は一番になりたいです。」と答えたのが印象的だった。一番になりたかったのになれなかった寛仁殿下のニュースのあとだったから、ひときわ印象に残った。
今時の子供達が社長や総理大臣になりたいと答えなくなったと言われてからすでに久しい。最近では公務員になりたいと言う声が多いとか・・。
まさか天下りの実体まで知っているとは考えたくないけれど、嘆かわしい時代になったものだ。
九子はこの朝、いつもに増して薬局が暇だったので(^^;;、羽鳥さんの番組を見終えてから、手持ち無沙汰にいつもは見ないケーブルテレビのチャンネルまで回していると、「陸軍中野学校」という白黒時代のドラマに行き当たった。
小川真由美と加藤大介はすぐにわかったが、主人公の若者役がわからない。
後で見たら市川雷蔵と書いてあった。
市川雷蔵は九子にはほとんど記憶が無いのだが、M氏はよく見ていたと言っている。ここにもある年代の差・・。(^^;;
とにかく時代劇ばかりやっていた市川雷蔵の、これが時代劇以外に出演した初の意欲作なんだそうだ。
「陸軍中野学校」というのは日本軍のスパイ養成所として有名なところだ。
何十年か前に終戦を知らずにフィリピンルバング島のジャングルを生き延びて、最後の日本兵と言われた小野田寛郎少尉もこの陸軍中野学校の卒業生だった。ジャングルを何十年も生き延びる知恵は、もしかしたらこのスパイ学校で培われたものかもしれない。
中野学校第一期生に選ばれたのは18人の精鋭で、主人公の三好次郎(市川雷蔵)の東大を筆頭に、皆六大学出のエリート集団だ。
加藤大介演じる人情味厚い草薙中佐の下、身分を隠してお国のために大事な秘密の任務に就くための訓練を1年間にわたり続けていく。
訓練の辛さに自殺者も出た。
またある時は、バーでの情報収集の訓練中に仲良くなった女給と結婚しようとして、仲間の財布から金を盗む不届き者まで現れた。
その男は、中野学校の名誉を汚した者として処刑されるのだが、せめて自害する名誉を許されて、突き出された日本刀に自分から突進して死ぬように命令される。
よくわからない。なぜ自分で死ぬのが名誉で、処刑されるのが不名誉なのか。
これが腹キリ以来、連綿と続く武士の情けってヤツなのかな?
罪を犯したということでは同じ、結果的に死ぬってことも同じなのにねえ。
三好次郎の許婚(いいなずけ)の雪子(小川真由美)は、英国商会のタイピストをしていたが、忽然と姿を消してしまった許婚の三好の消息を探すために陸軍参謀本部に入り込む。
結局彼女は参謀本部の秘密を逆に英国側に持ち出すスパイの役目を果たすことになる。
一方三好は、英国領事館の外交電信暗号コードブックの内容入手という密命を帯び、領事館の暗号係りに近づいて、ポーカーゲームの相手をしている最中に、仲間達がまんまと暗号を盗み出す。
ところが暗号はすぐに書きかえられてしまっていて、全く役に立たなかった。
参謀本部に居る雪子がスパイを働いたことが明白になった。
「彼女は私の許婚でした。」と語る三好に、草薙中佐は「このままでは彼女は憲兵に捕まり、裸にされてひどい拷問やいたずらをされてなぶり殺しにされてしまう。せめて君が、楽に死ねる毒でも盛って殺してやる方が彼女のためではないか?」と諭す。
この質問に、なんと!三好は、2度まで「いえ、それで構いません。」と答える。
なんというひどい男だ!東大出なんて、所詮そんなもんだろう!
(東大出の方がご覧になられてたらすみません。(^^;;)
結局三度目に、三好は草薙中佐の忠告を受け入れて一年ぶりで彼女に会い、至福の時間を彼女に与えて最後に彼女のグラスに毒を盛る。
ああ、小川真由美、美しかったなあ。( ^-^)
戦時中に良く言われたという「滅私奉公(めっしほうこう)」という言葉。私を棄てて、公に奉じる。
この場合は彼女が自分の恋人であるという私情を棄てて、公の任務を全うするという事だろう。
きっと三好は「滅私奉公」を言葉どおりにしか受け取れなかったのだ。
それに比べて人情家の草薙は、最後まで情(なさけ)をかけた。
私情の「私」は、捨てよ。だが、「情」の部分にはまだ何とかする余地があるぞと若い三好に伝えたかったのかもしれない。
これが二人の、人間としての社会経験の違い、器の違いだと思う。
草薙中佐は、若い彼らをまとめる親分であり、リーダーだ。
そして思い出したのがリーダーになるための二つの条件だった。(一番下の枠の中です。)
特に最初の方が大事だと思われる。
つまり、「第一に文学、哲学、歴史、芸術、科学といった、何の役にも立たないような教養をたっぷりと身につけていること。そうした教養を背景にして、庶民とは比較にもならないような圧倒的な大観や総合判断力を持っていること。これが第一条件です。」
草薙中佐の「情」は、まさしく教養や経験による総合判断力と言っていい。
そしてたぶんこれが、決断力とか、分析力とか、情報収集力とか、そういった血の通わない能力よりも、最後の最後を決する時に一番役に立つのかもしれない。
そしてもう一つ、忘れてならないのがこれ!
エリートは「なる」ものではなくて、「エリートとして生まれる。」のであるという決定的な違い。
今考えてみると、三笠宮寛仁殿下は本当にお気の毒だった。
エリートの条件を悉く満たした方であった。
氏素性の正しさだけを見ても日本の中のエリート中のエリートの天皇家に生まれ、いろいろな世界に遊ばれてたっぷりと教養を積まれた事も、そして多分、彼であれば必ずやお国のために死ねたであろうことも・・。
それから彼は父親の役目としてこんなことも挙げていた。
「スポーツを楽しむ機会、音楽を楽しむ機会、そして友達と交わる機会を子供達に与えてやるのは、父親の役目です。」
リーダーであると同時に、父親としての役割もきちんと果たされた。
麻生太郎元首相の妹君である信子妃殿下とは長いこと別居が伝えられていて、今日の「斂葬(れんそう)の儀」にも信子妃の姿は無く、彬子女王が立派に喪主をつとめられたそうだ。
この別居は、お二人ともお身体の状態が芳しくないためだったと伺って、ちょっと安心している。
癌という業病に倒れなければ、もしかしたら皇室を離脱されてでも、日本を代表する真のエリートとして活躍されたものを・・。
天皇家の男系男子のDNAを何より尊ばれた寛仁親王には申し訳ないけれど、九子は寛仁親王が心血を注ぎ込んで、スポーツも音楽も友人達もたっぷりと与えて育てられた彬子女王や瑶子女王がお産みになるはずの男の子に期待したい。
だってそのお子こそお父君のエリートの血筋と、父君から伝授されたエリート教育の両方を脈々と受け継いでいらっしゃる訳だから・・・。
そして血筋という意味でも、教育と言う意味でもまさしくエリートの頂点にいらっしゃる皇族方が、特に皇位から遠い皇族男子の方々には是非、公式行事なんかどうでもいいから(^^;;、もっと自由に社会の中で、特に政治や経済という場において、別の意味で日本の代表として世界を股にかけた活躍が出来るように、なんとか法律を変えられないものだろうか・・・。
日本って、誰か犠牲者が出て初めて変わる国なんだよね、残念だけど・・。
弟君の高円宮さまが心室細動でテニスの試合中に急逝されて、それで日本中にAED(除細動器)が普及したように、寛仁親王がせっかくのエリートの才能を社会の中では活かしきれずに皇室の中で埋もれてしまった悔しさを誰かが慮って、何とかして差し上げて欲しいと思う。
(まあ、それで満足されてらっしゃるのなら、九子のような下々が口を出す必要は一切無いんだけど・・・。(^^;;)
ラジオでどのような話をされたのか…さわりだけでも聞かせて欲しいですね。
ブログで一部紹介なんてのはいかがでしょう?雲切目薬のファンになりそうな私です(笑)…ホント!
by 扶侶夢 (2012-06-22 00:33)
扶侶夢さん、こんにちわ。
嬉しいコメント有難うございます。( ^-^)
実は聞こえにくい周波数の特殊なラジオ局みたいで、親戚でも聞こえなかった方が多かったのです。
そこでさっき、ラジオ局にお伺いを立てましたら、「OKとは言えないけどわからないようにまあなんとか・・。」と言われましたので、このブログ上ではなく、薬局のHP上にリンクを設けようと思います。
そんな訳で、少々お待ちくださいませ。m(_)m
雲切目薬のファンになって頂けるように頑張ります。( ^-^)
by 九子 (2012-06-22 16:04)