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「名」を遺すと言うこと [<九子の万華鏡>]

連休の最中、痛ましい海の事故が起こった。

長野県上田市から新潟県の海岸へ子供連れで遊びに行った二家族。
二家族は兄弟で、従兄弟にあたる子供たち3人を波打ち際で遊ばせていた。

そこに突然大きな大きな3メートルを越える波が押し寄せる。一説によれば離岸流(りがんりゅう)と呼ばれる、人や物を沖へ沖へと追いやる波だそうだ。
若い父親は、慌てて海に飛び込んだ。

それを見ていたたまたま魚釣りに来ていた27歳の若者が、海に入ろうとする母親たちを押しとどめて、「俺が行くから」と言って海に飛び込んだ。

そして五人は、誰一人生きて戻ってこなかった。


翌日の信濃毎日新聞の朝刊に亡くなった27歳の若者のお父さんの言葉が大きく出ていた。若者は長野市民だったのだ。

「子どもたちを助けようとしたのは、よくやったと言ってやりたい。」声を振り絞るようにそうおっしゃったそうだ。

父親は奇しくもM氏と同じ年だった。27歳の息子といえば三男Yと同じか・・。


父親としたら、そう言うしかなかったのだろう。

もしも母親なら、絶対にそんなことは言わない。
「どうして死んじゃったの?そんなことしなくても良かったじゃない!そんなことしてくれるより、無事な顔が見たかったよ。」

これがきっと全ての母親の本音だ。
子孫を残すという人間の本能により積極的に与(くみ)している母親にとっては、自分のDNAを絶やすなんて耐え難いのだ。

ほとんどが80代90代のおくやみ欄にただ一人、「27歳」の文字が痛々しい。


父親は、報道によって多くの人々に息子の名と彼の功績を伝えられた事が、彼の生きた証だと思っている。いや、無理やりそう思い込もうとしている。
これはつまり日本の男の、武士(ますらお)としての生き様に通じる。

武士の一生は、太く短く・・であったに違いない。
不名誉なことは、万死に値した。

死というものの意味が、それだけ軽かった。
と、言うよりむしろ、護るべき名誉がそれだけ重かったわけだ。

そういう武士たちの世の中が長かったことが、もしかしたら日本人のモラルの高さに貢献しているのだろうか?


「御家断絶」という言葉に代表されるように、「家」を長く存続させることは難しかった。

もちろん現代と違い生まれてすぐに亡くなる子供も多かったし、さまざまな病気によって人間の寿命も短かった。
その上名誉を重んじて切腹する侍が多ければ、「家」の寿命も更に短くならざるを得ない。

当時「死」というものは、確実に現代よりも人々の近くに存在した。

そういう世の中だったからこそ、「名を遺す」ということが尊ばれたのか?
「名誉」と言う言葉に、それが如実に顕れている。名の誉(ほま)れ。

「名」というものは、命と同じだけの、いや、命に勝る価値があったのだ。


「細く長く」を家訓とする我が家は、家訓どおりにのらりくらりと時代を生き抜き(^^;;、九子で18代目に至った。
古い店を案内していると、お客様から激励のお言葉を頂く事が多い。

「どうか、頑張って長く続けて下さいね。」

いつも大変有難く拝聴しているが、これもきっと「家」が18代続くということが容易ではないことを皆様がご存知だからに違いないと思っている。

そして、たいしたことは何もやってない九子であっても、長く続いているということひとつで信用してもらえるのは、これはもう「家」のおかげ以外の何物でもない。


事故のニュースをもうひとつ。

韓国のフェリーが沈没して300人を超える人々が亡くなるという痛ましい事故からもう一ヶ月近くが過ぎようとしているのに、連日テレビは手を代え品を代えて事故関連の話題で花盛りだ。
隣の国の事故でしょ?なんでそんなに報道したがるの?それほど日本は平和で、ニュースが無いの?

報道で明らかにされるのは、韓国と言う国のあら捜し。

そりゃあ九子だって、韓国が好きかと聞かれたらう~んと考え込む。(^^;;
だけどその九子をして、ちょっとおかしいんじゃないの?と言わせるほどの報道の過熱ぶりである。


この事態を、立場を変えて考えてみたらどうだろう。

対比するのが土台無理なのはわかっているが、東日本大震災の時に原発で起こっていたことやそれに対する政府の対応の不手際なんかを、もしも連日のように韓国のテレビが報道していたとしたら・・。
やっぱりそれは日本人として面白くない。

自分でわかってることを他人から、それも敵対関係にある人間から指摘されるのは誰でも嫌だろう。

だったら国同士だって同じことだと思う。


韓国にはもう勝てないからあら捜しするしかないの? 日本って国は、そんなに落ちぶれちゃったの? 日本人って、そんなに情けない民族だっけ?


取り上げているのはほとんどが民放と呼ばれる民間放送局だ。要するにコマーシャル料で食べてるところだ。

韓国のダメなところを取り上げると、何より大事な「数字」、つまり視聴率が上がるのだろうか?
そうだとしたら、視聴者の責任でもある訳だけれど・・。

どうあっても数字を上げたい一心で数字が上がりそうな報道を・・と言うのであれば、それは放送局側のろくでもない思惑だ。


いろいろな報道には裏があり、意図があり、もしかしたら策略まであるというのは、情けないが事実のようである。


たとえば、このニュース。無料アプリで毎日配信される週刊誌閲覧サイトの見出しに載っていた。

「世界の人たちが好きなのはこの国だった。日本、韓国、中国。驚きの結果」という、まあ九子が喜んで覗きそうなタイトルだ。(^^;;

それによるとこの三カ国の中で世界の人々に好かれているのは日本がトップ。それも驚きの9割越えという結果が出ていた!

確かに最初、九子は喜んだ!
M氏に誇らしげに見せたくらいである。(^^;;

だけど、ちょっと待って!
いったいこれは、誰がどうやって調べた結果なのだろう?


最初に書いてあった。そうか!これは緊急アンケートなのである。それによると対象者は世界25カ国103人。それらはすべてそれぞれの国と特別な関係にある人々は除外した結果だそうである。

緊急アンケートなら103人でも仕方ないのか。だけど九子と違って友達多い人なら、103人くらい、友達かき集めればアンケート成立しちゃうんじゃないの・・って話である。
それにいくら配慮したと言っても、日本の雑誌社(週刊現代)のアンケートとわかった時点で、日本に好意的な答えをするんじゃないの?

このからくりがわかる前、九子はこの結果をそのまま日記に書いて「日本も大丈夫!」って言おうと思っていた。そのくらいびっくりしたし、嬉しかったのだ。(^^;;
だからこの調査の分母の異常な少なさがわかってたちまちがっかりしたし、少々腹立たしかった。

そんな緊急にアンケートしなくても、しっかり時間をかけて「本当のところ」を伝えて欲しかった。

まあでもこれは記事の最初にちゃんと明示されていた訳で、記事としては及第点だ。

ただ、九子みたいに最初記事を信じて狂喜乱舞して、サンプル数の少なさにがっかりして心不全など起こす人が居ないことを願う。(^^;;

・・・とまあいろいろ悪口を言ったが、ネットで読む「現代ビジネス」は面白くてタメになるサイトである。九子は信用もしている。
言わんとしたことは、出版社も読者も、記事の出所や取材方法にはいつも気を配って、出来るだけ正しい情報を集めたいと言うことだ。


ところでテレビの報道番組で「中国に足りないものはなんでしょう?」と聞かれて「時間」と答えた人が居て、九子は思わず膝を打った。

その通り!中国も韓国も、いろいろなひずみが出ているのは、成長を急ぎ過ぎているからだと思う。

日本がこうなるまでに、戦後70年かかっている。それでもまだまだ足りないこともたくさんある。

それが、たかだか2~30年で、中国に至ってはたかが十数年で力を付けて来た。
あんなに大きな国の全部がたった十数年で変われる訳が無いのだ。

韓国も中国と同じく、まだまだ時間が足りないと思う。国が熟するには時間が必要なのだ。

それでも、韓国の人々の努力は大したものだ。
生まれた時から競争競争と追い立てられ、膨大な時間を知識を詰め込むことや、はたまた男の子なら兵役と言う名の訓練に駆り立てられ、その上英語も堪能だ。

九子は自分が努力出来ない人間だから、努力する、努力出来る人々を尊敬する。
努力は必ず実を結ぶ。
日本がその努力と勤勉さで世界を驚かせたように、韓国という国もいづれ日本を追い越し追い抜いていくのだろう。

そうされたくなかったら私たち日本人も彼ら以上に努力しなければならない。
父母たちの時代戦後70年間の努力の上に胡坐(あぐら)をかいて、遊び呆けていたらきっと日本は滅びる。


9割とは行かなくても日本を好いてくれてる人が多いのであれば、それは即ち私たちの力量ではなくて先達(せんだち)たちの努力なのだ。
彼らがこつこつと努力し、築いて来た結果なのだ。

日本人は嘘をつかない。日本製品は優秀だ。日本の文化はクールだ。
日本に来たことも無い外国人が日本をそう評してくれる。

それが日本に冠された「名」である。
日本はただの日本ではなくて「日本」なのである。

日本が「日本」になるためには、何十年と言う先輩たちの努力が必要だった。
そしてそれを維持して行くには、それを上回る努力で私たち一人一人が結果を出すしかないのだと思う。

まずは「名」を覚えてもらって、その「名」が付くものの性能が常に一定していることをわかってもらい、それで始めて人は信用してくれてその「名」を選んでくれる。
「名」は「ブランド」と言い換えるとわかりやすいかもしれない。

信用とは、そういうことだ。長い年月をかけて、やっと培われるものだ。
そしてその長年の努力が、たった一度のあやまちによって費えてしまう危ういものでもある。

命は儚いが、「名」は長く続くことを知っていたであろう冒頭の父親の気持ちが、こう考えてみるとやっと少しわかってきた九子である。


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コメント 2

mu-ran

隣人を受け入れることは大切ですね。日本人が韓国や中国を受け入れないのは、自分のありのままの姿だからですね。
by mu-ran (2014-05-20 09:55) 

九子

う~ん。と、そうmu-ranさんにはっきり言われてしまうと、少々自分の中に反発する気持ちもあったりする九子です。あそこまでじゃあない!・・・みたいな。(^^;;

でもたぶん、誰の中にもある姿で、それを見せ付けられるのは気持ちのいいものではないのですよね。

お隣さんと仲良くするって難しいですね。今のフランスとドイツはかなり仲良くなっていると聞きますが、どうしたらそうなれるのでしょうか。
by 九子 (2014-05-21 17:28) 

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