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笹井氏の死 [<九子の万華鏡>]

今回は元気な日記を書く予定だったのだけれど、やっぱりこの事件については書かずには居られない。
理化学研究所CDB(発生・再生科学総合研究センター)副センター長笹井芳樹氏の自死についてだ。

事件の一報が入ってきた時、九子は一瞬ぼんやりしてしまった。
そして次に頭に浮かんだのは、セウォル号の海難事故が起こった時に韓国の人々が口にしたという「私たちの国はまだ三流国家だったのか?」という嘆きの言葉。
その言葉をそのまま日本の医療体制というのか、特に理研という半官半民の大会社のあまりにも稚拙な対応に対して投げかけたいと思った。

かなり年配のセンター長は、笹井氏が10日ほど前から、心身ともに疲労困憊の様子であったことを認めた。同じことは、複数の研究所員たちも口にした。
一人一人が認識していたという笹井氏から発せられていた重大な赤信号を重く受け止め、彼を休ませるなり、医者に連れて行くなり、手を差し伸べ、目に見える行動に移した人間が居なかった。
もし誰か一人でもそれが出来て居たとしたら、きっと状況は大きく変わっていたはずだ。

笹井氏もそうだが、研究チームには医者の資格を持つ人間がたくさん居たのだと思う。もしかしたら笹井氏が医師であったことが、そうでない研究者に、忠告めいた助言をするのをためらわせてしまったのだろうか。
だけど集まっているのは日本一の優秀な頭脳たちなのだから、うつ病の知識くらい最低限持ち合わせていて欲しかった。


小保方氏のSTAP論文が世に出た時、叩かれ始めた時、検証実験が始まった時、いつも笹井氏は小保方氏の傍らに居た。

ライバルの山中教授がips細胞でノーベル賞を取り大きく水を開けられてしまった笹井氏は、科学の根底を覆し、人類の夢に大きく近づくSTAP細胞の存在に賭けていたのだろう。

大変な期待を込めて小保方氏を「僕のシンデレラ」と呼んでいたという証言もある。
STAP細胞の論文に改ざんがあったことを示されても、終始笹井氏はその存在を信じ、小保方氏をかばい続けた。まるでSTAP細胞を護ることそれだけが自らの存在証明であると言わんばかりに・・。


「陽性かくにん!よかった。」 ある日の小保方氏の実験ノートだ。
こういう記述がほとんどであったなら、たった2冊!と批判された実験ノートがたとえ10冊あったとしても、実験の不正を疑われた時にデータの信憑性の証明には成り得ない事は誰の目にも明らかだ。

笹井氏が小保方氏に実験ノートを提出させることはなかった。
研究者というのは信じ込みやすい人々で、相手が同僚であれば、よもや研究者としてのスキルを欠いているなどと疑うことはないらしい。

ましてや小保方氏の経歴を見れば、錚々たる人々のもとで研究を続けている。

もう一つ。研究者というのは権威主義者で、その論文を推薦しているのが誰であるかというのがその論文の信用に大きく関わるのだそうだ。
ネイチャーに小保方氏の論文が取り上げられたのも、共著者にあった笹井芳樹という世界的に著名な名前のお陰だったと言う。

世界的な権威者バカンティ教授の下で研究していた人が、そんな稚拙なノートの書き方しか出来ないなどとは、笹井氏には想像だに出来なかった事だろう。


一方でライバルと目された京都大学の山中伸弥教授の活躍。山中教授本人だけではなく、西の京都大学に対する東の理研、もちろん山中教授のライバル笹井氏を擁する理研という対立の図式も彼を苦しめた。

辛かっただろうなあ、笹井さん。
悪意があった訳ではないだろうが、小保方さん、罪な事をしてくれたなと、しみじみ思う。


この間どこかのテレビが取り上げていたのが、アメリカで起きたいじめによって美人の高校生が自殺した事件だった。それによると、アメリカでもいじめは多く見られるのだが、それによって自殺を選ぶ生徒というのは珍しいとのことだった。


現在アメリカの大問題は肥満なのだ。
要するにジャンクフードしか摂取できない貧困世帯の問題も深刻だ。ただ、自殺という選択肢は多くは無い。
日本の何倍ものストレス社会において、しかも銃という武器が呆れるほど簡単に手に入る国において、自傷や自殺による死亡が割合で行けば日本の半分というのは驚きだ。


もしかしたらアメリカ人は、アルコールの過量摂取や無茶食いや無茶飲みという方法により、脇目もふらずに巨大なストレスを発散しているのではあるまいか?
なりふり構わずひたすら飲み、食うという行為によって、刹那的に満たされない心を満たそうとする。


それに引き換え日本人は、「命は地球よりも重い!」とか口では言っておきながら、いざとなると命よりも重いものをたくさん抱えていることに気づく。
腹切り、自決、玉砕・・と連なる何より名誉が重んじられるDNAを、知らないうちに背負わされているのではないだろうか?

暴飲暴食は卑しいこととなんとなく刷り込まれているから、日本人はきっとアメリカ人ほど肥満にはならない。もちろん体質や食事の違いもある訳だが、ある程度太ると歯止めが利いてダイエットに向かいだす。

きっと私たちはいつでも美しくありたがる民族なんだと思う。
もちろん見た目ばかりか、人を騙さないとか、道徳心が高いという、心の美しさも大切にされている。

アメリカ人のように「なりふり構わず」というのは、人目を気にする日本人にはなかなか出来ないと思う。

だけどストレス回避の選択肢は多いほど良い訳だから、それが出来ずに自殺が多い日本よりも、何でもありでも自殺が少ないアメリカの方が良い。

それから、日本で多い金銭トラブルによる自殺も、アメリカではそんなに多くはないらしい。

そもそも悪名高き「連帯保証人」などというシステムが無い。他人が借りた金を赤の他人が払わされるなんて、合理的なアメリカ人が納得するはずが無い。

自己破産を何度でも繰り返しながら、図太く生きてる人々がほとんどで、そもそもアメリカ人の思考回路に「金を返すために死を選ぶ」というのは無いのだそうだ。


こうしてみるとアメリカと言う国に自殺が少ないのは、常に敵に囲まれて自分の身を銃で必死に護りながら生きて来た歴史と無関係ではないと思う。
なりふり構わず、とにかく生きること!それが彼らの正義だった。

海に囲まれた平和な島国日本では、生に執着することが大罪だった時代もあった。そういう時代が長かった。


笹井芳樹氏は、誰がどう考えても重度のうつ病だった。自死というより、病死と言う方が正しいかもしれない。ただ、いくらでも打つべき手はあった。
彼はずっと辞意を表明していたが受け入れられなかった。最後の10日間は、そんな状態でも毎日出勤していたという。

一方の当事者のバカンティ教授は1年間の休養を申し出て受理された。


やり直しが利かない社会と、何度でもやり直せる社会。
その差はあまりにも大きいと思う。


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sakugii

ご訪問にコメントありがとうございます
残念ながら(笑)佐久の出身ではないのですが・・・
松本市には時々遊びに行ってましたよ
<(自分がまだ「婆さん」とは言いたくないので・・。(^^;;)>
もちろんです^^
私も爺と言ってはいますが、頭の中は30代のつもりですよ(笑)
無理せず、気楽に、楽しい事を考えながら・・・・
ストレスフリーを心がけております^^
また寄らせていただきます。
by sakugii (2014-08-23 11:44) 

九子

佐久のご出身ではなかったのですね。ちょっと残念。

>私も爺と言ってはいますが、頭の中は30代のつもりですよ(笑)

素晴らしい!私の頭の中は、年相応です。(^^;;

ストレスフリーも大事ですね。
よろしくお願いします。( ^-^)
by 九子 (2014-08-24 10:14) 

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