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オクトーバフェストと嫁姑 [<九子の旅日記>]

前回より続く

ミュンヘン行きの電車の中には、九子の目にはチロル地方の民族衣装を思わせる色鮮やかな衣装を身にまとった集団が乗り合わせた。
ここまで来る街中でも、また一人、また数人と目にした人々だ。

民族衣装と言っても日本の着物ほど格式ばっては居ない。どちらかと言うと浴衣みたいな感じだろうか、子供が着ても汚れたらすぐに洗濯が出来る薄っぺらな化繊のブラウスとスカート。男性用は半ズボンとシャツにハイソックスと帽子がセットで、駅前で数十ユーロで売られていた。

...と九子が下手な説明するよりも、こちらをどうぞ! (九子が見たのは安っちい方の衣装だったらしい。)

彼女たちはあと2日間で閉幕するミュンヘンのオクトーバーフェストに繰り出すためにこんな格好をしていたのだ。
そしてまあ、この女性たちがまた良くしゃべるったら!
電車に乗ってる間中、ずっとしゃべりまくっているそのエネルギーたるや大したものだ。
女性たちはこんな風に、世界中どこでも強くてエネルギッシュだ。(^^;;

オクトーバーフェストとは何ぞや?
ちょうどその時期に重なるから見ておいたほうがいいよと、M子は友達に言われたそうだ。

九子はまったく何の知識もなく、とりあえず収穫祭みたいなものだろうと思い、収穫祭をミュンヘンみたいな大都市でするのかなあ、おかしいなあと思っていた。

結局のところはビール祭りだった。ジョッキの大小は問わずすべて一杯10ユーロ!というところで、ケチな九子は気持ちが萎えた。
敬虔なカソリック教徒のA君も否定的だった。「一杯10ユーロなんてお金を捨てるようなもんだよ。だから僕も行かないよ。」

我が家はみんな酒に弱い。つまり酒に関する知識も乏しい。ミュンヘンがビールで有名だったなんて、九子は始めて知った。(^^;;

100cc、いや50cc以上のアルコールが目の前のグラスに注がれると、どうやって身体の中を通過させようものか大いに逡巡したあげく、哀れビールの快活な白い泡も、シャンパングラスの底から立ち上る光輝く無数の気泡も、いつの間にか視界から消え去ってしまって、あとにはどんよりと物言わぬ液体がグラスのふち近くまで残るばかりだ。

や~めた!オクトーバーフェストなんて! ゆっくりホテルで寝ていよう!
・・と言えたのは、九子があくまで一人でドイツに来た場合。

M子はこう言い張った。「ママ、だってせっかくドイツに来たんだよ。もったいないじゃん!時間が!」
そして結局九子とM子は夜の街に繰り出したのだ。

考えてみると若いM子が時間を惜しみ、人生の残り時間の少ない九子が惰眠をむさぼろうとするというのもちょっと変な話なのではあるが・・。(^^;;

九子とM子の確執・・とまでは行かない小さな諍いがはじまったのはたぶんこの夜からであった。

地図の読めない九子と、必死で読みたがるM子。
頼るばっかりの人間に、頼られる側はたまにイラついて怒りをぶつける。
「こっちばっかり頼りにしないで、たまには自分で動いてみて!」

ところが、地図が読めない九子は、とんちんかんな方向に向かうばかり・・。

「あなたの最大の利点は私より英語が出来ることなんだから、誰かに聞いてみてよ!」
と言われても、こう酔っ払いばかりだとねえ・・。
ちなみに彼女が九子を「あなた」と呼ぶ時は、たいてい機嫌が悪い。
(^^;;

結局、幸運にもなんとなあく辿り着いた会場で、九子とM子はその夜、入場料以外1円、いや1ユーロも使わなかった。

人で満杯のホールの中ではドイツ人たちが酒盛りの真っ最中なのだろう。
実は思い切って入ってみたら海の向こうから来た東洋人という事で大歓迎された・・と、叔父との思い出を嬉しそうに語る叔母の話には大いに心動かされたが、いかんせん、ビールを飲むという苦行を思うと二人とも足が進まなかった。

そうそう。会場には数々の仮設の遊具がたくさん並んでいて即席の遊園地になっている。
電飾に飾られて夢のように美しいが、酔っ払って絶叫マシンみたいなものに乗って果たして心臓は大丈夫なのかと、一応医療人の端くれと卵の二人はいささか気懸かりになる。

いずれにしても仮設なのだ。あと一日したらもうこの場には無くなってしまうのだ。
そう思うと、是非とも乗っておかなくちゃ!と思うか、仮設なんかで大丈夫なのかなあ?と思うかで答えが分かれる。
そして九子とM子はとにかく乗らなかった・・・という訳だ。

九子とM子は何より年が違う。
今から考えると、M子が本当はこうしたかったのに、九子に遠慮して出来なかったって事、無かったんだろうか?
九子はとりあえず、大した未練もなく大いに満足して帰って来たのだけれど・・。

例えばオクトーバフェストの大観覧車。とてもきれいで、考えてみたらあれだけは乗ってもよかったかなあと今になると思う。
M子は乗りたくなかったのかな?

思えば一人で行こうとしていた九子に「九子さん一人じゃ心配だから、Mちゃんお目付け役に連れて行けば?」と言ってくれたのは長女N子だった。
そしてそれは、今にして思えば非常に有難い忠告だったのだ。

九子一人では集合時間に遅れてバスに乗り損なったり、行けども行けども目的地に辿り着けなかったりする心配があった。
M子がついていてくれたおかげで、全ての行程を滞りなく終えることが出来た。

だけれども、眠たい時に眠り、食べたい時に食べ、休みたい時に休む・・という自由は、一人の方が格段に謳歌出来たはずだった。まあそれが、「ドイツまで行って、寝てばっかりだったの?もったいない!」という辛口評価を受けようとも・・。(^^;;

いつでも一人の世界に住んでる九子は、誰かと一緒の煩わしさに慣れていない。
たとえそれが実の娘と一緒の旅であっても、皆無かと言えば嘘になる。

それでもやっぱり、娘というのは特別だ!

「娘と二人は気楽でいいわよ!」と何人もの人に言われたが、まったくもってその通り!
気まずさや言い争いがあったとしても、次の日になるともう都合よく忘れて後に残らない。

ずっと長い間一緒に手の内を見せ合って暮らしてきたからか、とにかく気を遣わずに済む。

きっとどんなにいいお嫁さんでも、実の娘みたいになるのは、時間がかかるんだろう。
気の抜き方がわからずに、必要以上にお互い気を遣い合って疲れてしまうのかもしれない。

敢えてお嫁さんと二人だけで旅してみるのはどうかな?
言葉の全く通じない場所で一蓮托生を経験すれば、距離はぐんと縮まるのでは.・・・・?
(残された舅と婿どのは生きた心地がしなかろうが.....(^^;)

そう言えば何の話からだったか、日本では嫁、姑の大問題があるという話をしたら、A君の家族中「それ、こっちでもおんなじ!おんなじ!」と大合唱されてびっくりした。
欧米ではお姑さんとは別に住むことが多いから、そんな事は問題にならないとばかり思っていた。

人も羨む一番の美人と誉れ高かったオーストリアのエリザベート妃ですら、自分の子供をお姑さんに取り上げられて(当時はきっとそういう制度だったのだろうが)恨んでいたらしい。
彼らの世界では日本人みたいに「互いに気を遣いあって疲れてしまう」なんて事は無かろうが、意見のぶつかり合いが確執を生むのだろう。

いづれにしても嫁姑問題は、洋の東西を問わず、過去から現在にまたがる普遍的な大問題であるらしい。(^^;;


M氏がよく「九子もたまには友達とどこかへ旅行でも行って来たらどうだ?」と言う。

世の奥様方ならこれ幸いと、お友達を募って意気揚々と出かけられるに違いない。

ところが友達少ない九子の場合、一緒に居て一番気楽なのは、 気がつけば 毎日顔を付き合わせているM氏、それっきゃない!と思うに至っている。

何しろ文句を言わない。怒らない。こっちの好きなところへどこでも連れてってくれるアッシー君。地図にはめっぽう強い。ビンボーなのに金離れがいい。
.......と来れば、こりゃあもう最強でしょう(^^;

えっ? 言いませんよ、言いませんとも。口が避けても、そんな事、M氏には....。(^^;;

2、3回で終わらせるはずのドイツ旅行日記がこの分では遅々として進みそうもないので、次回はもう少し急ぎます。m(_ _)m


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コメント 4

伊閣蝶

オクトーバーフェスト。
何とも楽しそうな雰囲気です。
かりそめの遊園地というのも何とも趣がありますね。
しかし、「ジョッキの大小は問わずすべて一杯10ユーロ!」とはさすがに高い!
でも、私などはビールに目がないので、キットそれでも飲んでしまうことでしょう。
それから、娘さんと九子さんのとても温かなご関係に感動です。
そこから導きだされる嫁と姑のお話。
なるほどなあと感じました。
私などが気付かぬところで、家内などはいろいろと気を遣っているのだろうと、改めて感謝の念を強くした次第です。
by 伊閣蝶 (2014-11-08 23:18) 

九子

伊閣蝶さん、こんばんわ!
びっくりしたのですが、オクトーバーフェストで検索すると、日本各地でこういう名前のついたビール祭をやっているんですね。ハロウイーンとおんなじでそのうち定着するかもです。

でも飲めたら楽しいだろうなとは思いましたよ。( ^-^)

嫁姑の話はやっぱり女性ならではですよ。伊閣蝶さんのように気がつかないとおっしゃりながら、奥様に感謝していらっしゃるのが一番賢い旦那様だと思います。( ^-^)

娘と私はそんなに言って頂くほどのことではなく、まったくもって当たり前の母娘だと思います。まあでも、旅行の連れ合いとしてはM子でよかったかもです。N子と二人なら、二人して迷っていたに違いありません。(^^;;
by 九子 (2014-11-10 22:27) 

富山

初めまして!
これから拝見させていただきます(^-^)/
by 富山 (2014-11-11 22:18) 

九子

おーお、富山さん!
お初なような懐かしいような・・。(^^;;

こちらのメルアド、もしかしたらご存知かもしれませんが、左欄の真ん中あたりに小さく書いてありますので、是非一度メール下さいませ。こちらからお知らせがありますので。( ^-^)
by 九子 (2014-11-12 00:44) 

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