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九子家の年賀状2015・・調剤事故、調剤過誤 [<薬のこと、ダメ薬剤師のこと、家のこと>]

    ・・・・・迎春・・・・・

最後の娘の学費を払い終わりやれやれと思ったところへ地震が来ました。屋根や壁などの修理には、娘が二人、一緒に留年したほどかかりそうです。お金には縁のない我が家ですが、幸いなことに耐震工事をして貰った直後で、家が潰れずに済んだ幸運を噛み締めています。
3月の国試が無事済めばいよいよ5人とも社会人。社会人という看板のせいで、今まで親の権威を振りかざして好き勝手言っていたのに沈黙せざるを得ず、ストレスばかりが溜まります。
賢明な皆様は、きっと麗しいお正月をお迎えのことと存じます。今年もどうぞよろしく。(笑)
       
       平成27年 元旦


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今年はちょっとお正月に似つかわしくない話題となりますがお許しください。
事の発端は帰省した長女が何気なく発した「調剤過誤」という言葉。

おおみそかに帰省した彼女は、なんと!四国から15時間かけてバスでの帰省と相成りました。
なんでも飛行機の予約を早めに申し込んだら「一ヶ月前にならないと予約は出来ぬ。」と言われ、それを信じ込んで1ヶ月前に行ったらもう売り切れていたのだそうです。

ならば新幹線!と考えるのが普通の人。節約家の彼女は迷わずバスを選び、結局新幹線とあまり変わらぬ金額を支払った上、疲れ切って帰って参りました。それがN子という娘です。要するに要領が悪いのです。いや、彼女の辞書に効率と言う文字はないみたいです。九子と違ってひたすら努力し、報われないとわかっていても最後まで頑張れる愛すべき娘なのです。

彼女は新卒の薬剤師の卵。確か10月頃から夜勤が始まり、もうそろそろ10回ほど任されているらしいのですが、その度に上司の先生が心配そうに見回りに来るという、まあ言ってみれば何やらやらかしそうな、そこだけは九子に似てしまったのか、気の毒な生まれであります。

そして長野に帰る直近の夜勤で、彼女は「調剤過誤」を実際にやらかしてしまったそうなのです。

「えっ?何やったの?一体何と何を間違えたのよ?」と畳み込む九子に、彼女が言った一言は、たぶん九子のようなダメ薬剤師でなくとも、普通の薬剤師さんがたですら「・・・?????」とクエスチョンマークがいくつも付く品目でした。

「葛根湯だよ。」

「えっ?葛根湯??」

そう。漢方薬の誰もが知ってる風邪薬。 「えっ?モノが葛根湯で、それをどうやったら調剤過誤が起きるわけ?」という反応の方がむしろ大正解。(^^;;


調剤過誤と言うのは、Aという薬品と間違えてBという薬品を渡してしまったというのが一般的ですが、彼女の場合は葛根湯の1袋=大人量を12歳の子供さんにお渡ししてしまったということで、もちろんこういうのも調剤過誤に含まれます。

まあ彼女の肩を持つ訳ではないけれど、実は漢方薬製剤の量というのは新薬と違ってかなりあいまいで、薬剤師さんたちもたぶん新薬の風邪薬に比べたら、あまり厳格に考えない人が多いと思います。
その上漢方薬のエキス剤は、本来の漢方煎じ薬の半分もしくは三分の一くらいしか効かないとも言われ、そんなこともあって「調剤過誤」という範疇からは遠いところにあると思われることが多いのです。

その患児さんのお父さんはパンチパーマの怖げな人で、N子はそのお父さんからも怒鳴りつけられた挙句、上司の先生にもしこたまお説教をもらったらしいです。そして彼女は怖さと申し訳なさと切なさで心臓が踊り出しそうだったと言っていました。

九子ならたぶんしくしく泣きじゃくりながらママに電話して慰めてもらっていたでしょうが(自分をよ~く知っていた九子は当然、病院などへは勤めませんでしたし、調剤薬局もそういう状況に至る手前でさっさと辞めてしまいましたが。(^^;;)、彼女は親に弱みを見せないタイプです。
N子の場合そこに至る前もいろいろあったらしいのですが、九子に電話して来ることはありませんでした。
頼っても仕方の無い親だと諦めているのでしょう・・。(^^;;


おおみそかその話題で持ちきりだった我が家が正月を迎えた早々、元旦の新聞の片隅に本当に深刻な調剤過誤、というより調剤事故の記事が載りました。

大阪の病院、25歳の女性薬剤師といえば、もしかしたらN子の同級生の可能性だって充分あります。
その上次女M子も4月から、市は違うけれど大阪府の病院に就職が決まっています。
とても他人事とは思えませんでした。

その薬剤師さんが癌で入院中の60代の男性に、指示された抗生物質の注射薬と間違えて隣の棚にあった筋弛緩薬の注射薬を投薬袋に入れ、その投薬袋に書いてあった抗生物質の名前だけを見て看護師さんが抗生物質と思い込んで患者さんに点滴投与し、患者さんが亡くなってしまったという悲しい事故でした。

若い薬剤師さんが間違いに気づいたのは、2時間後同じ抗生物質注射薬が次に出た時だったそうですが、その時にはもう患者さんは心肺停止状態だったそうです。

このあたりも悲劇です。
2時間後に気がついて申告したのだから、もしもそんな筋弛緩剤などという恐ろしい薬ではなく普通の薬であったなら、そこまでの大事に至らないうちに対処できたはずなのです。

薬局で彼女は一人だったのでしょうか?年末で忙しかったのでしょうか?
本来なら少なくとももう一人の薬剤師が監査しなければならないはず・・。

そこは救急病院でした。救急病院などに就職しようとする薬剤師さんはきっと優秀な薬剤師さんです。
頭がいいだけではありません。ガッツがあって、使命感に燃えて、肉体的にも強靭な理想家肌の頑張りやさんのはずです。調剤監査(出来上がった調剤に間違いが無いか二人以上でチェックする)がどんな形で行われていたのかはわかりませんが、もしかして一人で任されていたのだとしたら(暮れも押し詰まった29日です。)、彼女は日頃の実績を評価されて、新人ながらその重責についていたのだと思います。

これが九子や、九子よりは大部マシでもN子みたいな薬剤師であったなら、よほどしっかりとした監査係の薬剤師さんをつけとかないと危なっかしくてやっていられませんから。 (^^;;)

誰にでもある単純な「渡し間違え」という行為が人の命を左右してしまう。そういう現場にいるのが病院薬剤師です。

薬剤師のうちでも新卒薬剤師が総合病院に就職したがるのは、もちろん全ての科の薬を扱い薬の知識が増えるという理由の他に、今回のような注射剤の処方箋も含めて多様な処方に触れられるので、要するにどこに行っても使ってもらえる薬剤師になれるというメリットがあるからだと思います。

新卒の、N子と同じ3月に希望に燃えて卒業したはずの若い女性薬剤師さん。
あなたは本当によく頑張って来られたと思います。

九子が同じ立場なら、いや、万が一九子にあなたと同じ能力があったと仮定しても、あなたと同じことはきっと出来なかったでしょう。

たった9ヶ月で全ての薬を覚え、その薬が棚のどこにあるのかを把握し、年末の混雑の中を忙しく一人で調剤をこなし、二時間後にさっきと同じ抗菌剤の注射の処方箋を受け取り、その棚から注射剤の瓶を取り出した瞬間に、自分が2時間前に抗菌剤と思って取り出した薬が、実は別の棚にあった、しかも絶対に間違ってはいけなかった筋弛緩剤だったと気がつくなんて!!

それだけあなたは大変にしっかりとしていらっしゃいました。きっと緊張の糸を張り詰めていらっしゃったんだと思います。
九子だったら自分がいつ、どこから、何を取り出したかなんて、正直覚えていられません。ついさっきの事でも忘れてしまいます。(だから薬剤師には不向きなのですが・・。)

普通だったら、たった二時間のうちに薬一つでそれほど深刻な変化が身体に現れるはずはありませんでした。いくら60代の癌患者さんであったとしても・・。
それがたまたまあなたが手を伸ばした先にあった薬は、筋弛緩剤という殺人鬼も用いる毒薬だったのです。

この当たり、病院には猛省を望みたいところです。毒薬は厳重に、まったく別の貯蔵所に保管する。日頃の利便性は多少失われても、今回のようなひどい調剤過誤が起きるよりはましではありませんか?
それから、忙しいからと言って新卒の薬剤師一人に調剤を任せる・・というのはいくらなんでも酷ではありませんか?

メーカーさんには毒薬の注射剤のボトルは黒色なりの色つきプラスチックボトルにして頂く。そうすれば万が一薬剤師が間違えても、現場の看護師さんが容易に気がついて下さるのではありませんか?

25歳の新卒薬剤師さん、あなたはまだまだ将来のある身です。
もちろんあなたの心に今回の事故が与えた打撃は計り知れないでしょう。

患者さんに何事も起きなかったN子ですら、ぶるぶる震えるほど怖かったというのだから、あなたが今もただ中にある恐怖や衝撃や自責の念の大きさはいかばかりでしょう。 本当に心が痛みます。

でもあなたに敢えて申し上げたいと思います。

後生だから生きてください。精一杯生きてください。

あなたが死んで罪を償おうと考えるのは、今の時点では正しいように思えるかもしれませんが、あなたを一生懸命に育てられたお父様お母様に、それはそれは罪深いことです。

あなたが死んでも誰も救われません。それによって亡くなった方が還ってくる訳でもなければ、ご家族やご友人や、死んだあなた自身の行く末も含めて、不幸が大きくなるばかりです。

だから何があっても死んではいけません。 

あなたは自分で選ばれて救急病院の薬剤部に就職されました。薬剤師の中のエリート中のエリートです。

それだけの志を持って、夢を持って、希望に燃えて就職し、そして誰よりも早く一人前に調剤が出来るようになって、病院にも認められて一人で任されて、あなたも、あなたのご家族もきっと誇りに思い、喜ばれていたはずです。


そんな立派な薬剤師さんには、夢を捨てて欲しくありません。あなたの能力を活かしきって生き抜いて頂きたいと思います。

考える時間はまだまだたくさんあります。しばらくはご家族の中でゆっくりと休まれるのがいいかもしれません。
一年でも二年でも三年でもいい。
ゆっくりと休まれて、また調剤がやりたくなったら、出来るところから始めてください。薬剤師は一生の資格です。

今回のトラウマが大きくて、病院や調剤薬局で調剤なんて真っ平!と思われても、薬剤師はつぶしの効く資格でもあります。
保健所に勤める、薬問屋に勤める、漢方薬局へ勤める、製薬会社の研究所へ勤める、いくらでも選択の余地はあります。

あなたが6年間かかって薬科大学で学ばれた知識の全てを社会に還元してください。

決して嫌がらせに屈しないで下さい。日本人はこういう時、思いもかけない闇の顔を、集団の力を借りて見せ付けることがあるようです。

あなたに起こった事は、うちの娘たちにも、その級友たちにも、いや、全ての薬剤師に起こり得ることなのです。

あなたが手にしたのがN子の時のように葛根湯みたいな薬だったらどんなに良かったでしょう。

たいていの薬剤師さんは生涯で何回も調剤事故にならない程度の間違いを繰り返しています。「ヒヤリ、ハット事例」と言うそうです。その度に上司に注意され、バツの悪い思いをして、次は気をつけようと思い、明日につなげているのでしょう。 

かく言う九子だって、いったい何度やらかして処方医の先生に謝りに行ったことか。(^^;; 

処方箋枚数、わずか1ヶ月に一桁、二桁!のわが薬局にして、この体たらく!!  九子が処方箋調剤を極力避けている理由をご理解頂けるでしょうか?

誰にでもある「取り違え」という単純な行為が、人間の命を左右してしまう。人を助けるはずの薬を渡したはずだったのに、間違って人の命を危険にさらしてしまう。
薬剤師と言う仕事は、特に病院の薬局というところは、まかり間違うとそういう怖い場所にもなり得るということを、今回の事件で娘たちの心にも深く刻み込まれたようです。

これ以降、さまざまな不備が改善され、何より日本中の病院でシステムが見直され、もう二度とこんな悲しい調剤事故が起きないよう切に祈ります。

今回の事故は病院のシステムが原因の事故です。

薬剤師さん一人の問題ではありません。

亡くなられた患者さんとそのご家族には本当にお気の毒でした。重ねてお悔やみ申し上げます。


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ぼんぼちぼちぼち

あけましておめでとうございやす。

耐震工事しておかれてほんとに良かったでやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-01-08 12:37) 

九子

ぼんぼちさん、こんばんわ。
こちらこそ今年もよろしくお願いします!( ^-^)

耐震工事、最初はこんなパネルを何枚か入れるだけで本当に意味があるのかしら?と思っていたのですが、もしやっていなかったら?と思うとぞっとしています。

良かったあ~!!
by 九子 (2015-01-08 22:43) 

youzi

薬、私は合わないものもあるので、
市販のものは、ほぼ飲めません。
咳が出て、とまらなくなり、薬をもらいましたが、
咳は止まらずでした。
同じ咳でも、原因によって使う薬が変わってきますが、
医師は咳だけで、咳止めを出し、症状が喘息に近かったので、
喘息の薬も出した。
別の医師は、喘息の吸入を持ち歩いた方がいいとも言い出し。
実は咳の原因は鼻水が出る事で、鼻水を止めたら、咳も治って行くんです。
内科医はそれが分からず、誤った薬を出していたんです。
耳鼻科の先生が原因をはっきりしてくださったのですが、
この先生は大学病院で全部の科を見れるようにと言われ、診察を
していたそうです。
科毎に専門で見れる事も必要ですが、まずは総合的に診ることができる
先生に診てもらえるのがいいなと思いました。
by youzi (2015-01-09 07:10) 

九子

youziさん、お返事遅れてすみません。

>科毎に専門で見れる事も必要ですが、まずは総合的に診ることができる
先生に診てもらえるのがいいなと思いました。

良い先生に巡りあわれて本当によかったですね。
上記、youziさんのおっしゃることは正しいと思います。
でもなかなかそういう先生方が多くないのも事実ですよね。

葛根湯は弱い・・みたいなこと申しましたが、実は漢方薬の煎じ薬は、よく漢方薬を勉強していらっしゃるお医者様なり薬剤師さんなりに見てもらうと、とても良く効く場合があります。

と言うのは、漢方薬は各部位だけではなくて、身体全体を総合的に治していくからです。
そういう意味では、一つの症状の根本原因を探し出して元を直すので、身体全体が総合的に良くなります。

ただ、漢方薬は高いので、全体から言うと売れなくなっています。専門に勉強する薬剤師さんの数も、教える先生の数も減ってしまっています。

結局は短い間に、ほどほどの値段で治してくれる病院の先生が結局たよりになる!ということでしょうか。
by 九子 (2015-01-12 22:41) 

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