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シクラメンの話 [<薬のこと、ダメ薬剤師のこと、家のこと>]

お世話になった方からサプライズでシクラメンを頂いた。
長道中を耐え抜いて、花も葉っぱも堂々として自慢げだ。
そんなところが、ちょっと星の王子様のバラの花を思わせた。
行き届いた花屋さんから送られて来たのだろう。育て方の説明も丁寧で、何よりシクラメン救急便なる電話番号まで書かれてあった。

九子はご存知の通り怠け者である。
我が家に来た花と言ったら、こんな運命を辿るのがせいぜいだった。

皆さんは花を上手に育てる秘訣と言ったら何を思いつかれるだろう?

温かい温度と太陽の日差し、そして上手な水遣り。
九子もそれしか思いつかなかったが、今回もう一つ条件があることに思い至った。
それが、花の素性である。

産地はどこか?・・・などという事はこの際一切関係ない。
問題はその花がどんな経緯で九子の元へ届いたかである。

九子が自分で買う花は仏壇用くらい。
他に九子が貰って来るのは葬式の花くらいか・・(^^;;

今回のように九子が勝手に恩人と思ってるような人から頂くと、俄然大事にしなくちゃ!という気持になる。
要するにモチベーションが上がるのだ。
ふだんなるべくカタカナ言葉を多用しない主義の九子がモチベーションと言ったのには訳がある。
父が亡くなる2年くらい前のメモが最近出てきて、そこに「モチベーションが上がる」という一言が書いてあったのだ。
これを書いた時父は85歳くらいだったろう。その年まで彼にとっては耳慣れない言葉をメモしては学習していたかと思うと、怠け者の遺伝子は父譲りと思っていた九子は肩身が狭い。

そんな訳で九子の中でシクラメンは物凄く気になる存在になった。

九子は迷わずシクラメンを薬局の目立つところに置いた。
この場所の難点は太陽の日差しが差し込み難いというところで、代わりと言っちゃ代わりに蛍光灯とLEDの混合灯が当たっている。
その上冬の長野だから温度もかなり気になるところだ。
だけど人目を引く花だからやっぱり大勢の人に見てもらえるところに置きたいよねえ!
 
説明によるとシクラメンは17度くらいまでの温度で管理することが大事で、もちろん氷点下は論外だが、21度を超える温度にも弱いのだそうだ。
 
早速九子はいつもよりもずっと長いことストーブをつけておくことにした。
お客様がいついらっしゃるかわからないわが薬局では、一日中ストーブが焚かれない日も結構あった。
そしてお客様のお顔を見てからストーブをつける。(^^;;

古い石の床、しかもガラス戸一枚隔てれば氷点下だから、温度はふだんで5、6度くらいか。
だからガスストーブひとつで21度になることはまずあるまい。

おい、シクラメン君、聞いてるかい?
君は我が家ではお客様以上の結構な厚遇なんだよ。

ところが一週間ほど経ったある日、九子は卒倒するかと思った。
昨日まで元気だったはずのシクラメンの花が、突然しなっとと言うか、くたっとと言うか、全部の茎がしなだれて葉っぱの上に被さっている!!
葉っぱも心なしか柔らかい。説明書に「葉っぱが柔らかいと元気が無い。」と書いてあった意味がようやくわかった。

こういう時の救急ダイヤルだ!
と思ったが、なぜだか通じない。

ならば、この手しかない!「シクラメン ぐったり」でネット検索。

本当に今はいい世の中だ。
書かれていたとおり、水をたっぷりとあげて、花や茎を補強するようにA4用紙を縦半分に折ったものでぐるりとあてがってやり、花をその上にのっけるようにして30分!
見事花は嘘みたいに立ち上がり、柔らかだった葉っぱもパリッとした堅さに戻り始めた。
いやあ、花って凄いもんだねえ。見事だねえ。
でも本当によかった!復活して・・・。

結局「毎日の水遣りは根腐れを起こし失敗の元だから、水遣りは二週間に一度、その時は水をたっぷりと。」というのを信じる余り、我が家に届くまでに何日かかかっていたのを計算に入れずの大失敗だった。

帰って来たM氏にこの話をすると、「えっ、紙?そんな事しなくとも、水やっとけばちゃんと茎が立つぞ。」
こういう豆知識はあんまり有り難くない。せっかくの苦労に水を差された気がする。(^^;;

彼んとこは斜陽の西日の良く当たる天然の温室みたいな環境で、何をしなくとも花がとても長持ちするらしいのだ。
「シクラメンだって半年も咲いていて、中には5年連続のつわものもあるぞ!」

九子は意を決した。よ~し、九子だって花一つも枯らさないぞ〜。
考えてみると九子は不可能を可能にしようとしていたらしい。
どんな花だって枯れる時は枯れるのだ。そして次の蕾が早く開くように、枯れた花は潔くむしってやらなきゃいけなかったのだ。
それを九子は未練がましく、枯れたままにしておいた。

それがいけなかったのだろうか。またどんどん花に元気が無くなる。
花の先っぽのほうが黒くなってきたり、そういう花がくしゃくしゃになって早く枯れたり、つぼみのまま立ち枯れたり・・・。
 
いつの間にか花は全体の半分になっていた。
それと共にぎっしり詰まった葉っぱの中の方が痛んでる所も見つかった。
 
M氏の話を信じ込んで5カ月持たせる意欲満々だった九子は頭を抱えた。
シクラメンを抱えて、オロオロして毎日薬局と隣の古い店との間を行ったり来たりした。
古い店の方が確実に日差しは良く差し込む。ただ気温はストーブに遠い分だけ低いだろう。

とりあえず元気が無いのは病気かもしれないから、日光消毒を兼ねて古い店でガラス越しの太陽の光を当ててやろう。
もちろん一番日に当てるべき場所は、葉っぱが密集し過ぎて下の方が腐りかけちゃってる所だよね。

ってな訳で、通りすがりに古い店を見ている通行人の方は、「何だ? シクラメンの花じゃなくて葉っぱがこっち向いてるけど、葉っぱなんか見たくもないぞう!」
と思われてたことだろう。

その手当も目立った成果が上がらずに悶々としていた頃、思いがけず恩人の奥様から電話がかかった。
普通の人ならそんな状況でシクラメンの話などしないのだろうが、九子は違った。
と言うか、気がついた時には口に出てしまっていた。(^^;;
ところが彼女は思いがけない言葉を口にした。
「あら、うちのなんてもう花が一個もないわよ〜。つぼみだって開かないまま枯れちゃったみたい。やっぱり寒さのせいかしらねえ。」

何がホッとしたって、あんなにホッとした事はない!!
 
今回の教訓!
「花はいつか枯れるのだ!」

この言葉がデリケートだったお年頃などもうとっくに過ぎ去り、毎日これでもかこれでもかと言うほど年齢を身体で実感している九子のはずだったが、いつまでたっても無駄な努力を続けていたってことかしらねえ。
 
さ~て、本当に枯れる、いや悟れるのはいつでしょう。(^^;;

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