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ONE OK ROCK とTaka [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

確かあれは三男の結婚式の日。軽井沢のホテルに向う車の中でのことだ。子供たちが一堂に会すのは、もうこんな機会だけかもしれない。

次男が持って来たポテトチップスの筒型スピーカーで、次女が一心不乱に音楽を聴いている。ポテトチップスを10缶買うともらえたらしい。
おもちゃみたいなスピーカーの性能にも興味が湧いて、ちょっと聴かせてもらった。

 
流れて来たのは美しい英語。中性的な声の主がのびやかに歌っていた。ああ、綺麗な声。あれ?そのうち日本語。えっ、この子いったい何者?
「これ、誰?」と娘に聞くと、「one ok rock のtakaだよ。ほら、森...なんだっけ? ママたちの頃の有名な歌手の子供。」

ははーん。ピンと来た。
森進一と森昌子の息子だ。昔確かジャニーズに居たけど、勉強を優先するとかで辞めた子だね。
ネット画像で見るtakaは、父親の口元と母親の目元をそのまま映しこんだような顔立ちだった。

次女の感性はなかなか鋭い。彼女がファンになるのは、決って実力があってビッグになるグループばかりだ。

いや、one ok rockはもう十分過ぎるほどビッグだった
。アメリカ、ヨーロッパのツアーで、一年の半分は日本に居ないらしいし、ワーナーブラザーズという大看板がアメリカのスポンサーだそうだ。

takaの英語は専門家も絶賛しているらしく、100%ネイティヴの発音と言われている。

ヴォーカルの英語力に関してはその巧拙が海外進出を左右するようで、かのX-Japanが日本だけで留まった理由もその辺のところらしい。

takaは所謂帰国子女でも、インターナショナルスクール出身でもない。
幼い頃から父親の歌ばかりを聴かされ続けて育った環境と、プロの演歌歌手二人のDNAを受け継いだ結果、耳が非常に良いのだろうと思う。

 
美空ひばりが、意味などわからなくても、完璧な英語で歌えたのと同じ理屈だ。
もちろん彼は英語で作詞もする訳で、英語を習得する努力も厭わないのだろう。

森進一は、九子よりも少し年上の戦後の混乱期真っ只中の生まれだ。

 九子はもちろん戦争は知らないが、九子の小さい頃、街にはまだ傷痍軍人(しょういぐんじん)と呼ばれる軍人(の格好をした人)が、よれよれの軍服や厚手の着物を着て軍帽をかぶり、筵の上で短くなった手足をさらして物乞いをするのを何度も見かけた。


あの時代、軍隊の悪しき風習だろう体罰は、今よりもずっとずっと当たり前だった。
九子の小学校の先生もすぐに平手打ちが飛んでくる厳しい先生だったが、母親たちの尊敬を集めていた。

そういう時代に、聞けば、貧しい家庭で苦労して育った森進一は、血のにじむような努力をして日本一の演歌歌手にまで登り詰めた。
そうして頂点を極めてリッチになった彼が、今の贅沢な生活に甘んじることなく、苦労も厭わないように子供たちを厳しく躾けて、時には体罰も辞さなかったというのは、なぜか当然の事のように納得してしまう九子が居る。

いつの時代もそうだろう。厳しく躾けて伸びる子と、厳しくされると萎縮してしまう子がいる。厳しくされて結果を出す子は、もともと強い子だけだと思う。
長男長女は厳しく叱って育てたけれど、下になるにつれていい加減になっちゃったわという方、多いんじゃないかしら?

そして、手を抜いて育てた下の子のほうが、結構逞しいのよね・・という事も。

takaは強靭な意志と反骨精神を持った強い子供だった。
厳しく躾けられても、それに反発し、抵抗する強さを持っていた。
親の敷いたレールどおりには歩まなかった。
彼が歩んだ道が順風満帆ではなかったことがそれを示している。

one ok rockというバンド名は、結成当時午前一時頃からバンドの練習を開始していたからだそうだ。
ジャニーズを辞めて、精神的に辛い何年かを経て、新参者のヴォーカルとして入ってきたtakaだが、彼は若い頃から「オレがお前らをきっと世界に連れて行く!」と豪語していたそうだ。その夢が、もはや現実となった。
まだ15や16で、「オレはオマエラを世界に連れて行く!」と宣言出来る自信は、いったいどこから来たものなのだろう?

昭和の時代、作詞家は作詞だけを、作曲家は作曲だけを、そして歌手は歌い手と言われて歌うだけだった。
ところが現在は作詞も作曲も自分でこなすアーティストばかりになった。
相変わらずの分業が残っているのは、takaの両親が今でも属している演歌の世界ばかりのようだ。

演歌というとどうしても「私を見捨てないで!」という女々しさが鼻につく。それが九子があんまり演歌を好きではない理由の一つだ。
「私を見捨てないで!」を英語にすれば、ちょっと強引だが、”Don't go!"だ。
そこでtakaが作った曲のなかで、”Don't go!"を探してみた。あるのか、ないのか?
  
あった!"Mighty long fall"に。


 
ところがこの"Don't go" は、全然女々しくなんかなかった。
「そっちへ行ったらドン詰まりだぞ!行ったらダメだ!」という警告として発せられていた。

 
takaの詞には決意がある。「失恋して寂しいよ~、心が痛いよ~という弱気な歌詞はあっても、決して「オレんとこへ戻って来い。」は無い。
ましてや「オレを一人にして行かないでくれ!」は絶対にあり得ない。
すべての歌詞が「オレは前だけを見続ける。希望はある!夢を持て!後ろは絶対に振り向かないからな!」という気概にあふれている。
もしかしたらこれがtakaの、親の音楽に対する反発であり、命がけで表現したかった彼のロック魂なのかもしれない。

X-Japanも才能あるロックバンドだったと思うが、彼らの描くものはどちらかと言うと「血まみれの狂気の世界」だった。
だからどこか、浮世離れした病的な感じを受けた。
ところがtakaが描く世界は、現実であり、ごく普通の男女の出会いであり、別れだ。
そして、絶対に後戻りをしないで、前だけを見つめて歩き続ける強い覚悟がある。

takaの強さの理由だが、もしかしたら父親の体罰と無縁ではないかもしれない。
体罰というのは究極の自己否定だ。それを乗り越えて確たる自己を確立するのは、よほど強い意志が無ければ出来ないはずだ。
そしてそう出来る強さを、takaは幸運にも生まれつき持っていたのだと思う。


takaは若干30に手が届くか届かないかの若さながら、そういう生き方を10年、20年続けてきた。
それに比べたら政治家が昨日今日思いついて口にするスローガンなんて薄っぺらに思える。

ONE OK ROCKは、数年を経ないうちに世界屈指のロックバンドになるだろう。
そして、今私たちが英語交じりの歌詞をかっこいいと憧れるように、世界の人たちがtakaの使う日本語に惹かれる日がくるのかもしれない。

その時も、会場でtakaが叫び続ける言葉は同じ。
「前を見ろ!希望はオマエラの目の前にある。後ろを振り返っちゃダメだ!」

ロッカーはファンにとってはいつでもまぶしいカリスマだけれど、takaの変わらない言葉は日本人すべてをも突き動かす力がある。

ポテチの缶の不思議なご縁だ。
ONE  OK ROCKを聴き続けよう。( ^-^)

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ようこ

お久しぶりです。
ゴメンナサイ記事の内容と関係ないですが
三男さんご結婚おめでとうございます。
これからは二人で力を合わせ幸せな家庭を築いてほしいですね。

by ようこ (2016-07-20 11:30) 

九子

ようこさん、こちらこそご無沙汰すみません。
ご報告が遅れてすみません。
何かあるとすぐに電話がかかる二人ですが、とりあえずは仲良くやっているようです。
またメールさせて下さいね。
by 九子 (2016-07-20 23:20) 

伊閣蝶

「one ok rock」も「 taka」も、名前だけは聞いたことがありますが、曲を今回初めて聴かせていただきました。
芯のある透明なテナー。なんという伸びやかな声かと驚いています。
これなら、世界で通用するはずだなと、改めて思いました。
そういえば父親である森進一も、張りつめたような美しい高音を出していたな、と。
曲自体は、何というか人の心に寄り添う優しさを持っていますが、彼らのこれまでの活動は、正に反体制的なロックそのもののように思います。
こうした不屈の闘志を持ち続けてきたことによって、この世界を築き上げることができたのだなと。
様々な事情から、いわゆる日本国内メジャー系の歌番組みたいなものからは締め出しを食らっているようですが、そこがまた何ともうれしい。
x-japan、私はこのバンドがどうしても好きになれなかったのですが、一番の理由は、極めて体制迎合的な体質を感じたことによります。
売れるためには大衆に迎合すべきであり、利用できるのであれば体制側にもすりよるといういやらしさがどうにも受け入れられませんでした。
果たせるかな、現天皇の在位10周年で奉祝曲を演奏するなどというところまでいく。
ロックは云うまでもなく、反体制と軌を一にするもの。
多くのロックミュージシャンが、それこそ転がるように体制側や大資本側へすり寄る中、若いながらも、「one ok rock」のような骨のあるバンドが活動し、それが多くの人に受け入れられていることは、本当に嬉しいことです。

by 伊閣蝶 (2016-08-01 12:43) 

九子

伊閣蝶さん、いつも時間をかけてコメントを書いて頂き、心よりお礼申し上げます。
one ok rock もうご存知だったんですね!
本格的なクラシック音楽通の伊閣蝶さんの太鼓判なら、takaの実力はもう確実ですね!

メジャーのテレビに出ないのは締め出しだったんですか? よくわかりませんが、いろいろこ難しい事情と言うのがあるのでしょう。

X-Japanのことも初めて聴きました。yoshikiのピアノソロを聴いて、私なんか胸おどらせたものでしたが、なるほどロッカーとしてはいかがなものかという事になりますね。

one ok rock をだいぶ聴き続けて、ハードロックと言われるコアなロックには少々まだ馴染めずに、またしばらくクラシック聴いたりしていたのですが、伊閣蝶さんのコメントにお返事書きながら、またone ok rock 聴き直しました。やっぱりぐっと来ました。
本物だ!と思います。


by 九子 (2016-08-01 22:25) 

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