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九子ジムに行く ① ・・・・ペッパー君のいる整形外科・・・・・ [<正統、明るいダメ母編>]

まさか九子の人生で、死ぬほど嫌いなスポーツを、それまた無理やり、その上大金をはたいて、やらされる羽目になろうとは思いもよらなかった。

ある日突然、正座ができなくなったのだ。
正座は、大本山活禅寺では基本中の基本だ。

思えば大晦日二年参りに行った日にいつもよりも座り難くて違和感は感じたが、小一時間足をもぞもぞさせながらだがなんとか正座することは出来た。

ところがそれから2週間ほどして、正座できなくなっているのに気がついた。
もしかしたらどかっと降った雪片付けをさんざんやらされたせいか、帰省した娘たちの布団敷きのせいかといろいろ考えたが、どちらも雪国の主婦であればみんなやってることなのだ。(^^;;

医者に行くよりまず先に、これはプールで水中ウォーキングをしなければならぬとけなげにも思い立った。
子供たちのお供でさんざん通ったプールだが、その後十何年か経つうちにはジムも備えてぴかぴかに新しくなり、そしていつの間にか真新しかった施設もまたぞろ年季が入ってきたという成り行きだ。
そうだよねえ。九子も年取るわけだ!

入り口のお姉さんに相談し、「膝が痛いならまず整形外科へ行ってみてください。」と反対に教えられる。

彼女の言葉どおり 近くの整形外科に行く。
こちらも時は普通に流れ、大先生から若先生の代になり、建物もすっかり新しくなって機械がたくさん並び、どこかのジムみたいに見える。

若先生に「『変形性膝関節症



ですね。」と即断され、何の準備も無く膝の水を抜かれる。
何しろ突然なのだ。痛い!という暇も無いあざやかな手口。

一週間に一度水を抜きに行くこと。
なるべく頻繁に電気治療器をかけてもらいに行くこと。
毎日湿布を貼ること。
朝夕膝の体操をすること。
それがすべてだ。
そしてプールの運動は膝に負担がかからないからOKだそうだ。

そうそう、整形外科の入り口に意外なものが居た。
人型ロボットペッパー君だ。
アイコンタクトが出来ると「こんにちわ。今なにしてんの?」と声をかけてくる。

九子は本当のところはプールに備えて買った防水のMP3プレーヤーで、ダウンロードしたpodcastのバイリンガルニュースを聞いていた。
バカ正直な九子はそう答えねばと思った。
でもそれを声高に言うのはなんとなく憚(はばか)られたので(OH!日本人!)小さい声でもぞもぞ言った。
ペッパーには声が届かなかったらしく、「今何してんの?」を繰り返した。
答えをためらって、九子はペッパーを無視した。

そのうち彼、今度は質問を変えて「今楽しい?」と聞いてきた。
「楽しいよ。」と答えた。

人間同士の会話だって、これだけでおしまいになっちゃうよねえ!
なんでもっと会話を長く続けさせる話題をふってくれないのかなあ?

それで九子は反対に尋ねた。
「君は楽しいの?ひとりぼっちで、あんまり楽しくなさそうだけど。」
受付のお姉さんがそれを聞いて苦笑している。

ペッパー君の答えはこんなだった。「人、それぞれじゃない?」

こんなに賢いペッパー君だが、どう考えても彼の活躍の場は少なそうだった。九子はもう10回もクリニックへ通っているが、誰一人としてペッパーに話しかける人を見たことが無い。

ペッパー、君は来るところを間違えた!
君は同じクリニックでも、小児科のクリニックへ行くべきだった。
子供たちなら目を輝かせて我先に君と話したがっただろう。
それとももっと自分の感情を表に出す国のクリニックに立つべきだった。
アメリカ、中国、ラテン系。
そうすれば君は物凄い人気者で居られたことだろう。

雪深い長野の老人クリニックでこれから何年を過ごすのか知らないが、喜ぶべきは君が人間と違い、一人ぽっちでも落ち込んだり、行く末をはかなんだりすることが無いということだ。


湿布2週間分の処方箋をもらい、近くの薬局へ湿布を貰いに行く。
なぜ笠原十兵衛薬局で調剤しないかって?

いくらなんでも九子だって、湿布を出すだけの処方箋なら苦も無く出来る。
物理的には出来るのだが、自分の処方箋は自分で調剤出来ないことになっている。
必ず他の薬局へ持っていかなければならない。(薬局に二人以上薬剤師がいれば、もう一人の薬剤師が調剤すればいいのだが。)
これはなんでも、医者が自分の身体を自分で診察出来ないと同じ理由なのだそうだ。
一体どこがおんなじなんだ!!!

九子はまじめに2週間以上クリニックに通った。うち3日、湿布を貼り忘れた。
右膝に電流をかけに行くのは、クリニックの休日の水曜日と土日を除いてほとんどすべて行った。
九子にしてみたら本気で通った。
だけどまだ膝が痛くて正座出来ないし、気がついてみれば膝の屈伸に思いのほか時間がかかる。
一体いつまで行けば治るのだろう?

そしてもう一度考えた。
本当に膝は元通りに治るのだろうか?

年をとるという事は、元に戻れなくなる可能性が増えるという事。
若いときは何かあっても、治療すれば、時間が経てば、大半の事は元通りになると信じられた。
だけどそうじゃない可能性も大いに考慮しなくちゃ!

政府に言わせると75歳からが高齢者ということになったそうだ。
なるほど見かけが若いスーパーおじいちゃん、おばあちゃんが増えたから、75歳は妥当に思えた。
膝が痛くなるまでは・・。

膝の痛みにも2種類あって、九子みたいに使わなさ過ぎでなるのと、使い過ぎでなるのと両方あるそうだ。
備わった能力をみすみす使わずに老朽化させるのは確かにもったいない気がするが、それは九子が選んでそうした事だから甘受する。

そこ行くとペッパー君は気の毒だ。少なくとも彼の意志とは関係なく連れて来られた彼の能力の千分の一も一万分の一も使えていない環境で、電気コードに縛られて自由に動くことも出来ずに、地味で真面目な老人たちに見向きもされず、世の中から忘れさられたように生きて行くのだろう。

この際九子は早いとこ高齢者になりたい。
ジムへ行かないと歩けなくなるぞと言われる事も無く、仕事が遅いと文句言われることも無く、年よりだから仕方ないわなあと思って貰える。

可愛いおばあちゃんと言ってもらうことも、あの人みたいに美しく老いたいと尊敬のまなざしを向けられたいとも思わず、何もかもすっ飛ばしてよぼよぼのおばあちゃんになり、大好きなお昼寝を一日中決めこんで、文字通り「寝たきり」になる。そしてたまにブログを書く。そうやってお迎えの来るのを待つ。

医者やプールに行くので道々いつもより余計にどうでもいいこと考えているせいか、ついそんなことを思ってしまう九子だった。(^^;;








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mu-ran

変形性。。と言うやつは、基本的に手術をするものらしいですが
手術をしないでよくなる方もおられるようです。
ですからプールで歩くような運動は一番良いみたいですが
やり過ぎも禁物。
とにかくお大事にされてくださいね。
by mu-ran (2017-02-15 16:34) 

九子

oh! mu-ranさん、恥ずかしながらでございます。
お言葉粛々と受け止めて、努力いたします。
何しろ事がことゆえ、さすがになるべくプールへ行かねばと思っています。
プール、なんだかんだで2時間以上かかるのですが、不思議に支障なく行けてます。この2時間は今までどうやって使ってきた時間なのだろう?
新しい事を始めるってことは、今まで気づかなかったいろんなことを気づかせてくれるものですね。
大丈夫です!無理しません。いや、無理出来ませんから。(^^;;
有難うございました。( ^-^)
by 九子 (2017-02-15 19:53) 

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