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和顔愛語 [<正統、明るいダメ母編>]

九子家の食事は基本的には九子が作るが、出来すぎ母がご飯炊きと味噌汁作りをやってくれる。
まあこうなった理由と言えば、九子がご飯を頻繁に炊き忘れた事かな?

ああ、これで用意万端整った!さあて、ご飯をつけようか・・・。
あれっ???まだお米じゃん!!!(^^;

味噌汁の方は母が好意でやってくれてることだから、文句を言う筋合いはまったくないのだが、北海道の親戚が毎年何度も送ってくれるホクホクのジャガイモを入れないと甘味が出ないからと言って毎日せっせと入れ続け、油揚げはみんな好きだから、そして彩りのわかめも欠かせないってなわけで・・・・。

その挙句、九子家の味噌汁は365日、じゃがいも、油揚げ、わかめの、寝ても醒めてもおんなじに・・・。(^^;

いや、正確に言うと、たまに豆腐が入ることはあっても、ほかの3つがなぜかはずされない訳なので、
なんだか申し訳なさそうに入ってる・・・みたいな。(^^;

わがままM子などはとうの昔に拒否反応を示して、「おつゆは要らない!」とのたまう。

まあ今日もわがやの夕食は、そんなこんなで始まった。

「いろいろ言ってみるものの、やっぱり北海道のジャガイモと信州味噌仕立てのわがやの味噌汁は美味しそうだねえ。」
たちのぼる香(かぐわ)しい匂いが食欲をそそる。

九子は最後に、それでもまだ湯気のたっている鍋から自分の分の味噌汁をよそって、食卓に付こうとしていた。

九子がおつゆを鍋からお玉でお椀によそった正にその時、ドンピシャリ!絶妙のタイミングでいつの間にか隣りに立っていた母の声が・・・。

「はい。すみませんね。」

この瞬間、この一言で、お椀のおつゆは九子のものでなく、母のものになるのである。

「えっ?まだつけて無かったの?」
確かに母の前にほかのおかずは並んでいたが、おつゆは無かった。

う~ん。言葉は魔法である。
たった今、目の前にあった九子の口に入るべくして入れられた味噌汁が、出来すぎ母の一言で、母の味噌汁に変わってしまったのだからして・・・。

母はこの手の物の言いようが、昔から実にうまかった。

九子などはお客様との会話が長引いた時、なかなか切り上げられずに困ってしまう方なのだが、母はその点見事である。

「はいはい、有難うございました。」と大きな声で相手の言葉を遮りながら、もう身体は半分家の中へ・・・。(^^;

薬を勧める時だってそうだ。
「この薬、本当に良く効くのよ。まあ、騙されたと思って買って行ってみて!」

迫力が違うのだろうか?本当に騙されているんだろうか?
効果効能なんかぜんぜん言われていないのに、母のこの言葉だけで薬を買っていったお客さんの多かったこと!

ちなみに九子の場合、根がまじめだからして、へたに薬剤師らしく効果効能を述べ立て始めるのは良いが、途中で行き詰まって信用を失い、結局買ってもらえないパターンが多い。(^^;

M子の言葉も、実は結構説得力がある。

おしゃれには無縁の生活を送る九子であるが、たまには普通と違う服装をしたいと思う事だってある。

その日も何十年間袖を通されることなく眠っていた半袖のシャツを見つけ、長袖のTシャツの上に羽織ることを思いついた。

ペンダントでアクセントもつけて、本人わりかし気に入って居たのだが、M子の一言で台無しになった。

「ママの服って、農家のおばさんが仕事してる時の服みたい。」

言われてみると、当たってるような・・・・。(^^;

まあこういうのは、言葉の魔法のうちでも、どちらかと言うと意欲をくじかせる部類であるが(^^;、もちろんそうでないのもある。

例えば先日、長野市内は夏の盆踊り「長野びんづる」で年に一度の賑わいを見せた。
中学3年で「連」と言われる踊りの輪にクラスで参加したM子達だったが、まだ交通規制が残る市内をM子を迎えに行くM氏を乗せて、九子のフ○ットはいつも通り( ^-^)軽やかに走っていた。

ところが軽やかに走れたのはM氏を降ろしたところまでで、その後は度重なる進入禁止のため、わずか一本の通りがなかなか越えられない。

やっと遠回りして越えたと思ったら、また次なるところが進入禁止である。

こんな目に合いながら、九子が目指していたのは中央郵便局である。
三男Yに長いこと借りていたデジカメを急いで返してくれと頼まれてから、もう数日・・・。
せめて土曜の夜に出してやれば、週の頭に着くって寸法だ。

いつもなら車でものの五分とかからない中央郵便局までの距離が、今日は地の果てのように遠い。

何回目かの右折禁止に、九子は少々キレていた。

そこはいつも歩道と車が共存してる通りであった。
いつも通り、土日の午前10時から午後4時まで車の進入禁止の標識しかなかったはずだった。

九子は小回りの効くフ○ットを横断歩道に乗り上げる様に回転させて、思いきって右にハンドルを
切った。

道はいつにも増して若者たちで賑わっていた。車すれすれに歩行者が嬌声を上げながら行き交う。
それでも誰も「車通れませんよ。」とは言わなかった。

やっと通りの3分の2くらいまで来て、ああもう少し、やれやれというところに・・・・・。

道をふさいでビアガーデン風に椅子と机が並べられている。
「マジ!通れないじゃん!」
九子はへなへなとハンドルにもたれかかった。

しかし、このままここにいる訳には行かない。
九子が一番不得手とするバック走行であるが、蛇行してでもなんででも、とにかく入ってきたところまで戻らなきゃ。

あっ!あそこにいるのはおまわりさん。
こっちへやって来るよ。
やだな。怒られちゃうな。

まだ若い彼は、うつむき加減の九子に窓越しにこう言った。
「あれ、どうしちゃったんですか。ここ通れませんよ。」

「どうしちゃったんですか・・・」は、「どうしちゃったんっすか」と聞こえる青年の明るい声だった。
彼はそれ以上何も言わないで、九子の元を離れていった。

なんか九子はいたずらを見つけられて大目に見てもらった子供みたいな気がした。
彼がもしきつい言葉で「何やってるんですか!」と怒鳴りでもしていたら、九子はあの場を無事に切り抜ける自信はなかった。

こういうのを仏教の言葉で「 和顔愛語 」と言う。( ^-^)

仏様のような青年おまわりさんのお陰で、九子は無事に窮地を脱し、30分も余計にかかって(^^;中央郵便局にたどり着いた。

早速待っているはずのM子とM氏に電話。
出たのはM子である。

「ママあ?もううちの近くのコンビニだよ。ママちっとも来ないから歩いて帰ってきた。2時間も踊ってたんだよ。その上こんなに歩かされてさあ・・・。
まったく、つっけえねー(使えない)親だよなあ。」

娘よ。和顔愛語を学ぶべし。(^^;
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近くの住人

[味噌汁・・・ びんずる・・・]
こんにちは 九子さん
味噌汁ですかー 私はジャガイモ入れたのはドウモ・・・なんですよ。ジャガイモはやっぱ、北海道!じゃがバタですね。
それからカレーの大きなジャガイモです。ひとり勝手の好みですが・・・ついでにフライドポテトも

でも味噌汁を毎日食べると癌になり難いって聞いたことあるので
子供は毎日食べてます。私はと言えば暑い夏は汗を掻きながらの
味噌汁はちょっと苦しいです。
いやーわがままな亭主に家内も呆れてるでしょう。

びんずる祭り・・・夜終わりごろに行きました。こう見えてもびんずるってまともに見たのは生まれて初めて。
いやー変わり者です。

それにしても一週間座りに行かれませんでしたので、そろそろエネルギーをもらいに行かないと「和顔愛語」も忘れがちになって
しまう神経症者です。では
by 近くの住人 (2005-08-09 13:04) 

九子

[近所の住人さん!]
イモ、クリ、ナンキンの類を苦手な男性は多いとか・・・。我が家の男性陣もかぼちゃやさつまいもは苦手のようです。

確かに暑いのに味噌汁っていうのも・・・ですが、なんとなく惰性で食べてます。(^^;

私もまともに見たのは数回です。
子供が中3で必ず出るので、3年間PTAの役をやってない母親は必ず「びんずる係」をさせられて、子供と一緒に踊りに付いて歩くのです。
結構ハードでした。(^^;

やっと夏安居終わりましたね。
昨日行こう、今日行こうと言いながら、多分息子と一緒に明日参禅するつもりです。
本当に、エネルギーもらえますよね。( ^-^)
by 九子 (2005-08-09 19:08) 

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