九子の恋 [<正統、明るいダメ母編>]
☆またまたブログをご無沙汰してしまった。
時期が6月。もしかしてまた持病が出たのかとお気遣い下さった方もあるかもしれない.
申しわけない。そうではない。
この九子、恥ずかしながらこの年で、若い若いイケメンにうつつを抜かしていた。いや、いまだその状態は続いている。
出会ってから早や三か月。
自分の中にまだこんな気持ちが残っていたのか不思議な気がする。
彼の吐息が首筋にかかる刹那、永遠に変わらぬ愛を感じてしまうのだが・・・。
男心は気まぐれ。束の間の出会いののち、彼が行くべき場所はもう決まっている。
どうしようもないヒモ男で、働きもないのに大いばりで居座り、傍若無人に要求し続ける。
なぜそんな男を?
恋に理由などない。
本能のままに生き、欲望むき出しに振舞うヤツのいったいどこに魅力があるのか、なぜかヤツに出会った人間は男も女も振り回される。
ヤツは両刀使いか?
いや、ヤツはただの人たらしだ。
時折見せるはかない笑顔が代償のすべてだと知っていても、その一片の笑顔のために
この命失っても悔いがないとまで思ったりする。
虫のなくようなか弱い声しか出せなかったのが、胸に広がる男の勲章を授かって以来、一皮むけて逞しくなった。
生後10日目。大血管転移という症状で11時間の手術を耐え抜いた3kg弱のちいさな身体・・。
その少し前世界で一番ちいさな男の子を無事に退院させた長野県立こども病院のスタッフのおかげだ。
もうお分かりですね!九子の恋の相手は初孫ちゃん(^^;;
初孫は可愛いと皆が言うけれど、犬猫に対しても積極的に情愛の念を示すことの稀なこの九子に、可愛いという感情が果たして起こるのであろうか?
もしもそういう感情が湧いて来なかったらどうしよう?
それは長い間九子抱き続けた疑問であり、怖れであった。
九子と同じこと心配している人ありますか?
大丈夫よん。孫はなぜだか可愛いから・・・。(^-^)
九子家の年賀状2019 [<正統、明るいダメ母編>]
謹賀新年
長女N子が大学のあった街神戸北野ホテルで結婚式を挙げました。4月には第一子が誕生予定です。
指折り数えないで下さい。(笑)結婚式は平成29年夏。昨年お出し出来なかったのでお披露目致しました。
振袖を着ている次女も嫁ぎ先が決まり、あとは薬局19代目を継いでくれるのは誰か?由々しき問題です。
良い一年をお過ごしください。
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作った後から気が付きました。おっと、夫君が写ってない!(^^;;
夫君は次の年に赤ちゃんと一緒に登場してもらいましょう。
さて、次女がイブ入籍を果たして娘二人が九子家姓ではなくなってしまった暗雲立ち込める我が家です。
もともと九子は男の子三人ではなくて、女の子のどちらかに19代を継いでもらうつもりでした。もちろん理由の一つは、女の子二人が薬剤師になってくれているから。
でももう一つ、大事な理由があります。そしてそれは我が家の家訓に関係してきます。
一番大事な我が家の家訓は「信用第一」
もちろん目薬を売る際もそうですが、16代と17代、つまり九子の祖父と九子の父は二人で40年づつ、合計80年も長野市の市会議員をやっていたので、これは彼らにとってもとても大切な家訓でした。
お金は無くとも信用があれば、人々は味方になってくれる。困ったときにも助けてもらえる。
我が家はそうやって18代470年を生きて来ました。
「最悪のことを想定して事にあたれ」というもうひとつ大切な家訓があるのに、騙されて保証人になって監獄へ行き、その後も今のお金で一か月に100万円づつ十年間も、大陸へ逃げてしまった本人の代わりに返済し続けていた人の良い16代は、もう一つ家訓を遺しました。
「保証人には絶対になるな!」
そして19代を継ぐのは娘が良いと九子が考えている訳が次の家訓です。
「細く長く!」
とても優秀で、東京に出て事業を大きくしようなどと考える先祖が居なかったからこそ、雲切目薬は18代まで続いた。父母も九子もそう思いますし、その思いは先祖たちも同じだったのでしょう。
事業を拡大するとリスクも生じます。大きな工場を建てて手広くやっていたとしても、もっと大きな製薬会社に目をつけられて、パクンと飲み込まれてしまうかもしれません。
だから、「細く長く」なのです。
そういう風にしてくれるのは、真面目に今の路線を引き継いでくれて、大きなことを考えない女の子が向きます。
その上雲切目薬に残っているのは今やブランドのみです。内藤了さんの小説「藤堂比奈子シリーズ」に取り上げられた30年前のしみるユニークな目薬は、もう法律上作れなくなってしまったのです。
今でもいろんな人が「雲切目薬、こうすればもっとたくさん売れるのに!」と言ってくれます。我が家の男たちもそうですし、赤の他人で口をはさんでくる人もいます。そういう意見はとても有難いと思いますが、私の目の黒いうちは、今まで通りにしたいと思います。
もちろん私にも雲切目薬をもっとたくさんの人に知ってほしいという気持ちはあります。
そのために私が選んだのは「坐禅の本」の出版でした。
もちろん自分が坐禅で幸せになった体験を、あの頃みたいに毎日が不幸で不幸でたまらない人たちに届けたいというのは真っ先に考えた夢でした。
そして「九子」という著者名のまま出版社に持っていこうとしたら、編集者でもあるハトコがこうアドバイスしてくれたのです。
「九子ちゃん、ただの何も持たないずぶの素人の主婦が本を出すなんて、まず無理!いったい誰が買ってくれると思う?絶対に売れっこない!あなたは雲切目薬を背負ってるんだから、本名で、雲切目薬の名前も出して本を書くべき!」
そして初めて、九子は雲切目薬、薬局名、本名を出すことにしたのです。
その時初めて思いました。ああ、人助けになるばかりじゃなくてこれで雲切目薬も少しは売れるようになるかもしれないな。
そういう有名になり方だったら、ご先祖様も喜んでくれそうな気がしました。
「信用第一」の我が家の家訓に恥じない売り方だと思いました。
どちらにせよ、坐禅の本の出版はなかなか厳しいです。毎年毎年「今年こそ!」と事情を知っている方々には添え書きをして、もうたぶん10年の月日が経ち、本を持って行って真っ先に見せたかった何人もの恩人たちにも先立たれてしまいました。
そして、また同じことを申しましょう。
今年こそ、坐禅の本が出版出来ますように!(笑)
金のなる木とガジュマル [<正統、明るいダメ母編>]
★ 金のなる木とガジュマル
金のなる木については以前長々と書いた。要するに金のまったくならないМ氏のところからやって来て、少しはましかもしれぬ薬局に居ついたのだが、九子が邪険にするのと(^^;;、冬の間ガラス戸が締め切りにならない環境に10年?も耐え続けた結果、誰が見てもいよいよ貧相で貧乏臭くなってしまったものだから、さすがのМ氏が「別のに代えよう!」と言い出した。
「俺がこの木をまた元通り元気にしといてやるからさあ。」
どこへもっていくのかと思えば、両親が元気だった頃私たちが住んでいた家。
少しくらい日当たりのいいところへ持っていっても、貧乏菌はそうやすやすとは離れないと思うよ。(^^;;
例によってホームセンターを数か所回って代わりになる割安なのを買う。
金のなる木はもういいや!
青々として威勢のよさそうなのないかしら?
ガジュマルって名前の葉っぱの艶のいい木が九子の眼に留まった。
うん。葉っぱも木の幹の感じも面白い。何より値段が安いのが最高だ!これにしよう!
帰ってきてからググって見たら、いろんなことがわかった。
今日買ってきたガジュマルはかなりの安さだぞ!(^^;;
えっ?絞め殺しの木?ずいぶんな名前がついている。
宿主に巻き付いて栄養を吸い取って生きるらしい。
我が家も吸い取られそう。(^^;;
その日は気づかなかったのだが、翌朝になって一番上の新芽にシミみたいな黒い点があることが判明。可哀そうだがむしってやる。
次の日もまた次の日も、別のところにシミを発見。
悪いところは早めに摘まねば病気みたいに広がるとまずいからね。
その他はとりあえず見えるところに病気は無さそうだ、やれやれ。
ああ、こういうことなんだな、手をかけてやるということは・・。
まずは気にしてやる。ただおざなりに水をかけるだけじゃなくて、日々の様子を観察する。
問題があったら手当てする。
九子はご存知の通り植物など育てるのは大の苦手だ。
犬猫の世話だってようやらんのに、よくぞ五人も子供を育てたな!?
もちろん偉大な出来すぎ母が居てくれたお陰だ。(^-^)
毎日水をやる。毎日散歩に行く。毎日えさをやる。
毎日・・・するというのに九子はめっぽう弱い。
一番の原因は忘れてしまうから。
やるぞ!とは思うのだ。朝のうちは・・・。(^^;;
それが、その時間帯になると頭の中からさっぱりと抜け落ちる。
さっきまで覚えていたとしてもだ。
生協の仕分け当番の時のように、他の人に持ってきてもらって始めて気が付くのだ。
最初のうちは計画的かと疑われる。当番さぼりたいんじゃないかと・・。
ところがあまりにも頻繁にそれが起こるものだから、だんだん周りも気づいてくれる。
あの人は単純に忘れっぽいのだ。仕方がない。
もちろん面倒くさがりだから、体を動かしたくないというのもある。
「毎日散歩に行く」は、この理由により始める前に速攻却下だ。
高校の時から飼ってた犬に毎日餌をやっていたのは出来すぎ母だった。
当時のことを考えると少々胸が痛む。
九子は最初のうちこそ愛くるしい顔をした縫いぐるみのような愛玩犬に愛情を示したが、餌をやり、散歩をし・・という日常が重なってくると、だんだんに煩わしくなった。
餌やりはどんどんぞんざいになって、残りご飯の上に残りご飯を積み上げる始末。
このあいだ末娘と話していたら、なんと彼女はしっかりと見てこれを覚えていた!「ママってさあ、犬にひどいご飯やってたよねえ。」
幼児の記憶、恐るべし!(^^;;
まあとにかく、これを見てお分かりの通り、よく言われる「愛情の反対は憎しみではなく無関心」というのはまったくもって当たっている。
九子の場合はどう見ても愛情が薄い。
って、これ、五児の母にして言うべき言葉じゃないんだけど。(^^;;
なんだかさあ、人間の愛情深さって生まれつき決まっているんじゃないのかな?
もちろん愛情深い人ならその方がいいに決まってるけど、九子みたいに薄けりゃあ薄いで、それがいつもおんなじで、そんなに分け隔てないなら理解してもらえそうな気がする。
ガジュマルは大きくなると20mにまで育つんだって!どうしよう!
大丈夫、大丈夫!その手のかけ方じゃあ、あと10センチだっておぼつかないから・・。(^^;;
午後零時のシンデレラ [<正統、明るいダメ母編>]
面白くも無いウツの話である。6月1日から、きっちりと九子はウツだ。
数年に一度のハトコ会。今年は両国から水上バスに乗り、浜離宮を見て銀座に向かいおいしいランチにありつこうと言う訳だ。
九子みたいなケータイオンチでも、ここで写真とらないのは日本人じゃないでしょみたいな気にさせられて、思わずぱちりとしてしまう。
浜離宮の、盆栽を十倍に拡大したようなあの松だけは、もう一度しっかり見てみたかった!
ずんずん進む面々にちょっと待って!写真がとりたい!と言えぬ日本人九子。
グリーンピースの甘くないアイスクリームが印象的。
なんでこういうパーフェクトな一日がウツにつながるの?
九子もさっぱりわからなかった。
上京の前日九子はプールからの帰り、普段よりもずいぶん疲れた。
そして明日の用意をするべく乗り換え路線だの地図だの調べていたのだが、ひどい頭痛で寝込みたいほどだった。
(ちなみに風邪と聞くとこの薬しか出さないと言われてやぶ医者扱いされてる先生もいる。)
もちろん食事の度ごとにPL顆粒は飲みながらだったが・・・。
今日みたいに雲切目薬の注文の電話が一本も無い、店にお客さんが一人も来ない日が理想だ。
なぜと言われても困る。ただただ横になりたいのだ。
だからまあなんとか普通に近い生活が出来る。
姫ってのも図々しかったかしらねえ。(^^;;
プールの風景 [<正統、明るいダメ母編>]
そんなこと長いこと考えたこと無かったが、ここへきて少し考え始めている。
その場その場で話す仲間は居た。それで良いと満足していた。
これは一人っ子で育った九子の癖みたいなもんなんだから、仕方ないよ。
今ではもうジムの方は見向きもせず、水中ウォーキングだけやるつもりでプールを選んだ。でも 歩いてばかりではなんだかつまらない。
そこで軽快な音楽がかかる30分間の水中エアロビクス教室に誘われ、月、木で参加するように なった。
参加者はほとんど同じメンバーだ。
その参加者たちと、どうもしっくり来ない。(気がしている。)
水泳は基本、個人プレーと認識していたので、先生とは挨拶していたが、彼らに挨拶することは 無かったのだ。
いわゆる新参者の仁義の切り方に問題があった。
これには理由があって、熱湯の中やサウナに顔をさらしていると顔が真っ赤になってひどいと湿 疹が出来る。
だから九子はいつも冷水でぬらしたタオルで顔を覆っている。
そしてそれが気になり始めると、そればっかりを考え始める。
あっ、あそこに居るママ友らしき若い三人組!
今日も何やら声高に話し込んでいる。いつものことながら、何のためにプールに来てるのかな?
ああいうのがママ友だって言うのなら、九子はママ友なんて居なくて良かったよ!
だってあれじゃあ、月謝の無駄!時間の三分の一くらいしかプールに入っていないんだもの。
その時だった。「おーい、そこの人!ちゃんとやってる?」と珍しく強い調子の先生の声!
集中力の乏しい九子がいつも陥る自分だけの妄想の世界。
九子ジムに行く その② ・・・・・ジムと水中エアロビクス・・・・・ [<正統、明るいダメ母編>]
九子ジムに行く ① ・・・・ペッパー君のいる整形外科・・・・・ [<正統、明るいダメ母編>]
』
ですね。」と即断され、何の準備も無く膝の水を抜かれる。
Gotogateがキャンセルに応じてくれた! [<正統、明るいダメ母編>]
注:eDreamsの悪口ばかり書いたけど、実際九子はeDreamsに対して何もしていない。キャンセルの申し立てをしたら応じてくれたのかどうかはわからない。
★ブログ「ママ、時々うつ。坐禅でしあわせ」 頑張って更新中です。是非お読みくださあ~い。(^-^)
電話にご用心! [<正統、明るいダメ母編>]
叶わなかった武勇伝 前編 [<正統、明るいダメ母編>]
少々間が開いたので、もしかしたらウツの心配をして下さった方もおいでになるかもしれないが、どっこい!九子は元気です。( ^-^)
このところ、確定申告の書類整理やら何やら、九子にしたら煩わしい事が重なって、少し忙しくしてました。(ご存知のように九子の忙しい!は、たぶん皆さまにとっては至って日常程度。)
実は煩わしいことばかりではなく、非常に忌々しい事体も生じていたのであります。まったく考えるだけでハラワタが煮えくり返る!
話は1月の末に遡る。
九子の「裏の家」は、かつて若かりし頃に両親が建ててくれ、最初の頃は夕食も家族揃ってここでしていたのだが、子供の数が増えるに従って薬局を兼ねた母屋の方が何かと便利で、ただただ寝に帰るだけの家になっていた。
それから後もさほど使われず、特に両親が亡くなってからは九子とM氏の住まいは専ら母屋となり、たまに子供たちが友人を連れてきて一晩か二晩過ごすことはあっても、風呂場も台所もほとんど使われることは無かった。
九子はごくたまにその家の台所にある冷蔵庫に、入りきらない冷凍食品などを出し入れしに行っていた。と言っても、せいぜい一ヶ月に一度あるかないか・・・位のもんである。
1月の末も末、いつものように冷蔵庫に用事があって裏の家のドアを開けた九子はのけぞった!
なんと!床一面が水浸し。それがかろうじて玄関マットが身を挺してそれ以上水が外に流れるのを防いでいた。
原因は一本の蛇口。それも、洗濯機に給水するためだけに取り付けられた蛇口がほとんど全開になっていて、それはそれは勢いよく水が流れていた。(洗濯機はすでに取り外し済み)
さっき言った玄関マットのところで水が止まってしまっていたというのが、身を挺してくれた玄関マットには悪いが、有難迷惑な話だったのだ!
普通あの勢いで水が流れていれば、早晩玄関のドアを越えて表の通りに溢れ、九子が気づかないまでも隣の八百屋のおじさんが必ず気づいて九子に連絡してくれたはずだった。
ところが幸か不幸か(絶対に不幸だ!)、蛇口の直下には排水口があって、水のほとんどはただただ何の仕事もしないまま(九子みたい(^^;;)、排水口に取り込まれてしまっていたのだ。
それを超えた分の水だけが、玄関マットの助けもあり、床に平衡を保って留まっていたということらしい。
九子は急いで蛇口を閉めた。いや、閉めようとした。
だけど、あと三分の一くらいのところで蛇口が九子の力では回らなくなり、水はまだ出たままだ。
仕方が無いので元栓を締めにかかった。
雪が積もって氷になってる下に蓋がある。何時もの九子なら蓋が凍って動かない時点で開けるのはとっくに諦めてるところだが、非常事態ゆえ、裏の家にあった工具箱から重い釘抜きみたいなものを取り出し、凍っている蓋にお湯をかけて溶かし、蓋の穴に釘抜きをねじ込んでなんとか開けることに成功した。
元栓自体は九子でも割合簡単に締まった。
九子は3日ほど前に母屋の水道が凍り、水が出なくなったのを直してくれた水道やさんを呼ぼうとした。
その時九子は考えた。
「いや、待てよ!蛇口が全開になっていて水が出たのは理屈上至極当たり前のことだ。水道やさんが来てくれたって、水も普通に出るし、今現在は止まっている訳だから、してもらうことは何も無い。来てもらうのだってタダじゃないんだから・・。」
そして話だけでも聞いてもらおうと水道やさんの会社に電話したら、恐ろしいことを言われた。
「あ~、そういう場合はねえ、お金は戻ってこない可能性が高いです。もしも水道管が漏れていて工事会社が修理したと言う証明があれば、漏れた分の水の代金は戻ってくるんですけどねえ・・。」
一週間後くらいに、メーターの検針の人が来てこう言った。
「すみません。水、どうされましたか?いつもよりかなり多いんですが・・。」
どうされましたなんて話じゃないわよ!と思いながら、九子は一部始終を話した。
「ああ、と言うことは、漏水ではないんですね。蛇口から出てるんですね。すると大変申し訳ないんですが、お客様にご負担していただく事になります。たぶん4万から5万くらいの金額になってしまうと思うのですが・・。」
九子は頭がくらくらした。
え~っ!だっていつも基本料金くらいしか使わないのに、その軽く10倍だ! 1、2万なら仕方ないと思えるけど、5万円なんて!!!
結局正式な請求金額は51000円位。
なんてったって九子が一番許せないもの、それは理不尽なことだ!
普段は温厚と思われてる九子が、満月の夜の狼男のごとく豹変する(^^;;のは、いつもそんな目に遭った時だ。
もしかしたら曽祖父、祖父、父と流れているはずの政治家の血筋なのか、躁病の無い軽症躁うつ病のせいなのか、単なるAB型の二面性なのか良くわからないが、九子はその時密かに長野市役所水道局営業課に乗り込んでいく計画を心の中で立てていた。
今となっては「妄想」に終わってしまった事になるが、確かにその時九子は、市役所で課長を呼び出し、これは不可抗力であり、漏水が知らない間に起こると同じように、九子が与(あずか)り知らない間に起きた事故なのだと主張し、誰がいったい普段は不要の蛇口を全開にするだろうか、全開にしてそのままその場を離れるだろうか?いや、あり得ない!
もしも誰かのいたずらで故意に蛇口、あるいは元栓を回した人間がいる場合であっても、こちらが負担しなければならないものなのか?等々
考え付くありとあらゆる可能性を駆使してなんとか相手を説得し、たぶん結局はこちらが払わなければならない場合であっても、きっといつでも市役所の奥のほうに居て書類にハンコを突いてるだけで外にも出ないような課長相手に一矢を報いるべく、九子はこう言ってるはずだった。
「あなたねえ、5万円稼ぐってどんなに大変かわかる?四月から消費税が8%になるけど、5万円って100万円売り上げてやっと出て来る金額よ!だからわからせてあげる。この場で5万円、現金であなたが立替えて!そうしたら、集金の度に集金の人に1万円ずつ返してあげる。2ヶ月に一度の集金なら10ヶ月で返せるわ。利息はマケといてよね。」
そして捨て台詞はこれだ。「九子家の女を甘く見ないでね。市長さんに聞いてごらん。彼が一番九子家の女の怖さを知ってるはずだから・・!」(何しろ市長夫人は九子のハトコで、九子一族の中で一番威勢のよい女性なのだから(^^;;)
仕上げは今日のこの日記。タイトルは「九子の武勇伝~長野市水道局営業課にもの申す~」になるはずだった!!(^^;;
オオ、怖ー!
ところが、実際にはそうはならなかった。
理由の一つは九子の健康問題。
幸か不幸か(今回はきっと幸なのだと思う。)、ここ一年ほどで顕在化した母譲りの甲状腺疾患で、症状は良くなっているのに急に腫れがひどくなり、精密検査を薦められてしまった。
精密検査すなわちガンの疑い。甲状腺のガンはほとんどが良性とわかってはいても、気持ちのいいものではない。
心配事が起こると途端に他のことなどどうでも良くなる九子のことだ。市役所に乗り込んでく話など、考えるだけでエネルギーの無駄使いという気がしてきた。「今そんな事に神経すり減らしてる時じゃないわ!」
でもお陰様で、専門医は「ああ、これは普通の腫れの範囲内。心配ありませんよ。」とあっさり言ってくれた。
元気になると、やっぱり気懸かりな市役所行き!(^^;;
まあ、その前に一度電話でもかけてみますか・・。
「必ず責任を取って下さる方に繋いでくださいね!」という九子の電話に取り継がれて出て来たのは、K課長だった。
声の印象は極めて穏やかで、誠実な感じ。
う~ん。実はこういう人が一番やりにくい!
相手が高飛車なほど、こちらも元気が出ると言うものなのだ。(^^;;
「一度うちに見に来て頂く訳には行きませんか?」という九子。まさか課長さんがこんな電話の一人一人んとこに出て来るはずが無いと思っていると、「わかりました!これから伺います!」
という返事。
えっ?来てくれちゃうの?あらまっ!じゃあ、九子が乗り込んでく必要がなくなっちゃうよ。(^^;;
果たして!玄関に顔を出したのはK課長と新人らしき白いマスクの彼。あら!二人も?
それに、K課長って、年の頃なら40前後。九子好みのイケメンじゃないの!((^^;;)
え~、まだお話は続くのですが、長くなりますので今回はこの辺で・・。
次回に続く