魔法の鏡 [<九子の万華鏡>]
今回の直木賞は、なんとユーミンこと松任谷由実氏だったそうな。
なるほどなあ。その手があったか!
九子はどっぷりのユーミン、中島みゆき世代!
大学時代の一人ぼっちの部屋を思い出せば、ユーミンの「翳りゆく部屋」が頭の中で勝手に流れ出し、好きだった先輩に彼女が居たとわかった日には、中島みゆきの「時代」を無理やり歌おうとして、歌えなかった苦い思い出が、あの頃よりは甘酸っぱく心にしみる。
ユーミンが直木賞というのは言い得て妙だ。
彼女の歌は大衆的・・かどうかはわからないけれど、深刻な事を明るいメロディーでさらっと歌ってしまう。彼女は良く都会的と評されたが、八王子の大きな呉服やさんの娘で、お金の苦労などしたことがなさそうなところが、明るさに満ちた軽いリズムと中性的な歌声の新鮮さも相まって、新しいスターを心待ちにしていた若い世代の心をつかんだのだと思う。
何しろ当時はかぐや姫の「神田川」に代表されるビンボーな学生の歌が多かったから・・。
彼女の実家は例の「はれのひ」事件で、晴れ着が着れずに悲しんでいた娘さんたちに急きょ晴れ着を貸し出して話題になった。
それに比べて中島みゆきは、北海道のお医者さんの娘さん。
同じようにお金の苦労はしたことがなさそうだけれど、こちらは暗い情念を歌わせたらピカイチで、明るいものの中に存在する陰の部分を際立たせる歌詞と曲が特徴。
勢い、歌そのものも暗くなりがちだけれど、その中にある明るい部分の美しさとやさしい希望に心躍らされる。とても繊細で複雑。だから純文学!
もしも次回の芥川賞が該当者なしであったら、中島みゆきが受賞する!!
と、九子は勝手に予想している。
どうでもいいことは置いといて・・・・。(^^;;
当時は「荒井由美」だった彼女のヒット曲の一つが「魔法の鏡」だ。
あれ?うまく貼り付けられないのでURLのみ。
九子も買ったアルバムMISSLYMが全曲聴ける。7曲目にある。
魔法の鏡を持ってたら、あなたのくらし映してみたい。
もしもブルーにして居たなら、偶然そうに電話をするわ。
の歌詞で始まるこの曲は、今考えてみたら彼女が作り石川ひとみが歌ってヒットした「まちぶせ」と同じ怖い女路線の始まりだったのかもしれない。
こちらの方がまだまだうぶで、好きだった人を思うだけ。
人の恋人を絡めとったりはしないのだけれど・・。
ところで皆さま、あなたにとっての魔法の鏡ってどんな鏡?
九子の場合はご多聞に漏れず、ずっと長いこと「きれいに見える鏡」を欲していた。
うまい具合に、洗面台の鏡がそれに当たった。
他の鏡で見るよりも九子が美人に見えるのだ。(^-^)
だから九子は、その鏡に映る自分の顔を見るのが好きだった。
そう、もう何十年もの間。
ところがこの頃気がついた。
その鏡で見るとパーフェクトに映るのに、なぜか他の鏡では白髪が目立ったり、肌色が良くなかったり、しわが深かったりすることに・・・。
どちらの顔が正しいのかは言うまでもない。
そして九子は遅まきながら気づくのだ。
今現在の九子にとって、「魔法の鏡」とは現実をありのままに映してくれる普通の鏡のこと。
それを見ながら、白い髪を黒くし、さえない肌色にファンデーションを塗り、しわにマッサージクリームを施す。よりよく見せるための悪あがき。
人間年を取ると、ごくごく普通だったはずのものが、実は「魔法の・・」だったことに気が付くものらしい。
動いて当たり前だったはずの身体も動かなくなり、無理に動かすと痛みが生ずる。
若いころは当たり前に出来たことが出来なくなる。
ああ、身体が動くってことは、当たり前なことじゃなかったんだなあ。
そうやって「みんな」に、身の回りのいろんなものに「感謝」しながら死んでいくのが、日本人の幸せなのかしらん。