雪かきのコツ

今年は暖冬の予想であったから、冬の初めに大雪が降った時にはびっくりした。そう、あの忌まわしき「スタッドレスタイヤ事件」の次の日の事である。

我が長野市も、五十センチを超える積雪に見舞われた。
いつもなら、ディズニー帚(ほうき)とかいう、なんでもディズニーランドで使われているという腰の強い竹ぼうきで、ささっと道の真中に向かって掃けば、あとは車さんたちが雪を蹴散らしてくれる・・・という九子流だが(＾＾;、さすがにこの量だと応援隊の出動を要請しないといけない。
おあつらえむきにその日は日曜日であった。( ＾-＾)

雪国の知恵。先ほどの「少ない雪なら道路の真中へ・・」というのも、正真正銘の雪国の知恵だろうが、九子がこれから披露するのは、たぶん雪国の浅知恵である。
いわく、「雪かきは、子供のテレビのゴールデンタイムをはずして行う。」(＾＾;

受験生の長女Ｎ子は朝から模擬テストで留守だった。
残るは、あんまり役に立ちそうも無い三男Ｙと次女Ｍ子である。
この二人はまた、大のテレビ好きでもあった。

この二人のテレビゴールデンタイムをはずすと、勢い雪かきの始まりは１１時近くである。
雪も降るのは朝方までで、昼間は良く晴れることの多い長野の太陽は、もうそこそこ南中しかかっているし、隣近所のお宅からは、かいた雪を運んでいる音が響いてきている。

さあ、日焼け止めクリームの最強のヤツをたっぷりつけて、はじめるぞ～。( ＾-＾)

思いのほかしっかりやるのが、三男Ｙである。
自分は駐車場係と決めているらしく、車を出すには全然支障がないからほっとけば良いところまで手を抜かずにやる。

そういえば彼は中学校の頃から、（他はダメだが(＾＾;）掃除だけは誉められていた。気が向くととことんやる性格なのかもしれない。

とことんやる！のとは全く無縁の世界に住んでいるのが、次女Ｍ子である。

案の定、１５分もやるかやらないうちにすっかり飽きて、雪合戦よろしく雪だまを投げ始めた。
後ろ向きになって雪だまを投げ、川へ入ったらポイントらしい。

あ～あ、こういう時なんだよねえ。あの子、育て間違ったかなあ、と思うのは・・・。(＾＾;

一番下でわがまま放題。でもまあ、自己肯定の天才で、世の中うまくわたっていくタイプかも・・・。

話はさかのぼるが、Ｍ子の３歳児検診の時、興味深い話を聞いた。
保健婦さんに「Ｍ子ちゃん、おりこうさんですか？」と聞かれて、聞かれる前からうんうん肯いていたＭ子であったが(＾＾;、保健婦さんは続けてこうおっしゃった。

「良かったわね、Ｍ子ちゃん。お母さん、これ実は大事なことなのよ。おうちで可愛がられて居なかったり、ばかだばかだと言われてばかりいる子供は『おりこうさん？』と言われても『ううん』って首を横にふるものなのよ。３歳児だって、正直なものよ。」

その時は、なるほど！と思い、我が子は大丈夫と喜んだものだが、３歳の時から自己肯定上手の片鱗を見せていたＭ子はその後、成長すると共に、ますます自分に甘く他人に厳しい、とんでもない人格になりつつある。

まあ、そのうち雪投げにもすぐ飽きて、また元の雪かきの仕事に戻ってくるあたりはご愛嬌ではあるが・・・(＾＾;

さて、このくらいかな。やれやれお陰で終わったね・・と思ってふと見ると、
前のＫＯさんのおうちの分を、ＫＯさんの義兄に当たる、これも会社社長のＫＡさんが、仕立ての良いスーツ姿のままで雪かきしているのが見えた。

実はＫＯさんはご養子さん。ＫＡさんも養子でこそないが、強い奥さんには頭が上がらないクチである。そのＫＡさんの奥さんと、ＫＯさんの奥さんが姉妹で、留守のＫＯさんに代わって、ＫＡさんが奥さんの実家の雪かきをしていると言うわけだ。(＾＾;

見ていたＭ氏が嬉しそうに言う。
「ＫＡさんも可哀想になあ。あれ絶対奥さんにやらされてんだぜ。さっき奥さんちょっとだけ顔見せてすぐ家へはいっちゃったもの。あれから会社へ電話してＫＡさんを呼びつけたんだよ。だから慌ててかけつけてきたんだよなあ、会社から。あの格好だもの。同情しちゃうなあ、おれ。（くっ、くっ、くっ）」

なぜだか親戚中みんなお婿さん取り・・・みたいな九子のまわりで、自分よりも少しでも可哀想な身の上のお婿さんを見つけては、自分を慰めているＭ氏である。

だけどさあ、してみると一番可哀想なのは一体誰なんだろう？
・・・・・・と思う九子であった。(＾＾;

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