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イギリス流ふつうに生きる力 [<九子の読書ドラマ映画音楽日記>]

この本は、不思議な経緯で我が家にやってきた。
まず九子が、なぜその電話に釣られたのかがわからない。(^^;;

私立薬学部2名の学費捻出中で、雑誌広告など出す余裕は皆無のはずだったのに、電話が終わった時には「わかりました。」と答えていた。

次にまた電話がかかって「カラー版の方が目立ちますよ。」と言われた時、「2万円も高いなら元通り白黒の方で・・。」と答えるつもりが、たまたま一緒に居たM子のヤツが「後になってからやっぱりカラーにしとけばもっと注文入ったかも・・って後悔したくないじゃん!」などとつまらん事を言い出して(^^;;、結局高い方にしてしまった。


そう。その雑誌を作り、広告を掲載している会社の社長さんが井形慶子さんだったのだ。
作家さんがやってる会社なら、まあ信用してもいいんじゃないかなって思った。

ちなみに雑誌は「Mr.Partner」と言い、イギリスファンに根強い人気があるらしい。
(雲切目薬の小さいカラー広告は、6月8日発売号に掲載されます。( ^-^))

それにしても井形慶子さんって、どっかで聞いたことある名前なんだけど・・・。

九子はもともと○×式試験に強い。確かこんな感じだった、こういう文字が付いてた気がする。
説明が出来なくても当たっていればOKなのだ。

井形慶子さんねえ。誰だったっけ? 絶対どっかで読んだ気がする。


しばらくして「Mr.Partner」の最新号と共に、この本は無料で送られて来た。
考えてみると大盤振舞だ!

イギリス流 ふつうに生きる力

イギリス流 ふつうに生きる力

  • 作者: 井形 慶子
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

写真もきれいだし、読みやすそう!
ぱらぱらとめくって最終章まであと少しのところで、『日本人の背中』というタイトルを見つけた。
あっ!!あの本を書いた人だったんだ!

九子は昔、井形慶子さんの『日本人の背中』を、読んだどころかブログにまで感想を書いていた!!(^^;;
あの、空港でドイツ人夫妻に信用してもらえた日本のパスポートと日本人の話。
あれを読んだ時は本当に日本人の一人として誇らしかった。
それを忘れるなんてねえ・・・。(^^;;


井形慶子さんは若い頃からのイギリス好きで、現在イギリスに3軒も家を持ち、イギリス社会を題材にして書いて来られた。

本著によると20代の頃、シングルマザーでベビーカーを押しながら英国に降り立ったと書いてある。
不安でいっぱい、お金も無い、社会からはみ出してしまった日本人の自分を受け入れてくれた英国。
その奥底にあるものが何なのかを彼女はずっと探し続けた。

もちろん受け入れる方も凄いが、赤ん坊連れで単身イギリスへ乗り込んでしまう方も凄い!(^^;;


この本は2011年の3月11日から始まっている。
そう。日本を一変させる地震が起こって、彼女は帰宅難民を経験する。

その後何度も被災地を訪れた彼女は、体験を基にさまざまな提言をする。
言うだけじゃなくて行動に移せるところが彼女の凄さだ。

奇遇なことに3月11日は、イギリスでは「コラムの日」。
260年前の3月11日に英国で初めて新聞にコラムが書かれたのだそうだ。
その少し前から、彼女はそれに合わせるように東京新聞でコラムを書き始めていた。
その集大成が本著なのだが、イギリスの今と日本の今が絶妙にリンクされている。

ロンドンで同時爆破テロが起きた時、英国人は「バックトゥノーマル」をスローガンにして、これまで通りの日常を続けようとふんばったのだそうだ。

それに引き換え、私たちはどうしたか?

 

食料や物資が届かず困窮する被災者の映像を見続けているうち、私達は自分の無力感に打ちのめされ、普通に暮らしていることにすら罪悪感を抱いた。それが脱力感になる。(略)

未曾有の大災害で日本経済が破壊された今、私達がすべき事は、地道な経済活動をあきらめず、ひたすら利益を上げること。復興費用の約二十兆円は、いくら国債を発行しても天から降ってはこない。
そろそろテレビにかじりつく事を止め、「普通に生きること」を国民一人ひとりが発揮すべきだ。

 

きっとこれは金子みすヾの詩やATのコマーシャルが繰り返し繰り返し流れてた頃に書かれたものだね。

「あのおばあちゃんの手を引いて歩道橋を一緒に渡ってあげてる心根優しい青年を演じてるのは、大和田伸也の息子なんだって!」・・などとどうでもいい事を話題にする前に、この本をもっと早く読んでいたかったと思う。


それにしても英国はさすがに一本筋が通っている。

20年前、英国はダイアナさん騒動で揺れており、自分より学歴の高い女性を妃殿下に選ばれた我が浩宮殿下の方がチャールズ皇太子よりもずっと立派に思えたんだけど、最愛の女性と再婚出来たチャールズ皇太子はいつの間にか落ち着かれて、貫禄漂う大英帝国の代表になっておられた。

そのチャールズ皇太子が、口蹄疫の被害を受けた英国の湖水地方にいち早く支援の手を差し伸べ、被害を受けた民宿農家に2泊3日宿泊され、皆と同じ食事をして周囲を散策し、観光への信頼回復を早めたのだそうだ。

チャールズ皇太子に限らず、若いウイリアム・キャサリン御夫妻もニュージーランド地震の折に真っ先に現地に赴かれたらしい。

「高貴な人ほど、果たすべき社会的責任を負う・・ノーブレスオブリージュ。」
その伝統が失われずに脈々と継承されているのが羨ましい限りだ。


ところでドイツのメルケル首相が、2022年までに原発をすべてゼロにすると宣言された。

彼女は貧しい東ドイツで育ち、大学で物理学を学んだ秀才だが、一時期までは大の原発推進派だった。彼女の知識の中で、原発は安全だと信じるに足るものがあったのだろう。
だが、ひとたび国内の原発事故に遭遇し、「これでおしまいだ。」と言い残して方向転換を決めたのだそうだ。

どう考えてみてもその方が、人間として自然だと思う。
科学者としても大変勇気ある決断だ。

理由はどうあれ、未曾有の原発事故を目の当たりにして、原発を再稼動させるって話は誰が考えても理不尽だ。

もしもまだ、東工大出身の同じ物理学者管直人氏が首相であったなら、メルケルさんと同じ決断をしてくれていたのだろうか?

「倒せない魔物に日本を破壊させまいと、一丸にならなければいけない。」
井形慶子さんの一言は重い。


日本に優秀な政治家が出ないのは、プロとアマの差、そして出自の差だそうだ。

 

たとえば英キャメロン首相や官僚の多くは、オックスフォード大PPE(哲学、政治学、経済学)コースを出ている。公職を目指す学生のために1920年代に誕生したこのコースで、生徒たちは週二回、教授と向き合い、原子論などジャンルを超えて個人指導、チュートリアルを受ける。

提出したレポートについて、あらゆる角度から自分の考えを問われ、分析し、発言を求められる。
「学ぶ」のではなく「考え抜く」ことで、集団の意見に雷同することなく各自が確固たる意志を持つ。
特別優秀な生徒が集まる狭き門PPEは、自分が選ばれた者だと明白にする環境とも言われている。

 

そしてキャメロン氏は、国会議員を600人に削り、さらに15億円以上の経費をカットする。
ちなみに英国下院議員の年収は950万円に対し、日本の国会議員は2400万円だそうだ。

「日本の社会は、簡単な仕事でもたくさんの人手(公務員)が要るように仕組まれている。」とは、ある英国人の弁。金でも人でも、日本はなんて多くの無駄をしているのか。

「政治は富の分配だ。
 外交から財政まで日英の決定的な違いは、政治家が国益を第一に考えているか否かだ。」

たとえ国益を第一に考えてくれているという当ての無い政府であっても、お上はお上だ。

「お上が何とかするべきだ。」と私たちは言い続けて来たけれど、「他力本願で、自分の行く末に手を打とうとしない人が多い。」と外からは見られている。

「強いリーダーを望む前に、自分がどうしたいか、決めなければ。」

「震災後の日本をスピードをもって立て直せないのも、『枠』と『しがらみ』の区別がつかず、個人が責任を取ることを避けているからではないか。」

ああ、ここでも言われてる個人が責任を取らない日本流。
心ある人たちがみんな同じ事を言うところを見ると、ここらあたりが日本人がこれから性根を据えてかからねばならない問題だね。

 

私達日本人は迷宮入りしている。それは震災のせいだけではなく、これまで日本人の美徳とされてきた慣習に従い、皆の意見を聞き、決して出過ぎた真似をしないようにする、周囲へ協調しようとするき方がしがらみを生み、変化を起こしにくくする。そんな有様が、ますます私達の社会を萎縮させているのではないかと思った。

海外に出てみると、日本という国が抱える問題がクリアに見えてくる。

今日本人に必要なのは、各自が「迷宮」という渦巻きの中から脱却して、自分をニュートラルな普通の状態にリセットする”切り替え”ではないだろうか。生活も、仕事も、政局を監視することも、誰に委ねるわけにもいかない。

冷静に判断し、次のステップを踏み出す責任は自分自身にある。
この先、何が起きようと、私たち一人ひとりがぶれることなく声を上げれば、社会はそう簡単に傾きはしない。その思いを込め、本書のタイトルを『ふつうに生きる力』とした。

 

↑あとがきにはこう書かれている。

長いこと「英国病」と言われて経済の沈滞期が長かったイギリスだが、この頃ニュースやテレビで見てる限り、なんとなく明るい兆しが見えていると思っていた。

だけどまだ若い人の失業率は2割で、未来は決して明るくないのだそうだ。
そんな中でもイギリス人が慌てずに日々の暮らしが楽しめるのは、「成長より成熟」という考え方で多種多様な働き方をしているかららしい。

中国が、韓国がと目くじら立てる前に、私たちもそろそろ、英国流の翳り方(かげりかた)の美学を学ぶべきなのかもしれない。

あきらめろって意味じゃないよ。諦観ね、諦観!(^^;;

そして迷宮から一人で出られる気力の無い人には、坐禅が一番の味方ですよ。( ^-^)

★括弧内は基本的に本文よりの引用です。


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コメント 10

ことみ

すっごい面白そー名本ですね。
読み応え有るブログです。
by ことみ (2012-03-26 23:35) 

九子

ことみさん、こんばんわ。
コメント有難うございました。
見ず知らずの方がこのブログを読んで頂いているのを知るのはとても嬉しいものです。読み応えがあると言って頂くとなおさら。( ^-^)
コメント頂いた方にお願いしているのですが、もし良かったら左側のプロフィールの下にあるように、メールを一本頂戴できませんか?
お待ちしています。
これからもどうぞよろしくお願いします。( ^-^)
by 九子 (2012-03-27 00:12) 

さきしなのてるりん

憂鬱な気分です。日本人とか、日本とかを話題にすること。チョイノリさんのところで、自分ながら余計なことを書いたとか思う一方、でも黙ってられなくて。ここでも言いたいけど、抑えておく。今とても眠いせいでもあるのだけど。
by さきしなのてるりん (2012-03-27 12:36) 

九子

さきしなのてるりんさん、こんばんわ。
ちょっと微妙な問題かもしれませんが、中国、韓国よりはマシだと思うのですが・・。(^^;;
どんなこと書かれたのか気になるところです。( ^-^)
by 九子 (2012-03-27 22:34) 

般若坊

九子 さん 沢山のナイスを ありがとうございます。
じっくり拝見しました。 英国やドイツとの対比 いちいちごもっとも・・・
日本人はいつからじっくりと考える事を止めてしまったのでしょうかね。
by 般若坊 (2012-04-04 07:59) 

九子

般若坊さん、お返事がすっかり遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。
m(_)m
私は申し訳ありませんがまとめ読みのため、nice!はいつも複数になります。
毎日読まずにすみません。m(_)m

般若坊さんがいつもブログに載せてくださるシューベルトやバッハの音楽が生まれたヨーロッパの国々と同じ長さ以上の歴史を持っているはずの日本なのに、何がどういけないのか、はっきりしませんね。いつもブレてる感じです。
それが日本さ!と言ってしまえばその通りなのですが・・。(^^;;
by 九子 (2012-04-05 16:53) 

susu-38

震災後の復旧の遅さは、英国など、政治家のリーダーシップの差でしょうか。今の日本の政治、危ないと思います。この本、買って読みます。
by susu-38 (2012-04-05 22:48) 

九子

susu-38さん、はじめまして。
コメント有難うございました。m(_)m

本当に日本人一人一人が持っているものは誇るべきものがあるのに、この国に決定的に足りないのが決断力でしょうか?
政治家と称する人にはとりわけ頑張って決断力をつけて欲しいです。それともちろんおっしゃるところのリーダーシップも。

私には読みやすくてちょうどよかったかもしれませんが、susu-38さんのような賢い方には物足りないかもしれません。
でも、読んで得ることの多い本だと思います。

コメントを下さった皆様にお願いしているのですが、左上にあるメール&お知らせ欄にあるアドレスへメールを一通下さいませんか?

お待ちしております。m(_)m
by 九子 (2012-04-05 23:44) 

Muran

素晴らしい文章をありがとうございました。
英国とは確かに凄い国ですね。
メルケル氏も、その決断力と行動力は男勝り。

わたしは日本がだめだとは決して思いません。
これほど素晴らしい国はほかにない。
これほど優秀なる民族はそうありませんね。

でも他と比べてしまうと、何かがおかしく見える。
もしかすると、自分を肯定できないのが
島国なのかもしれませんね。
でも肯定しようとすると、
戦前の日本に逆戻りする感性が
いまだにあります。

そう、日本人は極端なのです。
だから日本人であり
それを変えることはできません。

要は自分のアイデンテイテイを変えることなく
己の在り方を素直に肯定しつつも
新しい活路を見出すことです。
それには比較法はあくまで参考にとどめ
世界の中で独自路線を切り開くことなのですが。。。
そんな大人は。。。
いますね。

そこかしこに埋もれています。
彼らに未来を託しましょう。
多勢に無勢の無意味なやからから
彼らを守って、みなで応援しましょう。
by Muran (2012-04-06 14:22) 

九子

Muranさん、こんにちわ。
nice!とコメント有難うございました。( ^-^)

>わたしは日本がだめだとは決して思いません。
これほど素晴らしい国はほかにない。
これほど優秀なる民族はそうありませんね。

外国を良く知るMuranさんからこういう言葉を頂くと本当に心強いです。

>もしかすると、自分を肯定できないのが
島国なのかもしれませんね。

そういう見方も出来るでしょうか。でもイギリスは違いますよね。
あっ、そうか。あちらは大英帝国で、ちっとも島国じゃありませんね。(^^;;

>そう、日本人は極端なのです。
だから日本人であり
それを変えることはできません。

面白い見方ですねえ。私、そんな風に考えたこともありませんでした。
あっ、でも確かにわあ~っと何かに飛びついて、すぐに熱が冷めるのは特徴ですよね。ナタデココブームとか・・。そういうことなら納得です。

>要は自分のアイデンテイテイを変えることなく
己の在り方を素直に肯定しつつも
新しい活路を見出すことです。

本当に難しいのですけれど、これが出来るのはやっぱり坐禅しかないと思っています。
実は今、それをまた必死に書いていて、もう少し立ったらMuranさんにお目にかけたいと思っています。

日本人は坐禅のよさをあまりにも知らない。お寺の方もあっさりしているので宣伝もしませんから。

日本を救うのはもう坐禅しかないと思いつめています。

それからMuranさん、さっき気が付いたのですがとんでもなく昔に頂いたコメントにお返事し忘れておりまして申し訳ありません。
さきほどお返事書きましたので、良かったらご覧下さい。


http://kumokirimegusuri.blog.so-net.ne.jp/2010-10-22

by 九子 (2012-04-07 22:30) 

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