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詐欺師の手練手管 [<薬のこと、ダメ薬剤師のこと、家のこと>]

日頃自分の強運を確信している九子であるが、ごくたまに、世の中はなぜこんなに思い通りにならないのだろうと嘆息することがある。

その時九子が苦々しく思ったのは、どうしてこういうタイミングでこういう事がおきるのか、まったく間が悪い!ということだった。

社会というものは、自分などというちっぽけな人間の都合なんかにとんと無関係に動いているものだなあという思いも強くした。


時は去年の10月の中頃。
その時九子は、ウツの真っ最中だった。

またもやすべては一本の電話からはじまった。

またもや・・・というのには訳がある。
ご存知の方はご存じの通り、九子は以前、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)に巻き込まれたことがあったのだ。(^^;;

電話の主は、どこにでもいる、やたらに明るく調子のよい浅薄な感じの若者で、広告会社の社員とのことだった。
「ご依頼の広告の原稿が出来上がりましたので御電話しました。」と言われた。

九子は頭を抱えた。ご依頼もなにもそんな広告、出した覚えがなかったからだ。
ただ当時おつきあいしていた広告会社があって、もしかしたら義理で一本広告を出すことになってしまっていた可能性もゼロではなかった。

とにかく九子はウツだったのだ。
自分のやった事に自信がなかったし、強く言われるとなかなか断れない状況にあった。

値段は・・・と聞くと、10万円だという。
ここへ来て九子のシビアな経済観念、つまりは必要以外のお金はびた一文出したくないという意識がウツに勝つことになる。(^^;;

自分が思い当たらないことにお金を出すなんてどうしても出来ません!と九子は強く言い放った。

すると彼はあんまりなディスカウントを持ちかけた。

「そちらの枠をもう作ってしまってあるので、この段階では中止は出来ません。私にも責任があることなので、それなら半値に致しましょう。」


半値って言っても5万円よねえ。それでもまだ高い!
それでも無理です!とのたまう九子に、彼は更にその半分の2万五千円まで譲歩しますと言って来た。四分の一までにするなら、最初からその値段にしときなさいよって話!


実はこのやり取りは都合3回くらいの電話応答になっていて、九子もいい加減、受話器を取るたび同じ相手からの無益な電話に辟易(へきえき)していたのである。

2万5千円でこのしつこい男と手が切れるのなら、お金払ってやろうかと言う考えも頭に浮かびかけたその時、九子にそれが天啓のようにひらめいた。

「原稿を見せて頂けば私がお願いしたものかどうかはっきりしますから、どうかファックスで原稿を送ってくださいな。」


あちらはしばらくしてからファックスを送って来た。
それを穴の開くほど見つめた結果、注文した覚えはまったくなかったし、それより何よりその広告に、ある致命的な欠陥を九子は見つけたのだ。

コピーで送られた原稿はなるほど読めばわかるサイズではあったが、サイズと書かれた実際の広告の大きさはたったの縦2.5センチ、横3センチ。

ここに雲切目薬の写真やら、電話番号やら諸情報を載せたところで、いったいどこの誰が見る、というよりも、そんな豆粒のような広告は、アフリカのマサイ族でもない限り誰も読む事が出来ない代物であった。


ファックス届きましたか?という電話が更にあったので、九子は言った。
「見ましたけど、このサイズおかしいでしょう?2.5センチ×3センチなんて、いったい誰が読めるんですか?」

するとあちらの言い草がいい。
「だって安くしたでしょう。安くしなければそのサイズの4倍だったんですよ。」

頭に来た九子がここで言い放った一言が地雷を踏んだようだ。
「誰も見ない広告を出してお金を取るなんて、それ詐欺って言われても仕方ないでしょう?」

その瞬間、今まで人当たり柔らかかった若者の語気が明らかに変わった。
「あんた、詐欺って言ったよねえ。詐欺呼ばわりされるなら出るとこ出てもいいんだよ。」

詐欺って言われてキレルなんて、やっぱり自分たちに詐欺やってるって自覚があるんだわと九子は思ったが、作戦的にはあんまりいい状況ではない。

九子はいったん電話を切ることにした。


その後も何度と無く鳴り続ける電話。

九子は無い知恵を絞って、消費者センターに電話をすることにした。
ところが消費者センターで言われたことはこうだった。

「大変申し訳ありませんが、当センターでは個人のお客様が購入された商品のトラブルのご相談に応じておりますが、そういう業者の方の相談には応じておりません。なんでしたら、弁護士さんなどに相談されるのがいいかと・・。」
 
皆さん、ご存知でした?
消費者センターは、あくまで個人の相談しか受けてくれないってこと。
お店やってる人の問題は、個人商店も個人商店、九子一人しかいない店でもダメなんだって!

仕方が無いので、こんどは薬剤師会に電話をかけた。
長野市薬剤師会は弁護士さんと契約していて、何か問題があったらいつでもご相談くださいと前に言われていたからだ。

果たして、薬剤師会は及び腰だった。
最初に言われた。

「申し訳ありませんが、この件に関して、薬剤師会は間には立ちません。あくまで笠原十兵衛薬局さんと業者さんの間の問題として処理してくださいね。」

なによ、それ!と思ったが、まあ彼らの言い分もわかる。
薬剤師会が介入してくれる問題と言うのは、あくまで医療過誤、つまり、調剤間違えだったり、患者さんとのトラブルだったりであり、広告がどうのというのはまた別物ということなのだろう。

のれんに腕押しだなあと思いつつ、教えてもらった弁護士さんに電話する。
話し始めたら弁護士さん、身を乗り出して(かどうかわかんないけど(^^;;)、そういうことなら是非お話伺いたいので、いついっか来て下さいと言われる。

あの、皆さん、忘れてませんか?
九子はウツの最中だったってこと。
まあ、軽症だからこんなことも出来たのだけれど、特に人に会うのが何よりも辛い訳です、九子の場合。

ただ、仲良しの顔に会うよりは初対面の人に会うほうがずっと楽なので、何ヶ月ぶりに車を運転して(これもウツの時は注意力が散漫になっているので気をつけなければいけないのだけれど・・)必死の思いで弁護士事務所にたどりついたわけ・・。

まあこうやって無理してでも弁護士事務所まで来ようと言う気になったのは最初の電話以降、手を代え品を代え、同じように身に覚えのない広告費を支払うように要求してくる電話が相次いだからだ。その数、5、6社。社名はみんな違ったが、内容はいっしょだった。

たぶん「健康」10月号に出た雲切目薬の記事を読んだんじゃないかな?
そして案外悪巧みを考えるやつらは、情報を共有してツルんでるんじゃないのかな?

K法律相談事務所は新しくて立派な、無機質な感じの建物だった。
5人位が同時に座って相談できるUの字型の机があって、九子はそのど真ん中に座る。
ほどなくK先生が顔を見せる。中堅どころの働き盛りという感じ。

K先生に言われたことは、次の3つ。
1.絶対にお金を支払ってはいけません。
2.「弁護士に相談したので、これ以上のことは弁護士と相談して欲しい。」とつっぱねる。
3.電話があったら、出来るだけ録音する。もし録音がだめなら、いついっかの何時何分に誰から 電話があったかをメモしておく。

特に2番の「弁護士さんに相談してあります。」っていうのはホント、良く効いた。
僕の名前を出してもいいですよとまで言って頂いたが、ほとんどの電話は「弁護士」と一言言うだけで、がちゃりと切れて、二度とかかって来なくなった。

たった一社だけ、教えてもらったとおりに言ったら、「奥さん、ずいぶん威勢がいいねえ。」と言われた。
あの~、九子は今ウツなんですけど・・。(^^;;


ついでだから、K先生に九子が前から聞きたかったことを尋ねてみた。
「先生、実は私にはウツの持病があって、薬も死ぬまで飲まなきゃいけないのですが、病気を理由にして契約を無効にすることは出来ますか?」

すると先生はこんなことをおっしゃった。
「う~ん、難しいですねえ。今見る限りでは、あなたのウツは非常に軽い。もしも何かの契約をした場合、その時点にさかのぼってあなたの病気の状態がどれほど重かったかというのは、大変判断が難しい。だから、病気を理由にするのは無理とは言わないが 難しいかもしれませんね。」

実はまだいろいろ聞いた。それをバッグに忍ばせたICレコーダに録音しといたのだけれど、(それっていけないことなのかしら?(^^;;)、いつの間にか中身が忽然と消えてしまっていた。(何のことは無い、電池が切れてメモリーがふっとんだだけ。)
事の善悪は、録音が消えてしまったという事実に答えを見出そう。( ^-^)

お金にシビアな九子は(^^;;、面接の前に値段を伺っていた。
「まあ、30分5000円くらいなもんです。」
お支払いしようとすると、「この程度のことではお金は頂けませんよ。電話の様子だと、もっと差し迫っているのかと思いましたんで・・。私、何も伺わなかったことにしますから、このままお帰りください。」

なんて優しいK先生!!
後から雲切目薬3本お送りしたけど、5本のほうが良かったかしら・・。(^^;;


ああ、世の中広しと言えども、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)と今回のは何詐欺だ?
とにかく2回も詐欺に引っかかりかけた人間は、そうはたくさんいないんじゃないかな?

二つの詐欺を比べてみると、より巧妙なのはオレオレ詐欺だ。
とにかくだまされてる人間に、だまされてるという意識をまったく感じさせない。
これは、凄いことだ!

オレオレ詐欺に引っかかる人は、すっかり自分が悪者どもが仕組んだ架空の世界に取り込まれて、自分が見えなくなっている。
「愛する○○のためなら、こんなお金くらいまったく惜しくない!」という気持ちで喜んで(というと言葉が悪いかもしれないが)振り込んでいる。

九子の場合だって、「これで次男Sに前科が付かずに済むのなら安いものよ、このくらい!」と思って、言われた金額以上を振り込もうとしていた。

九子の場合幸いだったのは、あちらが言ってくる息子の不埒な行状をバカ正直にぺらぺらと赤の他人に話してしまう開けっ広げな(恥を知らないとも言う(^^;;)性格だったため、「大金ですね。」と声をかけてくれた送金窓口の人が、九子の打ち明け話を変だと気づいてくれたことだった。

とにかくオレオレ詐欺にあった時、冷静な他人が一人入ってくれることで、夢から覚めることが出来る。

それに引き換え今回の詐欺の方は、詐欺というより脅しなんだろう。
こちらがそんな契約をした訳ではないことは途中でもうわかっていた。
ではあるが、ドスの効いた声の御仁が何度も何度も電話をかけてくると、業務にも差し支えるし迷惑だからと、ついついお金を払った方が楽だと思いたくなってしまう。

一度でも支払ってしまうとそこに付け込まれて、同じような会社が我も我もと同じ要求をしてくるのだろう。
要は脅しに屈しないことだ。

弁護士さんでなくとも 強面で威圧感のある声の男性が一人居てくれたならば 次の電話はもうかかってこない可能性は高い。
  
女性が強くなったとよく言われるが 体力的にはどうしても劣る訳だから 女性だけの職場は狙われやすいんだろう。


そうそう、よく考えてみたら、先物取引騒動というのまであった。
まったく、危ない橋を幾たびと無く渡りながら、実際の被害にはあっていないというのは、これこそが九子の強運のなせる業なのだろう。( ^-^)



今年は2013年。雲切目薬の創業が天文12年、つまり1543年だからして、今年でちょうど470年目の節目と言うことになる。

さてさて過去17人の笠原十兵衛さんとその奥方さま、お薬師さまと神さま、仏さま。
どうか非力な18代九子ですが、出来ましたらもうこんな事には金輪際巻き込まれませんよう、もしも巻き込まれても寸でのところで思い止まらせて下さいますよう、これからも何卒何卒御守りお願い申し上げます。

そして親愛なるK弁護士さま、ご迷惑ではございましょうが、これを機会に友達少ない九子の、家族親戚以外は十人にも満たないケータイアドレスに番号入れさせて頂きましたことをご報告申し上げます。

いえ、ほんの御守り代わりでございますので、滅多な事ではお電話など致しません。
水戸黄門の印籠よろしく、こんど悪行三昧の輩が薬局に足を踏み込んだ時には、これを見せつけてやるだけでございます。


って、お金払ってないんでしょう?
K弁護士さんにそんなに大盤振る舞いさせちゃっていいの?。(^^;;(^^;;




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リンさん

そんな詐欺もあるんですか。
お金取られなくてよかったですね。
K先生がいい方で何より。
by リンさん (2013-02-15 17:57) 

九子

リンさん、こんにちわ。( ^-^)
そうなんですよ! まったくそんなこと考えてる暇に真面目に働きなさいよって話ですよね。
今回もそうですが、オレオレ詐欺は本当に危なかったです。
娘たちの薬大の学費二人分で2年分ほど取られてたって思うとぞっとします。
リンさんも気をつけて!
私は大丈夫!は絶対無いですから・・。

うん。K弁護士さん、最高でした。( ^-^)
by 九子 (2013-02-16 11:53) 

伊閣蝶

何といっても、K弁護士先生の存在は大変大きなものでしたね。
やはり、こういう先生もおられるのだなと、感動してしまいました。
世の中には、こうしたサギの片棒を担ぐ三百代言(悪徳弁護士)も結構いたりしますので。
それから、何といっても九子さんの毅然とした対応に大拍手です。
さすがは店主だなと感心頻りです。

それにしても、詐欺で糊口をしのごうとする感覚、私にはとても信じられません。
そんなことを考える暇があるのなら、地道に働くことをどうして考えないのでしょうか。
全く理解に苦しみます。
by 伊閣蝶 (2013-02-18 23:33) 

九子

はい。弁護士さんというのは頼りになるものだと思いました。いい弁護士さんで本当に良かったです。

>それから、何といっても九子さんの毅然とした対応に大拍手です。

いえいえ、単に見かけによらず怒りっぽいだけです。(^^;;

ほんとうに、振り込め詐欺で逮捕されるほとんどが若者。一度そういうものに手を出すと、汗水流して働くのがバカらしくなっちゃうのでしょうか。
あんまり若い頃に大金をつかんでしまうというのも、同じ意味で良くないのかもしれませんね。

ビンボーでよかった!(^^;;
by 九子 (2013-02-19 15:16) 

moz

トラブルがあった時にと、色々な窓口があるようですが、たどっていくと以外に役に立たないところが多いんですよね。ケースは違うけれど維持目処もそうだと思います。結局はじぶんで解決方法を見つけなければならない。ごじぶんで事業をする場合はやはり弁護士さんの知り合いが一人いたほうが良いのかもしれませんね。
ともかく、九子さんちは老舗の有名な薬屋さんですから、狙われやすいのかもしれません。
具合は本調子でなかったのに、良く頑張られましたよね。すごいです。
印籠、これからも大切にされてください ^^
by moz (2013-02-20 05:25) 

九子

mozさん、こんばんわ。コメント有難うございます。( ^-^)

そうなんです。私も今回、いろいろな機関は、期待するほどには動いてくれないものだというのを痛感しました。

言っていただいた「維持目処」って初耳だったので調べてみたら、文化財の補修をして頂けるんですね。面白そう!( ^-^)

いえいえ、我が家はたまたまマスコミに取り上げられて有名にして頂いたに過ぎません。でも、マスコミに露出すると、その分悪い人たちの目にも触れることになるんですよね。

ええ、頑張ったというか、結局は怒りのほうが先に立ったということになりましょうか・・。(^^;;

はいはい。仰せのとおり、印籠は命に代えても大事に致しますです。
( ^-^)
by 九子 (2013-02-20 20:18) 

月夜のうずのしゅげ

架空請求は電報や葉書で何度も来たけれど一度も払ったことはありません。(笑)電話で相談した消費者センターの方が、一切応じる必要はないと、隣近所にも来ている架空請求の実態をあげ丁寧に説明してくれて心強かったです。
by 月夜のうずのしゅげ (2013-02-23 08:19) 

九子

月夜のうずのしゅげさん、こんばんわ。
nice!のほかにコメントまで、誠に有難うございました。

>架空請求は電報や葉書で何度も来たけれど一度も払ったことはありません。

ああ、書面で来ることも有るんですね!
消費者センター、個人であればとても心強い味方なのですね!

住んでいる地域によっても違うのでしょうが、せめて同じ電話で業者向けのサービスが受けられたらいいのになあと思いました。

まったくこの世の中、気をつけてかからないといけませんね。「騙された方が悪い」などというのは別の国の話かと思ってました!

ところで月夜のうずのしゅげさま、コメントを頂いた方すべてにお願いをしています。左欄の上の方にメールアドレスがありますから、そちらにメールを一本下さいませ。

これからもどうぞよろしくお願いします。( ^-^)
by 九子 (2013-02-23 21:17) 

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