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ノイシュバンシュタイン城と中国 [<九子の旅日記>]

前回よりつづく 

思えばその朝、ホテルのフロントに若い日本人女性が居てくれたのは幸運だった。後にも先にも彼女に会ったのはその時だけだったから・・。

一番聞きたかったのは、今日の集合場所。
グレイライン社という、確かアメリカのバス会社がやっているノイシュバンシュタイン城見学ツアーのバスの発着所だ。

googleの地図では良くわからなかったが、彼女が赤いラインを引いて教えてくれたのは、子供でも、九子でも(^^;;わかる単純な道筋だった。

ついでに聞いたバイエルンチケットの買い方も、的確かつ明快で、M子が実際に買う時(九子はお金払っただけ)大変役に立った。
ちなみにバイエルンチケットというのはミュンヘンを中心とするバイエルン州だけで通用する割安チケットだ。
割安なんてもんじゃない。何と!5人まで一人分の料金で電車やバスに乗れるのだ!!その上一日中乗り放題と来ている!

彼女が居てくれて本当に良かったと思うと同時に、九子の中には一抹の寂しさもあった。

これがもしも20年前なら、日本人観光客がわんさか押し寄せて、彼女たち現地日本人妻は、毎日のようにお呼びがかかって引っ張りだこだっただろう。
それが今、彼女の姿を毎日は見られないということは、何を意味するか?


そう言えばドーハの空港で貴金属店に群がっていたのは、ブランド品に身を固め、あちこちから我先にと手を伸ばす中国人女性客だった。
20年前の日本人も、よその国の人々の目にはこんな風に映っていたんだなあと恥じらいに似た気持ちが湧いた一方で、今世界の経済を動かしているのは日本じゃなくて中国マネーなんだと見せ付けられた気がした。
まあでも彼女たちも、もう20年経ったら、その頃台頭してる国の女性たちのおんなじ風景を見ておんなじ事思うんだろうか?

彼女のお陰で易々と着いたグレイラインの英語バスには、日本人が多かった。ガイドが話す言語によってバスが分けられているので、ドイツ語やスペイン語よりは、まだ英語の方が馴染みがあるからだと思う。


現地に着くまで曇り空で霧まで出ていたのが、昼近くになると嘘のように晴れて良い天気になった。さすが!強運の九子!(^^;;


ノイシュバンシュタイン城は、ル-ドヴィッヒ2世が作った数々の城の中で一番美しいと言われている。
ルードヴィッヒ2世は、若い頃はその美男子ぶりで大そうモテたらしいが、美貌の若い男たちをはべらし、密かに思いを寄せていた絶世の美女と称された従兄妹のエリザベートがオーストリア帝に嫁いでしまった失望からか、現実世界に生きる事を拒んで、自分自身の美と芸術の世界である城作りに執念を燃やした王様だ。

彼が作った美しい城の大部分は、残念ながら壮大な金をかけて作られた有名な宮殿の単なる模倣であったが、来る途中で見てきたリンダーホーフ城だけは彼の「作品」だそうだ。いかんせん、内部は公開されてはいない。
ルードヴィッヒ2世は音楽家ワグナーの最大のパトロンとしても有名だ。


実は30数年前も、九子はここへ来ているはずだった。

当時のヨーロッパ旅行と言えば、2週間弱で4、5カ国を周る駆け足旅行!
添乗員さんにくっついてバスで連れて行かれても、一体ここがどこの何という名所でどう来たのかすらわからないし、あちこち見てるうちに印象もどうしても薄くなる。

その上当時の九子はルートヴィッヒ2世同様劣等感のかたまりで、ヴェールに包まれたような自分の世界の中だけに住んでいた。
だから外界にあんまり興味が無くて、いろんなことをすぐに忘れた。
もちろんそんな九子を変えてくれたのが坐禅の力なのだが・・。( ^-^)

つまり今回九子は、まるで始めての場所に来たように新鮮な気持ちでまたお城を見られたという訳だ。(^^;;

九子がルードヴィッヒ2世に興味を持つのは、上記のごとくまあ至って当然のことなのだ。
どうしても買いたかったルードヴィッヒ2世の本。ところが買う段になったらあら不思議!何時しか九子の手はすぐ隣の王妃エリザベートの本の方へ。
いやあ、なんてったって綺麗だったもの、表紙のエリザベート妃!(^^;;

結局ノイシュバンシュタイン城のあらましはおろか、かつての九子を思わせるルードヴィッヒ2世の生涯の詳細を、九子はいまだ知らない。(^^;;

「ねえ、あの大阪弁の親子さあ、お城に入って行かなかったよ。ノイシュバンシュタイン城のバスツアーに来てお城を見ないなんて、いったい何しに来たのかなあ?」
並々ならぬ観察眼の持ち主であるM子が言った。

英語バスには夫婦と子供たち、おじいちゃんおばあちゃんであろう日本人の6人連れが九子たちのそばに乗っていた。大きな声のお母さんとおばあちゃん、これは中国人にも負けない日本は、大阪のおばちゃんたちである。(^^;;
その一団が、お城に入らなかったと言うのだ。

「えっ?そうだっけ?」
「うん、私ずっと見てたもの。(^^;; 子供が飽きるから庭にでも居たのかなあ?」

彼らがどこに居て何をしていたのかは今もって謎なのだが、確かに外国のツアーにはちょっといい加減なところがある。

ノイシュバンシュタイン城の入場券も、バスの中で渡してくれたら何の問題もなかったのに、ガイドの、英語のきれいなドイツ人?の彼女は、バスを降りてしばらく行ったみやげ屋の前あたりでおもむろに渡す。
もうみやげ屋に入ってしまっていた九子たちの分は結局渡されず仕舞い。

彼女を探すこと数十分。とりあえずお城の係りの人に聞いて門の手前まで入ってみると、彼女が「切符が2枚余ってるのよ。困ったわ。」と同僚にぼやいているところに出くわして、めでたく入場出来たという訳だ。

まあ、英語をどこかで聞き逃したのであろう九子も悪かった。だけどやっぱり確認の仕方が甘いよねえ。

「もしこれでお城に入れなかったらどうしてた?」とM子。
「そりゃあ彼女の責任を追求して、入場料全額返して貰うわよ!!」
九子とM子は、ああしてやる、こうしてやると威勢よくまくしたてる割りに、いざとなると大したこと出来ないところは似てるかもしれない。(^^;


紅葉しかかった山道を歩いてる途中、後ろから英語で呼び止められた。

「日本人だろう?すぐわかるよ。日本のどこから来たんだい?」

満面の笑みと温かみのある大きな声。中国人みたいだけど、「台湾からですか?」と聞いてみた。

「よくわかったねえ。どうしてわかったの?」

「英語がお上手だから・・。」と答えはしたが、そもそも日本人ににこやかに話しかける中国人はまず居ない。(^^;;

彼はそう、年の頃なら65、6。その声の大きさが、彼の持つエネルギーの大きさをよく表している。

ああ、こんな感じの声、どこかで聞いたことあるなあ・・と考えて、答えがわかった。
王先生だ!

名前もよくわからないしもちろんお会いしたことも無いのだけれど、「王先生が、この目薬を薦めていらしたから・・。」と言って、雲切目薬を買って下さるお客様が何人もいらっしゃるのだ。

王先生と言う名前と、東京都内で鍼治療だか整体院だかを開業していらっしゃることくらいしかわからなくて、御礼のしようが無くて困っていた時に、あるお客様から電話番号だけをうかがうことが出来た。

そして早速かけてみた電話に、王先生ご本人がお出になられた。

「雲切目薬の・・。」と申し上げると、「いやあ、良い目薬作って頂き、凄く嬉しいです。お礼を言うのはこちらの方です。」と、決して社交辞令とは思えない真心の言葉で対応され、始めて電話した九子にまで「今度東京にいらっしゃる時は、必ずボクのところへ遊びに来て下さいね。」と締めくくられるその言葉の熱さと、懐の深さと、古き良き時代の中国人の包容力を感じて、思わずたじたじとしてしまった。

その王先生の温かい底知れないエネルギーを、その台湾人男性からも感じたのだ。

ああ、これぞ台湾人、いや、古き良き中国人のエネルギーだと思った。

そしてその瞬間、九子はちょっと空恐ろしくなった。

九子のひいおばあちゃん、若くして亡くなった15代十兵衛さんの未亡人で賢夫人の誉れ高かったと聞くそのひいおばあちゃんが、遠い昔、日清戦争に勝って日本中が浮き足立っていた時に言っていたそうだ。

「中国はあんなに大きな国だもの。本気を出せば日本などすぐにやられてしまうよ。」

中国は強い。そして、中国は怖い。

中国は実質世界を動かすような大国になり、日本にとっては日々平安を脅かされる困った隣人だ。
だけど本当の意味で中国が脅威になる時っていうのは、きっと今の中国人に、本来持っていたはずの、言ってみれば現在の台湾の人々のような成熟した人間性が加味された時だと思う。

つまりそうならない限り、中国人はいつまでたってもただの身勝手な子供なんじゃないかな?
わがままな子供の言う事など、一体世界中の誰が聞くだろう?

実はA君も3年前上海に招かれて、ビジネスを始めようと思ったそうだ。
「都合3回上海に行ったけど、最初の時は凄かったよ。物凄い歓迎だった。これは良いビジネスチャンスだと思った。だけど、2度目、3度目は違うんだ。彼らは言ってる事とやってる事が全然違う。あの時は本当にがっかりしたよ。」

中国は侮れないけど、日本が今までと同じように誠実さを忘れずに良いものを作っていたら、今まで同様日本人が当たり前に日本人であったなら、日本にもまだまだチャンスは十分あると思う。

大事なのは発信力だ。小さい日本が大きい中国に勝つためには、世界を味方につけなければならない。そしてそのために、もっともっと世界に向かって大声で日本の立場を、主張を、はっきりと知らしめなければならない。

そのために英語力が必要なのだとしたら、幼稚園からだって英語を教えるべきだ。
政府が言わないこと、言えない事を、今の時代いくらでも一般人が発信できるのだ。

The Washington post紙にたった一回投稿を試みたからって大きい顔するわけじゃないんだけど(^^;;、九子より英語が上手な人はごまんと居るのに、英語でアクションを起こそうという人は少ないみたいだ。
その人達がみんな、世界の主要な新聞社に投稿を始めれば、きっと日本人の本音が世界に伝わる!!

難しいことはいらない!!たった200語の英文で、大事な母国を守れるかもしれないのだ!!

ルードヴィッヒ2世も日本人も、内向いてばかり居てはいけない。
ありがちなテレビ番組みたいに外国人を連れて来て日本の技術を見せてびっくりさせ、誰かが作った過去の技術に自己満足するのは百年早い!

さああなたも坐禅をして、あなたの内なる力を100%、120%出し切って、その力で社会を、日本を少しでも良い方向に変えていきましょうね。( ^-^)

そして九子さん!身内が勤める会社だからとトヨタばかりに熱くならずに、これからも投稿していきましょうね。

継続は力なり!!あっ、あなたの一番不得手とするところでしたね!(^^;;(^^;;

たぶん次でドイツ日記完結。


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伊閣蝶

ノイシュバンシュタイン城とル-ドヴィッヒ2世。
またまた興味深く拝読させて頂きました。
20年ほど前、出張の途中で無理矢理時間を作ってノイシュバンシュタイン城に立ち寄りましたが、それはもちろんル-ドヴィッヒ2世との関わりからです。
私はワグナーが大好きで、そのパトロンであった王にも大変興味を魅かれました。
ルキノ・ビスコンティ監督の「ルートヴィヒ」も大好きな映画の一つでしたし。
仰る通り、当時は円の力が大変強く、欧州を回ってその威力を見せつけられました。
今はそれが元に変わっているのでしょうね。

by 伊閣蝶 (2014-11-16 14:19) 

九子

伊閣蝶さん、こんばんわ。
お忙しいのにいつも読んで下さって嬉しいです。( ^-^)

本当に伊閣蝶さんは音楽がお好きで、その上大変お詳しくて何でもよくご存知なんですね。
20年前のもっとお忙しい頃にワーグナーという目的を持ってお城を訪ねられたなんて・・。

ああ、ビスコンティー監督の映画にもなっているんですか。それなら是非今度DVD借りてみたいです。

このルードヴィッヒ2世にはいろいろ謎が多いせいか、すごく人気がある王様で、本もたくさん出ているようですね。実は私も買い忘れましたので一冊kindleで買ってみました。

栄枯盛衰、仕方ありません。でも名も無い国でも国民が幸せに暮らしてる国はたくさんありますよね。どう考えても中国が羨ましいとは思えませんから・・。
by 九子 (2014-11-17 23:08) 

さきしなのてるりん

おはようございます。18日に頂いたご依頼に空(でもないけど)メールを送っておりますが届いておりませんか?まだご用件のお知らせが来ておりませんので、もし届いていないようでしたら私のブログメールでご用件をお知らせくださればうれしいです。


by さきしなのてるりん (2014-11-19 10:24) 

リンさん

九子さん、地震大丈夫だった?
びっくりしましたよね。
by リンさん (2014-11-23 10:55) 

mu-ran

地震の様子を見ながら、北のほうだけだろうと思って高を括っておりましたが、どうやら善光寺の灯篭も倒れたようですね。
九子さんの御宅やお店、大丈夫でしたか?
ちょっと心配しております。
何事もなきようお祈り申し上げます。
ムーリン
追伸:幼稚園から英語を始める!!!とんでもない!
日本人は日本語を最初に守らなければ。日本人のアイデンティティは「日本語をしゃべる」ことにしか立脚し得ないのです。英語ができなければ通訳を雇えば良いだけの話。世界中で活躍する人の中で英語が満足にできる人なんて、ほんの一握り。言葉はあくまで手段です。

ノイシュヴァンシュタインですが、Neu Schwan Stein 新しい 白鳥 石のお城と言うなら、日本の兵庫県姫路にある、姫路城、通称白鷺城がありますね。
ルードヴィヒのような別格の変人はおりませんが、お城だけで言えば日本の白はもっと美しいですね。。。
by mu-ran (2014-11-24 10:08) 

九子

てるりんさん、了解!( ^-^)

by 九子 (2014-11-24 23:24) 

九子

りんさん、お見舞いコメント有難うございました!
ご無沙汰ごめんね。出不精ですみません。(^^;;

地震、やっぱり震度6近いのは初めてだったからびっくりしました!
心配して下さる方も結構いらっしゃるようなので(友達少ない九子に有難うございます。
<(_ _)>)またブログでご報告しますね。

コメント本当に有難うございました。また読みに伺いますね。サボってただけだから・・。
(^^;;
by 九子 (2014-11-24 23:28) 

九子

おお、muranさん。明日の午前11時はFM横浜ですね!楽しみにしてます!( ^-^)

はい。地震は結構響きました。壁やら瓦やら方々落ちました。
でももちろん人的被害もないし、これくらいで済んだなら良しと思っています。
遅くならないうちにブログでご報告しようと思っています。

>幼稚園から英語を始める!!!とんでもない!

言われると思った。(^^;;

でもこれは、お金をたくさんかけたのにちっとも上達しない九子の嘆きの言葉でもあるのです。もちろん心底幼稚園からと思ってる訳じゃありません。実は幼稚園からのM子は小学校の時から国語が苦手で、今になっても???です。ただ、おしゃべりは滅法強いですよ。みんなたじたじです。(^^;;

ドイツに行ってやっぱり言葉が通じない時は閉口しました。日本に来る外国人も同じ思いだと思います。みんなもう少しずつでいいから英語ができる様になっていた方がいいと単純に思っています。

ノイシュバンシュタイン城は姫路城ですか。なるほど!
確かにかのお城はそんなに白くありませんでした。
でも今の姫路城、白くなりすぎたと不評だそうですよね。なんでもほどほどが良いのでしょうか。

最後に、上にコメントされたリンさんのブログ、面白いですよ。毎回パンチの効いたショートショートストーリーが泉のごとく湧いてくる凄い人です。お薦めです!
by 九子 (2014-11-24 23:44) 

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